見えないけれど見えるものを、探し求める。 | みそのブログ

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萌えどころを共有するブログ。諸事情により8割方痛いブログとなっていますが後進のために残してます。限定取扱注意でお願いします。たまに突然創作。植物昆虫の生き様を愛してます。トプ画はSOURIのお隣にある、みそはっぴぃの奇跡の一枚。


家族で奥多摩の方に渓流釣りに🎣来ています。

みそは山梨に住んでいた頃、夫の趣味で週末はよく渓流に釣りに行っていました。いわゆる脈釣りというやつです。

子どもが生まれてからはさすがに減って、もう糸のつけ方も忘れてしまったくらいなんですが、一時は夢中になってウェーダーを身につけて陽が暮れるまで川を上がったり下ったり....
渓流釣りは結構孤独なレジャーで、仲間で行っても一言も話すことなく、自分と対話しながらのトライ&エラーを繰り返し、深さや場所を探り、気配を消して魚に気づかれないよう、こっそりと活き餌を流すのです。

自分だけのスポットで大物を釣り上げた時の喜びといったら!

しかし実は今日はそんなつもりもなかったので、軽装に釣竿だけ抱えて、もう大きくなった子ども達はほったからしにし、ひとり、川を登っていきました。





なかなか、釣れない。


でも、渓流釣りの醍醐味は諦めずに当たりをつけながら遡上すること。釣れる場所を探す事にある。


九十九折りに流れ落ちる細い流れをじっと眺める。この水流なら、てっぺんの小さな滝の先をもうちょっとだけ上がれば、きっと大きな滝口があってその手前に落ち込みがあるはず。


沈み石の脇を丁寧に流して探りながら、岩場を慎重に脚を進めていくと、なんだか懐かしい香りがする。山椒だ。山椒の枝は棘が鋭いので触れないように気をつけて避ける。


うっかり握ってしまったら棘で手のひらが穴だらけになる。



再び川面に眼をうつす。


ここ最近は雨が少ないせいか、かなり上流なのに水の透明度が低い。白く泡立つ水面が消えた先を探るように流す。


足場を固めたら、上に伸びる木の枝に投げた釣り糸が引っかからないように、慎重に弾みをつけて投げる。錘が川底スレスレを流れるように、長さを調整してから、また投げる。


じっと川面を見つめると、魚影がみえてくる。


見えない魚影が、見えるような気がしてくる。


多少の険しい岩肌も、いやむしろ険しければ険しいほど、そこは未踏の地である証。


誰かが引っかけて切れてしまった枝から垂れる釣り糸は、ここらに魚がいる証。


この大変な道の先にこそ、誰も知らない魚たちの楽園が....


ぼちぼち、陽が暮れてきた。暮れてしまったら待っているのは、真の暗闇だ。


時計を確認しながら脚をすすめる。


見えないものを、見つけようと目を凝らす。


あと、少し。あと少しだけ。


....あった。


滝壺から広がって回る渦....


ここには、きっと、いや絶対魚がいる。


夫より先に、大物を釣り上げてやろう。そしてここにいっぱい魚いるよ、入れ食いだよ、と教えてあげよう。きっと喜んで飛んでくる。ちょうどもうすぐ夕まずめだ。2人で4匹でも釣れたら塩焼きにして食べよう。あ、ここにくる道は、反対側からの方が楽そうだから、それも教えてあげなきゃ...





喜色満面、脚を踏み込んだとたん、グラっ...



あっ、浮石!!



見事に転倒。慌てて掴んだ岩が更に動く。ゴロリと脚の上に倒れこんでくる。


しまった....!


身体を捻って力づくで岩をどけるが脚に鋭いの痛みが走る。









⚠️次の写真、痛いです⚠️













....



🥲


....



痛いよ....。



何事もなかったかのように響き渡る渓流の水音。

私はため息をついて清流で傷を洗い、首に巻いていたタオルで傷口を縛ると、しばらくひとり岩の上に座り込む。






ああ、痛いな。







魚は、いなかった。







いたかも知れないけど。







私は釣れなかったし、もはやここに魚がいるかいないかなんて、私には知りようもない。その場合、魚はいた、と言えばいいのか、いなかった、と言えばいいのか....







BWの間に愛はあったのか、なかったのか、あったけどなくなったのか....



見えない....




ざーざーと響き渡る水音。






「ママ〜!!」


ボーっとしていると、娘が私を道の上から呼ぶ。痛む脚を庇いながら、半笑いで立ち上がる。釣竿を確認する。良かった、折れてない。丁寧にポケットから針留めを取り出して、絡まらないように巻きつける。


「パパが、そろそろ行こうって!」


「はーい!ねぇ、ママ怪我しちゃったぁ!!」


「ええっ、大丈夫?!上がってこれそう?お風呂はいけそう?」


「え、まずそこ?もうちょっと心配してもいいんだよ....」


光る車のヘッドライトを目指して、柔らかな落ち葉の傾斜を登る。


「温泉いけば治るんじゃない」とパパが言う。



「バンドエイドあるよ、家に」とたろちゃんが言う。


「そりゃあるでしょーよ!」とはなちゃんが言う。



そうだね、今日は...

「とりあえず、温泉入ってみて、痛かったら流すだけにするよ。それからさ、今日は魚じゃなくて、肉が食べたいな!!ママ、めちゃくちゃ肉気分!