貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

伊賀奥鹿野の紅柱石

2024-05-14 20:42:52 | 国産鉱物

紅柱石と書かれていて「は?」となった。ピーモンタイト? モルガナイト? 何だっけ?
アンダルーサイトでした。カイヤナイト三姉妹の次女。あれこれ迷走して、美しいプレオクロイズムを見せるものに出会った石。
「へえ、国産のものがあるのか」と興味をそそられ、三つセットでえらくお安かったのでゲット。

色は白っぽいけれど柱状結晶模様やその表面のキラキラがきれい。




産地は「三重県伊賀市奥鹿野折尾奥山谷」とあるけれど、現在の地名検索では出て来ない。調べたらこんな記述が出てきた。
《三重県の青山高原から西方は、伊賀地方と呼称されているが、かつての阿山郡大山田村を中心に、各地に花崗岩ペグマタイトがあり、戦前から戦後にかけて珪石や長石の試・採掘が成されていた。昭和年代には電気石や鉄礬石榴石、緑柱石等の美・巨晶が産し、全国的によく知られていたエリアである。
阿山郡青山町奥鹿野・奥山谷(山林斜面の露頭) かつてはサファイアの微粒を伴う珪線石や紅柱石が多産したが、現地は完全に埋没。》出典

おやおや。このキラキラはコランダム?



ルビーとかサファイアとか言われるとめったに出ない宝石かと思うけれども、コランダム自体はけっこうそこらじゅうで出るらしい。ヤフオクではあの二上山で採れたという微細なサファイアがまとめ売りされていてびっくり。ちょっと欲しかったけど老眼にはきついのでやめた。
「絶産、コランダム入りアンダルーサイト」なんて表示したらえらく稀少な石に思えるでしょうね。
しかしちょっと色が薄くて粉っぽい。三つあるうちの一つを磨いてみた。

大変貌!というわけではないけれど、淡い筋模様がきれい。白っぽい部分は少し青緑を帯びているけど何の鉱物かはわからない。所々に微小なコランダム結晶がピカピカと輝く。いいではないですか。
まあ二度と出て来ない石ですし。それとも再チャレンジするハンターが出るかな。


狼煙銀石

2024-05-13 20:28:04 | 国産鉱物

能登銀石とも。
まあ地震で大変なことになりまして。お見舞い申し上げます。
大昔、旅したことがあります。狼煙[のろし]の先の木ノ浦にあった国民宿舎に泊まったような朧げな記憶があるけれど、そんなものはもう跡形もない。美しい所でした。輪島塗の職人になりたいなと思った記憶も朧げにある。みな夢幻の世界。

その狼煙漁港あたりで採れる模様石。マーカサイト・イン・アゲート。白鉄鉱入り玉髄。らしい。
以前、夕星庵さんのサイトで美しいカットルースを見て心に残っていた。日本水石100選にも入っているとか。その後あまり見かけなかったけどヤフオクでごつい原石があったのでゲット。

でかい。海で揉まれて丸くなっているのでしょう。そこに銀色の花模様が拡がる。白鉄鉱というところがミソですかね。





少し色染みもあるし、ちょっと磨いてみようかな。

こういうのはもう採れないのかもしれない。あるいは逆に隆起のせいでもっと出てくるのかもしれない。

ちなみに一つばらしておけば、海岸の岩の隙間にアラゴナイトが形成されると言われている場所は、恋路海岸の付近らしいです。本当かどうかは知らない。そこも変わってしまったんでしょうかね。
自然は気まぐれに激変するものですね。20世紀後半は比較的平穏な時期だった。これからはどうなるかわかりません。すでにあちこちで異変の兆しが……(脅すな)


アンソフィライト

2024-05-12 10:38:39 | 国産鉱物

などと言われても「は?」という人も多いのではなかろうか。(自分と一緒にしてはいけませんよ)
直閃石。ああ、あの……何だっけ。角閃石の仲間?

アンソフィライト。Anthophyllite、直閃石。(Mg,Fe)7Si8O22(OH)2。
基礎的な造岩鉱物。「苦鉄質」そのものですな。角閃石という超巨大グループの一員。
とにかく「~閃石」というのはごちゃごちゃでわけわかめ状態。複鎖イノ珪酸塩、つまり繊維(鎖)状結合が二重になっている連中で、単鎖だと輝石。ふむ、なるほど。いやわからん。

しかし直閃石なんかが商品になるなんてめったにない。売る方はよっぽど変わっているし、買う方はもっと変わっているかもしれない。(昨日もそう言ってなかったか?)
でもね、いいんですよ、これ。
岩手県北上市和賀町仙人遠平夏畑鉱山産。

ぱっと見はなんか雑っぽい石だなと思うけれど、そこに直閃石の針状結晶群が輝く。





なんか写真の方がきれい。見た目はもう少し地味。こういうことって時々ある。とあなたを見てて(やめなさい古い) いつもはカメラに文句ばかり言ってるのにね。

直閃石は広い意味での「石綿」に入るけれど、毒性はない。おさらい。
角閃石のうち毒性があり使用・販売が禁止されているものは
  クリソタイル Chrysotile Mg3Si2O5(OH)4。温石綿。
  クロシドライト Crocidolite Na2(Fe2+3Fe3+2Si8O22(OH)2。繊維状リーベック閃石 Riebeckite。青石綿。最も毒性が強い。
  アモサイト Amosite Fe7Si8O22(OH)2。 繊維状グリュネル閃石 Grunerite。茶石綿。

それに対して毒性はないとされているもの。普通に売られている。
  アンソフィライト
  トレモライト 透閃石。Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2。
  アクチノライト 緑閃石。(Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2。

トレモアクチノも持ってるな。(わざと際どい所狙ってる?)

     *     *     *

アンソフィライトはそれ自体ではまず商品にはならないけど、複合石として珍重されるものがある。ヌーマイト。
ここでも何度か上げている、39億年前の古ーい岩石。こちら。実はヌーマイトがアンソフィライト主体だということをあちきは忘れていた。(やっぱねw) アンソフィライトとジェドライト(Gedrite、礬土直閃石/ジェドル閃石、Mg5Al2Si6Al2O22(OH)2)が層構造をなしていて、そこでラブラドライト状の虹色が光る。とても美しい石です。ちょっと撮り直してみようかな。

まあ直閃石にしろ他の角閃石にしろ、地殻の基礎を構成する重要な鉱物と言えますわな。熱水性の華々しい結晶たちとは別に、こういう渋ーい力強い姿を味わうのもまた岩石趣味の一端ではないでしょうか。なんてね。
(この前、きらきらならどーでもいいじゃんとか言ってなかったか?)
あれは魔境です。


アプライト

2024-05-11 09:20:40 | 国産鉱物

は?そんな名前の石あったか? ピアノか?
と調べたら鉱物名ではなく岩石名でした。
《ほとんど有色鉱物を含まない細粒の火成岩。花崗岩と鉱物組成が似ているために、半花崗岩ともいう。》
流紋岩マグマが花崗岩になる前に固化したもの。花崗岩はある程度の温度のままじっくりと結晶が形成されたものだけど、アプライトはその途中で冷えて固まったもの。つまりは「半生花崗岩」ですな。「生焼け」でもいいかも。(キモい表現) 流紋岩マグマが地上近くで急激に冷えると球顆流紋岩とかオプシディアンとかができる。それらと花崗岩との中間的形態ということでしょうか。

比企郡小川町木呂子産。
地質系の人ならよく知っているのだろうけど、一般石沼民は知らないんじゃないかな。商品になっているのを初めて見た。商品にする方も変わっているだろうし買う方も変わっているのかもしれない。

花崗岩になりかけらしく、どろりとしている。

一部は小さな結晶がきらきらと。石英、長石、雲母ということでしょうかね。



こんな脈状の構造も。鉱物間のせめぎ合いみたいなものを感じさせて面白い。




美しい石、珍しい石というわけではないけど、岩石・鉱物というものの一つの姿として、味があります。「アプライトって知ってる?」とか言って人をおどかすのもいいかも。(悪趣味)


ちょっと大きめコーネルピン

2024-05-06 09:56:57 | ややレア

魔境から戻って。(早すぎだろもっと浸っていなさいw)
しかし面白いですね。人工ルビーも巨大CZもツイッターではほぼ無反応。みなさんお嫌いなようでw。あほかと思われてるかな。ま、あほでいいのですけど。(事実には抗えんわな)

さて。
ちょっと前「アイオライトは難物」と書きましたけど、これもけっこう難物。
コーネルピン。
(Mg,Fe2+)4(Al,Fe3+)6(SiO4,BO4)5(O,OH)2。えらく複雑。硼酸塩? ケイ酸塩? 水酸塩?
ミントカラーの美しいのもあるけど、何と言ってもプレオクロイズム(方向変色、多色性)が素晴らしい。こちら。しかしほとんど出ないし、小さい。たまに「さざれ」でお安いものが出たりするけど、プレオクロイズムは見にくい。

と思っていたら、暗めだけどちょっと大きめな結晶がお安く出たのでゲット。



約6ミリ。こんな大きさはあんまり出ない。
しかし通常光では暗い。アイオライトですか、みたい。
けれど透過光で見ると、さすが。



柱状結晶の集まりみたい。こんな姿も珍しいのではないかな。



やっぱいいんですねえ、この石。