お久しぶりです。今回は2024年1月29日に幻戯書房より刊行された「ドイツ・ヴァンパイア怪縁奇譚集」のレビューを、数回にわたり行っていきたいと思います。これはブラム・ストーカーの「ドラキュラ(1897年)」より以前の、19世紀のドイツで刊行された吸血鬼小説集めたもので、日本の吸血鬼解説本でも紹介されたことがない、非常にマニアックな古典アンソロジー集となります。翻訳者は当ブログでは何度もご紹介させていただいている、ドイツのヴァンパイア文学*1の研究家である京都大学 森口大地氏によるもの。それぞれの作品の解説や、本邦初公開の貴重な情報も紹介されており、研究者らしく典拠を事細かに提示しているので、情報の正確性にも富んだものとなっているのも、個人的に一押しな一冊です。
順番にそれぞれの作品感想を述べていきたいと思うのですが、この記事ではとくに個人的な思い入れの強い、エルンスト・ラウパッハの「死者を起こすなかれ」について述べていきたいと思います。
*1:今回のアンソロジーや森口氏の論文「矮小化されるルスヴン卿 --1820年代の仏独演劇におけるヴァンパイア像--」(2020) p.1を見ればわかるように、森口氏は研究の場面においては「吸血鬼」という単語は使うべきでないという立場を取っている。詳細は本アンソロジーや論文を参照。