不動産PF全体リスク資産規模、基準強化とセマウル金庫分追加で100兆ウォン増加した話

韓国の不動産PF(プロジェクト・ファイナンス)の不良処理が本格化するようです。
しかし、当初政府が発表していた「135兆ウォン」規模に達する全不動産PFリスク資産の規模が、いつのまにやら「230兆ウォン」規模になっています。これは基準を強化したことと、セマウル金庫分を含めたためです。

セマウル金庫とは協同組織金融機関のことで、第2金融に属します。しかしその監督省庁は金融監督院でなく行政安全部だった為、今まで統計が分けられていました。そのセマウル金庫分を含めたために規模が230兆ウォンまで膨らんだと…いや、セマウル金庫分多すぎでしょ…。
そういえば、貯蓄銀行も2020年基準までPF関連の不良債権が「0%」だったのに、ちょっと基準を強化したら一気に「10%」に膨らんだという経緯があります。そもそものリスクの見積もりが過小評価気味なんでしょうね。

ちなみに、金融監督がずっと「〇〇危機説」で「大丈夫」と言い続けていたのは135兆ウォンに対してです。

 



ソウル新聞の記事からです。

不動産PF、230兆ウォンの間引き…7兆ウォン規模の不良事業場、競売にかけられる見通し


(前略)

金融委員会と金融監督院は13日、「不動産PFの今後の政策方向」を発表し、来月から本格的な推進に乗り出すことにした。2022年「レゴランド」事態で不良PFが本格的に水面上に浮上した以来、1年8ヶ月ぶりだ。

金融当局は不動産PF融資のほか、土地担保融資と債務保証約定を新たに評価対象に入れることにした。また行政安全部が管理するセマウル金庫も評価対象機関に含めた。これに伴いPF事業性評価規模は230兆ウォンに達する展望だ。政府が以前に公式発表した135兆ウォンより100兆ウォン以上規模が増えた

(中略)

金融委員会のクォン・デヨン事務局長は「多様な方式のシミュレーションと分析を通じて見れば90~95%程度が正常事業場と見られるほど大多数の事業場は正常」と評価した。

(中略)

クォン事務処長は「原則的に不動産PFの最大利害関係者は建設と金融会社だが、どうしても収益が十分な金融会社に余力がさらにある」として「(不良PF)規模がそれほど大きくないだけに十分に耐えられると判断する」と話した。

しかし銀行圏と貯蓄銀行業界ではすでに憂慮が提起されている。一部では「総選挙のせいで構造調整の適期を逃した政府政策にさらに多くの損害(引当金)を見て参加せざるをえない状況」という不満の声も出ている。

貯蓄銀行業界関係者は「PF満期延長条件が厳しくなり貯蓄銀行はPF関連引当金をさらに多く積まなければならない難しい環境に直面するだろう」とし「今回の政策推進で不良PF正常化に速度はつくことができるが、その過程で金融会社と貯蓄銀行の損失は避けられないと見る」と話した。

(後略)



ソウル新聞「230조 부동산 PF 솎아내기… 7조 규모 부실 사업장 경·공매 나올 듯(不動産PF、230兆ウォンの間引き…7兆ウォン規模の不良事業場、競売にかけられる見通し)」より一部抜粋

230兆ウォンのうち最大で約3%にあたる6兆9000億ウォンが競売に掛けられる可能性があるそうです。当初懸念されていたほど不良PFは多くないようなのですが、気になるのは記事の中で金融委員の事務局長が「金融会社に余力がある」と言ったことです。
韓国では少し前にも「余力のある金融会社(銀行)」が「自主的に」自営業者に金利の一部返金する措置が取られました。
今回も同じように不況に苦しむ建設会社の代わりに余力のある金融会社が貧乏くじを引く(あくまで「自主的に」)ことになるような措置を取るのではないか...そんな気がします。


韓国の家計負債がGDP対比100%以下に…でも延滞率は急騰&総額は増えているという話

韓国の家計負債比率がGDP比で3年半ぶりに100%を下回りました。調査対象国34ヵ国中では依然として1位ですが、1年間で2.6%ポイント下落したとのこと。

しかし喜んではいられません。今まで韓国の家計負債は「量は多いが質が高い」と言われていました。これは借り手のほとんどが信用評価点数の高い人たち、つまり延滞率が低いという意味でした。

ところが、最近の高金利傾向を受けて余力のある人たちは返せる分をどんどん返してしまっています。残っているのは返せない人たちであり、それは家計負債の質が低下しているということです。こうした現状が、延滞率の上昇という形で目に見えるようになってきました。

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韓国バリューアッププログラム…「韓国企業は本当に過小評価されているのか?」という話

韓国でバリューアッププログラムが発表されました。基本的には企業の「自律」性に任せるというスタンスで、要するに「頑張れ」です。

それはともかく、バリューアップの必要性というか、その根本的な部分は「韓国企業の価値が不当に低評価されている」という視点にあります。だから、そこを是正して正しく価値評価さえ行われるようになれば自ずと株価は上がる、と。そういうことです。

しかし、韓国企業は本当に低評価されているのでしょうか?実は「収益性」という点から見ると、韓国企業の評価は「妥当だ」とのコラムがありましたので紹介します。

 



時事ジャーナルの記事からです。

「バリューアップ」に対する勘違い…K証券市場は「本当に」低評価されたのか


金融当局が企業「バリューアップ」支援方案の核心である「企業価値向上計画ガイドライン」を公開した。最も目立つのは企業の参加から始め、全て「自律」に任せるという点だ。

(中略)

企業価値向上支援策は、低評価された韓国企業価値を引き上げて証券市場を浮揚し、資産市場を通じた国民資産形成を支援するために設けられた。韓国企業の株式価格がその実力に比べてまともに市場で評価されておらず、このような状況は改善が必要だという議論はかなり以前からあった。

(中略)

バリューアップは文字通り企業の価値を高めるという意味だ。しかし、韓国企業はよく言われているように、持っている実力より株式市場で低い評価を受けているのだろうか。そうでないと見るのが合理的だろう。韓国企業の株価が低いのには、それなりの理由がある。今の株価は韓国企業の実力を反映したものと見るのが正しい。

基本的に株価は収益性の結果だ。ROEは企業が自己資本を活用して1年間でいくら稼いだかを示す代表的な収益性指標だ。この10年間、韓国の上場企業の平均ROEは8%水準だった。 米国の15%とは差が大きく、アジアでも台湾の14%、インドの13%はもちろん、中国の12%より低い。企業の収益性が低いのに株価が高くなるわけがない。韓国取引所の資料によると、2023年上半期の有価証券市場の12月決算法人704社の個別企業の営業利益率は2%に過ぎなかった。

(中略)

韓国取引所が2023年決算財務諸表を反映してKOSPI200企業の投資指標を算出した結果を見れば、韓国企業のPBRは1倍水準だ。米国の4.7倍はもちろん、1.6倍の日本や2.7倍の台湾より低かった。しかし、韓国企業のPBR水準が低いのは金を稼げない無駄な資産を多く持っているという話だ。

(中略)

株価が上がるためには、まず企業の収益が増えなければならない。日本のバリューアップ成功事例を多く語るが、日本の株価上昇は株主還元政策以前に先に3年連続史上最高値を記録した企業利益のおかげだろう。収益と比較すると、我が国の株価はそれほど悪い水準ではない。韓国のKOSPI200企業のPERはすでに21.2倍水準だ。24.6倍の米国よりやや劣る程度に過ぎない。

(中略)

株価が上がるためには、まず企業本来の価値が高くならなければならない。国内企業は低評価されたのではなく、価値が低くて株価が安いだけだ。韓国の株式価格は安いが今より高くなければならないのに安いわけではない。開放された市場で実績と関係のない低評価はありえない。本当に実績と比べて著しく株価が低い企業があるなら外国人投資家が放っておくはずがない。

(後略)



時事ジャーナル「'밸류업'에 대한 착각…K증시는 '진짜' 저평가됐을까 [김상철의 경제 톺아보기(「バリューアップ」に対する勘違い…K証券市場は「本当に」低評価されたのか)」より一部抜粋

「本当は価値があるのに不当に安く見積もられている」と「低い株価は妥当だ」の前提条件の違いは大きいと思います。どちらの視点を持っているかで出て来る対策が相当変わる可能性があるからです。
もし「本当は価値があるのに~」と思っていた場合、「正しい価値を広報」とか言い出すかもしれません。


韓国自営業者の融資額、融資規模、延滞率…全て急増しているという話

コロナ以降の4年間で、韓国の個人事業主への融資額が51%増えたことが分かりました。
また、高金利の影響で延滞率は1年で53.4%急増、3ヵ所以上からお金を借りている多重債務者も62%急増の172万人となりました。これは調査対象(貸し出しを受けている全個人事業主)の51%に当たります。

 



イーデイリーの記事からです。

自営業者の借金1113兆ウォンの「雪だるま」...崖っぷちの「多重債務者」が半数


(前略)

信用評価機関ナイス(NICE)評価情報が12日、国会企画財政委員会のヤン・ギョンスク議員に提出した資料「個人事業者家計・事業者貸出現況」によると、今年3月末現在、自営業者は計1112兆7400億ウォンの金融機関貸出(家計貸出・事業者貸出)を抱えていることが分かった。貸出者の規模は335万9590人だ。新型コロナウイルス感染症の流行直前の2019年末(738兆600億ウォン・209万7221人)と比較すると、4年3ヵ月の間に貸出金額と貸出者規模は各々51%、60%増えた。

(中略)

延滞借主の貸出増加速度はさらに速かった。昨年3月末(20兆4000億ウォン)に比べ、わずか1年間で53.4%急増した。特に延滞(3ヵ月以上延滞基準)が発生した償還危険借主(貸出者)の全体保有貸出規模は同期間15兆6200億ウォンから約2倍の31兆3000億ウォンに跳ね上がった。自営業者の貸出額のうち3%ほどが危険な状態だという意味だ。

金融機関の色々な所から金を借りた「多重債務者」の状況はさらに良くなかった。多重債務者とは、3つ以上の金融機関から最大限借りて追加融資や返済が事実上不可能な借主をいう。3月末現在、全体多重債務個人事業者は172万7351人で全体個人事業の貸出者である335万9590人のうち半分以上(51.4%)を占めた。

今年3月基準で彼らの融資残高(689兆7200億ウォン)と延滞個人事業の多重債務者の融資残高(24兆7500億ウォン)の割合も、全体個人事業者の融資残高と延滞個人事業者の融資残高のそれぞれ62%、79%に達した。

(後略)



イーデイリー「자영업자 빚 1113조 '눈덩이'···벼랑 끝 '다중채무자'가 절반(自営業者の借金1113兆ウォンの「雪だるま」...崖っぷちの「多重債務者」が半数)」より一部抜粋

調査対象となった貸出人数の規模は335万9590人です。これは、各金融機関が貸出者の了承を得て信用調査機関に提出したデータが元になっています。
少し古いデータになりますが、2020年の統計によると自営業者数は大体553万人程度です。その全員が貸し出しを受けているわけではないでしょうし、高金利になったことで可能な人はすでに返済しているでしょうから、大体の規模感としてはそんなもんかなと思います。


2019年のシンガポール会談、トランプ陣営は「故意に」ムンさんを「排除した」という話

トランプ政権時代、トランプさんの側近だった人たちを中心に、約16名が共同著書として、親トランプ寄りのシンクタンクから書籍を発行したそうです。次期大統領選を見据えた宣伝本と思われます。

その中で少しですが、日本・韓国ともに触れられています。
安倍さんとトランプさんの関係については「2人の個人的な絆が日米関係を強化し、共通の目標を追求する上で重要な役割を果たした」としています。おそらくインド・太平洋戦略を指してのことでしょう。
一方、ムンさんには若干微妙です。
アメリカファーストの外交の成功事例」として、米朝首脳会談に触れた部分があるのですが、ムンさんがあまりにも北朝鮮に譲歩しようとする意志が強かったため米国側は「故意に」ムンさんをシンガポール会談から「排除した」と書かれているとのことでして…。
ムンさん(韓国)を「排除した」ことで米国が北朝鮮に対して「強気に出ることができた」、これが結果的に「成功に繋がった」という意味のようです。
とは言え、いくら宣伝本と言えども一国の大統領をハブったことを「成功事例」に挙げるのは異例ではないでしょうか?

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ユンさん、BBC記者から質問に「事実上答えていない」と認識されてしまった話

大統領就任2年の記者会見で、外信記者のロシア関係の質問に対し、ユンさんがトンチンカンな応答をしたことがかなり話題になっています。
BBCの記者はロシアと北朝鮮の軍事的協力について「韓国のボーダーラインはどこか?」という趣旨の質問をしたのですが、ユンさんはこれに対し「ロシアとの関係は重要で、ロシアとの協力を望む」と返しており、質問者である記者は後にこの返答について「質問に事実上答えませんでした」と話しています。

ロシア関連では前々からユンさんの態度は煮え切らないものがありましたが(対ウクライナ支援とか)、それにしても…という感じです。

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韓国の外貨準備高、1ヵ月で60億ドル減…預金は117億ドル減という話

韓国銀行が外貨準備高の残高を発表しました。
4月末の時点で4132億6000万ドルで、3月末と比較して約60億ドルのマイナスです。
この規模は世界9位の水準で、韓国のGDPの約25%にあたります。OECDの平均がGDP17%規模だといいますから、十分な備えのように見えますね。
ただし、これは外貨準備高全体で見た時の数字であり、資産別に見るとまたちょっと見え方が変わってくるかもしれません。

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