まだ3月の初旬だというのに
まるで初夏のような日差しが
ベイウインドウのカーテン越しに
私を呼び覚ます。
静かな朝...
主人の寝息だけが
静寂を妨げている。
朝食の支度を終えると
主人に御奉仕しながら
起こしてさしあげるのが
私の日課…
そうっと
主人のアンダーを下ろしてみる。
思った通り
そこには
醜悪な生き物が
萎えた身体を横たえ
私の舌を待っていた。
何故か、今朝は
その気になれない…
心を整えようと
部屋の片隅のハイバックチェアに腰をかけ
窓越しに空を見上げる。
あと、何年続けるのだろう?
ふとした不安が
心をよぎる。
背もたれに身体を預けると
この椅子にもたれ、
冷酷に私を責めた
あの頃の主人を思い出す。
遠い昔の思い出...
大きな寝息をたて
寝返りを打つ音に
ふと、うしろを振り返る。
もう、このヒトには
あの頃の若さも
冷酷さも
残ってはいないのだろう。
そう思うと
無性に昔が懐かしく
身体が熱くなるのを感じた。
椅子の背もたれに身を委ね
熱く濡れた扉を
指先でゆっくりと開いてみる。
あの時受けた
激しい躾を思い出しながら...