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週末はお客さんとゴルフに行って来た。
幸い天気に恵まれ4月にしては暑いほどの陽気だった。
プレイ後は宿泊するので、御前崎にあるコースにホテルが併設された
ゴルフ場を取っておいた。
昭和の景気が良い時代に建てられたクラブハウスを兼ねたホテルの建物は
ヨーロッパの宮殿の様な佇まいだが、昔のモーテルみたいだとも言える。
当時は結構な名門コースで接待ゴルフに使われたいたのだろう。
オレは1日カートを運転し、イヨっ、重役ナイスショット！などと叫び、
斜面の林に飛んで行ったボールを捜したりと、もうクタクタだ。
館内はさすがに古さを感じるが、手入れや掃除は行き届いており気持ちが良い。
部屋からは凪いだ遠州灘が望めた。
風呂に入ってさっぱりするが、オレの仕事は終わった訳じゃ無い。これからが
本番だ。
夕食はお客さんの希望でフランス料理だ。
オレにとって洋食はサイゼリヤなので畏まった店は苦手なのだが、仕方ない。
待ち合わせの時間に風呂上がりの浴衣とスリッパで行ったら、ドアの前で
出迎えていたギャルソンに小声で着替えて来るように言われてしまった。
何でだ？ハトヤは大丈夫だったぞ。まぁいいや。全員揃ったところで食事が
始まった。
重役はテーブルに置かれた皿を見て、おっキナシの食器かと呟いたが、多分
それはノリタケの間違いだ。
まずはビールからだが、お客の重役はこの手の店に来慣れているのか、
ワインのリストを持ってこさせ眺めている。
君、酸味の弱い赤はどれかな？赤玉ワインは置いてないの？
あっ、そうでも無いみたいだ。
桜海老とピスタチオのブルケッタ。
これは手で食べてもいいそうだが、手を使わず皿から直接口で食べるのは
マナー違反だ。
それにしても重役、7番ホールのパターは惜しかったですね。あれが入れば
150切ったのに。
わははははっ、餃子君そうだね。あれは実に惜しかったよ。
ファイブパッドもしてて、惜しいもクソも無いが、仕方ないこれは仕事だ。
グリーンアスパラガスとハモンセラーノのエッグベネディクト風
エッグベネディクトは初めて食う前に、どんなに旨いものなんだろうと
思っていたが、ポーチドエッグにチェダーチーズをぶっかけただけの物だと
知ってガッカリした。
ちなみにハモンセラーノは交雑種の白豚で作った生ハムで、ハモンベジョータは
イベリコ豚の後足で作られたものだそうだ。
オレはいつか誰かから聞いた話を思い出しながら、ずるずる音を立ててエッグ
ベネディクトの黄身を啜る白豚の様な重役を見ていた。
グリンピースのポタージュ トリュフオイルアクセント
ついこの間近所の激安スーパーで生のグリンピースが並んでいるのを見た。
今が旬の食材だ。子供の頃グリンピースのご飯が嫌いだったけど、なぜか
今は好きになった。このポタージュもとても美味しい。
重役も口の周りを緑色に染めて満足そうだ。
好みが変わると言えば、女性の好みも年齢と共にどんどん守備範囲が広く
なって行くが、逆に好かれる範囲は激しく狭まっているのが悲しい。
黒鯛のポワレ ハーブソース春野菜と共に
ここで赤ワインが空いたので、白を追加する。
重役は頭の上で手をパンパンと鳴らし、おーい、おね～さ～んと叫んで
ギャルソンを呼んだ。
他のテーブルの客が一斉にこっちを見ている。
メルシャンは無いの？メルシャンの白は？わしはいつもあれのペットボトル
のを家で呑んでるんだよ。
重役がそう尋ねると、ギャルソンはちょっと困った顔をして、生憎切らして
おりますが、代わりの物をお持ちしますと言って、ラベルにアルパカの絵が
描かれたボトルを持って来た。
重役は注がれたワイングラスを傾けると、餃子君さすが本場の白は違うね。
と言った。
オレもワインを口に含み。「御意」と答えるのだった。
ここで小さなカップに入った口直しのシャーベットが出たが写真を撮るのを
忘れた。
牛フィレステーキ赤ワインソース キャラメリゼしたフォアグラテリーヌを添えて
今日のメインだ。
重役は、さすが海の近くだからあん肝が旨いね。そう言ってフォアグラを食って
いる。そう。フォアグラでもあん肝でも喜んでくれりゃそれでいい。
デセールは苺のムース 季節のフルーツを添えて
ムースは旨かったが、パンをお代わりしてしまったのでお腹が一杯だ。
重役はまた頭の上で手をパンパンと鳴らし、おーい、おね～さ～ん、よーじー
っと叫んでいる。
オレの顔は火が出そうなほど赤くなっているが、多分それはアルパカワインの
酔いのせいだろう。
※ この物語はフィクションであり、登場する人物及び団体はすべて架空のものです。
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