ソロツーリストの旅ログ

あるいはライダーへのアンチテーゼ

振り返ってみるとオートバイがいちばん好きだった

たとえリスクを上回る楽しさがあるとしても、君を想う人がいることを決して忘れるな

2024年05月13日 | 日記・エッセイ・コラム


毎週週末が近づくと

また誰かが死ぬのかなと漠然と思う

そして実際に週末のオートバイ事故のニュースを目にして

その度に暗澹たる気分になるのだ



自分では注意しても防ぎきれない事故はある

けれどカーブを曲がれ切れずとか

自分で防げる事故もとても多い気がする

白バイ隊員が右直事故にあったニュースを見て

右直事故の難しさを痛感したが

右直事故(側道、駐車場からの進入を含み)こそ

ボクたちライダーが最も気を付けるべきもので

経験と意識と技術がとても大切になってくる

しかし、かく云う自分だって

今日右直事故にあわないという自信はない

自信はないがこれは防げる事故だと思っている



オートバイに乗り始めた頃

走るたびにドキリとしたりヒヤリとしたりしていた

けれどまずはこの体験がものを云う

急に横からクルマが出てきたことにドキッとするとは

全くそのクルマの存在がノーマークだったということだ

けれどその時、ドキッとしたクルマの存在に本当に気付けない状況だったのか

自問することが重要だ

警察のネズミ捕りにあって

「汚いやり方だ」と抗議したら

レーダーの見える場所まで連れていかれて

「隠してないでしょ」と云われた

警官が云うとおりレーダーは100m手前から確認できたし

それが小さな子供だったり進入しようとするクルマだったら

見逃しているということと一緒なのだとも云われて何も返せなかった

追尾してくる白バイだってそうだ

良く周囲を確認していれば白バイはミラーで確認できる

こういった体験からの気付きが「経験」になっていくのであって

最悪なのはシビアケースに会っているのにそれに気付いてもいないこと

ヒヤリとしてもそれから学ばないこと

それではいつになっても事故のリスクを減らしていけない



そして実際に交差点や路面に店が並ぶ幹線道路を走る時

ボクはいつも「右直右直」と声に出して意識するようにしている

そういう場所ではなるべく自分と他の交通との位置関係を変えずに

(身軽なことを逆手に取ったすり抜けや急な進路変更は最も危険だ)

出来れば回避できる場所を常に意識する

F1パイロットの中嶋悟がレース中は常に自分の位置を

上空から俯瞰するように捉えていると云っていたが

まさにそれが理想だ



その上で急制動の技術を上げておく

リアの意識的なロックや

ABS搭載車なら確実にABSを効かせられるレバー入力



経験と意識と技術



それに比べて単独の自爆事故は原因がはっきりしている

脇見か技術不足だ

運転中に前方を注視するのは大原則だ

周囲の状況を(俯瞰する如く)確認しながら

前方に常に意識を向けていれば事故はかなり防げる

とにかく自分が事故の第一当事者になってはいけない



そして自爆事故

もちろんコーナリング中が多い

路外に逸脱するだけでなく

反対車線の交通を巻き込んだりもする最悪の事故だ

そこで問いたい

「あなたはオートバイをどうやって曲げていますか?」

どんな方法でもいい

自分なりのコーナリングメソッドははっきりさせておくべきだ

カーブが苦手なんて臆面もなく云ってるやつはどうかしてる

曲がり方が曖昧なのによくも公道で走ってるな

スピードのコントロールもコーナリングの内だ

リアブレーキ使えてますか

ブラインドの先に自転車いたらどうしますか

濡れたマンホールがライン上にあったらどう回避しますか

こんなことも出来ずに今まで公道をおしゃべりしながら走ってたなら

それはただただ運が良かっただけだ

そしてその運はいつ不運に変わるのかもわからない



もちろん最初にも云ったが

事故は防げないケースも多い

だからどんなに経験しても意識しても

どんな技術を身に付けても

事故にあう可能性はゼロにはならないだろう

ボクだってこんなに偉そうに事故を語っていても

今日オートバイで事故にあうかもしれないのだ

けれど防げる事故も必ずあると信じる

毎週毎週オートバイの事故のニュースなんて見たくないのだ



ロングツーリングに出掛ける前日だけでなく

明日オートバイに乗ろうかなというと

なぜだか漠然とした不安感が少し心の隅にあるのをボクは感じる

心配性だなんて恥ずかしいなと思ったこともあるけど

これが事故に対する不安からのものならば

この感じはとても大切なことだと今は思っている

オートバイに乗ることはとても楽しい

リスクを上回る楽しさが確実にある

けれどキミを心配してくれている人のことを絶対に忘れるな

キミはたとえ事故で死んでも後悔すらできないけど

キミの死が残された者のその後の人生をも左右することもあるのだから



さて

いよいよ来週は久しぶりの長旅に出ます

事故に気を付けていってきまーす

ACCOLADO(アコレード)をSRに履かせてみる

2024年04月28日 | SR400(2019)


一日の寒暖差が大きいのが厄介でもあるが

よく晴れた日の昼間はとても爽やかで

本当に気持ちが良い季節

落葉樹たちの芽吹きも盛んで

山は一気に生気を取り戻した



タイヤの状態が悪くて交換を迷っていたSR

やはり北海道へ行く前にタイヤ交換しておくことにした

いつものテックモーターサイクルへ相談に行くと

いろいろ提案されたが

結局ブリジストンのアコレードに決めた



ブリジストンのHPを見ると

クラシックなパターンもさることながら

グリップ性能にも特化させているようで

この手のタイヤに見られがちな

「ウェットグリップ性能を向上させ」という文言ではなく

ストレートに「高いグリップ性能」と謳っていて好感が持てる

フロントタイヤが純正指定と同じサイズの設定が無く

一回り小さい90/90-18サイズをチョイス

スペック表によれば

純正指定タイヤ ブリジストン バトラックス BT-45(90/100-18)と

このアコレード AC-01とでは

外径で-14mm、トレッド幅で-4mmの差がある

アコレードの方がほんのわずかに小さい

この差は数字だけ見ていると無視できそうだけど

実際のタイヤを見ると明らかに「ひと回り」は小さく感じる

フェンダーとの隙間が「スッカスカ」だと感じるレベル

正直あまりカッコよくはない

でもタイヤはやっぱり性能の方が大事

一皮むいた後、空気圧を指定値に合わせてワインディングへ繰り出す

もちろんそもそもがSRなので

真の意味(限界性能とか)でのタイや性能はあまり問題ではなく

いかにSRが持つ「気持ち良さ」をしっかりと支えてくれるか

この性能がいちばん大切で気になるところ

要するにSRを構成する「部品」であって欲しいのだ

指定空気圧に合わせたアコレードは

舵角の付き方がとてもナチュラルだ

それは「とても」一つではなく

「とても、とても、とても」くらいナチュラル

旋回初期に良く曲がる今時のオートバイを経験すると

倒し込んだだけ曲がらないと逆に違和感を感じるものらしい

だから「フォークオイルが」 とか

「フロントのバネが」 からの

「フォーク突き出し量が」 までいく

でも、そこを求めるならそもそも乗ってる車種を変えろ

と云いたい

最近はやりのモトブログ見てると(ステアリング越しの走行動画ね)

オートバイが傾いてから少しも旋回してないのをよく見る

気持ちはレーサーらしく

倒し込みは「クイック」が命らしい

後姿の映像なんかだと

クイックに倒し込んだ後上半身が付いていけずに反り返っているのさえ見かける

残念ながらリーンからのフロント追従は持って生まれた性格に等しいので

フォークを付きだしたくらいでは多分変わらないし

変わったとしてもバランスが崩れているだけでちっとも良くはないだろう

そもそもスポークホイールだよ

それにあのスイングアーム

どこに標準が合わせてあるか推して知るべし だよね

それでもそれを面白くさせてあるところがヤマハのすごいところ

そしてSRに惹かれるところだ

そんなSRに惹かれたはずなのに

ワインディングでクイックダンスしたいならお門違いだ

SRにはSRのコーナリングがある

勘違いしてはいけないのは

それは決して「つまらないモノではない」という事だ

大切だからもう一回云っちゃうかな

「SRのコーナリングは決してツマラないモノではない」!

むしろ気持ち良い

アコレードはその面白さを全く邪魔せず

しっかりと構成パーツとして仕事をしてくれた

良いタイヤだった



とは云えオートバイのモディファイは楽しみ方としてもちろん「あり」だ

そこに求めるモノがあるなら試すしかない

そういう考え方には賛同する



タイヤ交換作業の合間代車貸してくれた

こないだまでウチの子だったカブ

今ではテックモーターサイクルの小僧におさまった

大将の足として、代車として活躍しているらしく

ODOメーターの数字が信じられないくらい伸びていた

SRが来て置き場が手狭になったことや

SRが下駄代わりにもなるので売却したのだ

久しぶりの里帰りにクロ介との会話が弾んだとか弾まなかったとか



それはさておき

このところウキウキしながら北海道行きの準備に明け暮れる日々だ

北海道も順調に春を迎えているようだが

アメダスで現地の気温を日々チェックしては一喜一憂している

気温に相当ばらつきがあってウェアの選択が難しいのだ

とりあえず夏も冬もある程度想定が必要かなと考えている

もちろんまだひと月先なので出発の頃にはもう少し安定していると思う

気候と云えばたまたま北海道放送のこんなサイトを見つけた

HBC情報カメラ・いまの狩勝峠(リンクあり)

この中に「各峠カメラ」という情報カメラがあった

北海道の主要な峠のリアルタイムの映像が見られる

なかなか見かけない峠の気温と路面温度の情報まである

これを見る限り国道の峠は全く問題なさそうだ

それにしてもつくづく良い世界になったと思う

いや単純にね

ITいいね

とりとめもなく桜の下で悪態をつくイヤなひと

2024年04月13日 | 日記・エッセイ・コラム


開かないのかと思ったら一斉に咲きだして

咲き始めたと思ったら

春の嵐に一気に散ってしまった

今年のサクラは本当にあっという間に通り過ぎて行った

山を見渡せばすでに木々は萌黄色の芽を吹き

一年でいちばん気持ちの良い時期に入った



北海道へ行く準備をぼつぼつ始めようかと思うが

フェリーの予約をしてしまうと

もう他にあまりやることはない

大まかなルートは決めてみたけど

一日に300kmか400kmと考えると

なかなかにしっかりとした行程は組めないものだね

前にも書いたけど

野付半島の道道950号線と

神威岬には行きたい

あとタウシュベツの橋梁がもう崩れそうなので見ておきたい

そうだな、前に食い損ねた豚丼は帯広辺りで泊まれば食いに行くか

雨のことは考えても仕方ないけど(カッパを着るだけ)

時期的にまだ寒いんじゃないかという心配はある

まあ都市部にはイオンSCとかあるのでどうにもならなければ現地調達だ



SR400はというと

タイヤが少しあやうい

特にフロントにはヒビが見られる

間に合えばタイヤとチューブは交換しておこう

暇を見ては各部の締め付けをチェックしているけど

工具は持って行った方がいいな

チェーンオイルも持参だ

本当に荷物は最小限と思っているけど

やっぱり1週間、2000kmとなると

そうはいかない部分も出てくる

任意保険のロードサービスは100km無料

さらに修理後の搬送も全額無料

なんと帰宅旅費までもらえる

これはありがたいし頼りになる

もちろん本当にお世話にはなりたくないけど



国道でなく出来るだけ道道を走りたい

帯広から釧路そして別海、標津へ続くルートを見つけた

あと能取湖からサロマ湖、留辺蘂へ抜けて上士幌なんてのもある

どこを走っても北海道は平均速度50kmで予定が組めるから

見つけたルートをその日の感覚でつなげて走れる

その日毎の目的地(宿泊地)を決めれば

あとは10時間くらいで走れるルートを作る

途中2回くらいのんびりしても400㎞くらいは走れるかな

天気が悪いと逆に距離だけ伸びるけどね

そういう日は移動日と割り切って走ることにする



それにしてもフェリーで足掛け3日というのは何とも遠い

ちょっとした異国感覚だ

アイヌ語もじりの地名も雰囲気を盛り上げる

事故にだけは気を付けて

久しぶりのロングツーリングを楽しみたい



あんまり話題が無いので唐突だけどこのごろ気になる2題

とは云え批判的な悪態だけど



名古屋モーターサイクルショーに行ってきた

去年久しぶりに行って

もう次はないな、と思ったのにね

新車の展示会なので当然だけど

あまりオートバイの本質には出会えない所だ、あいかわらず

利益と妥協の狭間で生み出されるオートバイは

どんどんつまらない乗り物になっている

商品が顧客のニーズの反映であるならば

今のライダーはとってもつまらない楽しみ方をしているように見える

誰かが、どこかのメーカーが

「王様は裸だー!」と叫ばなくてはいけない所まで来ている

ボクにはそう見える

年寄りのボヤキではない

オーディオ、写真、と趣味を奪われた経験から云っている

物が売れるかどうかが頼りの資本主義経済の弊害

資本主義は間違いなく多様な人間性という部分でその本質を軽視する

多様性とは程遠い経済至上主義




キャブレターの外見に似せたインジェクター

エンジンフィンを持つ水冷エンジン

カウルの中のコストカットエンジン

ギアポジションインジケーターなんて素人臭い装備

燃料計?信じたことないね

そんなものいるか?

そしてその方がクールだ

人間の感性と適応力を活かした方が趣味にふさわしい

SR400のキックインジケーターなんて

仕組みがわかればもう見ない

因みにSR400のキックスタートに必要なのは

踏み抜くことではなくキックスピードだよ

まさにキックだ







ライテクの話

ライテクと云うとみんなちょっと身構える

おそらくどこまで行っても確信が持てないからだろうな

それがスポーツ性であり趣味性につながっている訳で

ボク自身はオートバイに乗る意味はここにしかないと思っている



最近ヤマハの元エンジニアとか元GPライダーとかが

プッシングステア(ステアトルク制御)とか非セルフステアとかいって

「逆操舵」を喧伝しているのをよく見るけど

あれ、やばいね

云ってることはもちろん間違っていないけど

ライテクを語る時にそれらしい造語を出すと誤解を与えることが多いと感じる

40年くらい前にオートバイ誌で盛んに云われた外足荷重とか

抜重、荷重もそうだね

逆操舵って雰囲気ではわかりづらい

でも、下りの小さなコーナーが続くワインディングでは

おそらく誰もがやっていることだ

多分あれのことだと思う

シケインの切り返しなんかで

GPライダーが素早く切り返すためにハンドルを抉ることはあるけど

あれとはちょっと違う(原理は同じか)

下りコーナーで意識すればわかるけど

逆操舵というよりIN側の保舵に近い

肩と肘を畳んでIN側のグリップをホールドする

逆操舵のタイミングでフロントの接地点がIN側へ移動すると

キャンバースラストが生じてオートバイがリーンするというけど

リーンしただけではオートバイは曲がらない

車体がリーンしたことで遠心力が発生するが

それとタイヤのグリップによる反力がバランスする

このリアの内向きのタイヤのグリップ力とキャンバースラストに

フロントがセルフステアすることで曲がっていくのだ

舵が切れないと曲がらない

極端な例を挙げれば極低速なら左にリーンしながら右へ曲がることが出来る

これは舵が切れているからだ

リーンはコーナリングで発生する遠心力に効率よくバランスするためで

遠心力を受けた車体がタイヤのグリップという反力を受けて曲がっていく

キャンバースラストよりこちらがメインだろう

そして車体の行き先はフロントの舵が決める(スリップアングルが付くけど)

とはいうもののコーナリングはそんなに単純ではない

スピードやコーナーの曲率

重心位置や車体の姿勢などすべてが常に異なっている

IN側への体重移動の準備をしながらブレーキングし

IN側のグリップを保舵すると

ジャイロモーメントによるバランス状態が一瞬破綻して

車体がリーンを始める

(これを逆操舵と云っているようだ)

リーンと同時に車体には遠心力がかかるので

それと同時にOUT側の踏ん張りを解いて

IN側へ圧し掛かるように体重移動するとグッと旋回を強める

スロットルとリアブレーキで加速力を調整しながらトラクションを高め

さらに内向力を高めるため頭を低くして加勢してもいい

エンジニアの人もリーンを終えたらセルフステアに移行すると云われている

けれどそのあとリーンアングルをさらにプッシングステアで調整するとも説明されているけど

それって単に話を複雑にしていないですか

結果的にはそうであっても意識をそこへ持って行くのは

実際のコーナリング状態では危険だと思う

やってみればわかるがプッシングに気を取られすぎると

スピードコントロールが後手後手になる

スロットルでトラクションと遠心力を探りながら旋回していけば

無意識下でもステアリングの保舵力は調整されている

この「無意識」こそが真の意味でのライテクであって

身体の動きや操作をすべて分解して名前を付けるのがライテクではないと思うが

どうですかい



けれど「逆操舵」とか「プッシングステア」の言葉はどうかと思うけど

プッシングステアは皆が大抵やっていることだ

だから理論的には絶対に正解で間違えではない

ただ単に逆操舵だけを意識的にするのは結構危険だと思う

逆操舵は結果であって反対側にハンドル切るっていうニュアンスとはかなり違う

オートバイはあくまでリアタイヤを主に考えるべきで

フロントを何とかして、はやはり危うい

同じ2輪の乗り物「自転車」みんな乗れると思うけど

初めて補助輪を外した日に

何かすごい理論を理解した訳じゃあない

「バランスをとるとは」を身体が理解したのだ

今それを乗れない人に説明しろと云われてもできない

「右に倒れそうになったら左へ逆操舵するんだよ」

これでは絶対に理解できない

名前を付けて理論ぽくしたいのはわかるけど

(カッコいいからね)

頭で考えるより身体で感じる方が大切

Don’t think.Feel.(by ブルースリー)

余談だけど

縦置きクランクのフラットツインは

スロットルの抜き差しでこのジャイロモーメントの抜き差しが出来るよ



はー、熱くなりすぎたよ


いくら安いからと云って2か月後の予定を立てるなんて、どうかしてる

2024年03月29日 | R100Trad (1990) クロ介


朝、外へ出てみると

ゼンマイをギリリッと巻くような特徴的な鳴き声が聞こえた

反射的に空を見上げるとはたしてそれは南国から帰ってきたツバメたちだった

まだ冷たい早春の空気を切り裂いて

3羽のツバメが滑るように飛び回っていた

いよいよ、春だ

さーて、今年はどこへ走りに行こうかな?



それにしても3月の半ばを過ぎて思いの外寒い日が続いた

結局最近ではいちばん春がのんびりに見える

ふくらみ始めた桜のツボミも少しこれには様子見

一足先に咲き揃ったモクレンやコブシも

少し花付きが悪く見える

つまりはそういう年もあるということか

どんなに気象予報にスーパーコンピュータを用いようとも

「自然」は、当たり前だけどそれを顧みない

それが「自然」というものだ

もともとボクたち日本人はそのことをよく知っているはずの民族

だから古来から自然やその営みを畏れ崇めてきた

人間の想像を超えることなどきっとこの宇宙にはたやすいことだ

浅はかで傲慢なこの集団は少し謙虚に過ごすべきではないのだろうか

アタマを使いすぎていることに気付かない

自分とは誰のことなのか

自分とは何を指していうのか

ちっともわかってないのだ

自分とはこの天然の身体のことだ

だから自分のことはこの身体に任せておけばよい

この世界の美しさや不思議さを理解できるおそらく唯一の存在として

謙虚に生かしてもらうだけで良い



そして今日はついに激しい雨と雷の一日になった

冬と春の最後のせめぎ合い

そして春がその勝利を高らかに告げる

「春雷」はそんな春の勝利を告げる合図だ



まだ少し寒さが残るかもしれない

と思いながらも北海道へ行く5月のフェリーを押さえた

本当は行き当たりばったりがボクのスタイルだけど

「早割り」なるものの価格がメチャ安なのだよ

だから協議(ひとりですけどなにか?)の結果

雨でも寒くても何でもいいじゃないか、と主張するビンボー族に押し切られ

予約ボタンをクリックしておいた

安いからという理由で2か月も前に予定を立てるなんて

我ながらどうにかしてる



ついでに云うと

こいつもビンボー族案件なのだけど

400ccであるSRが使用機体に選出された

クロ介(980ccオートバイ)とのフェリー代差額がなんと7500円

これはとても看過できない金額だぜェ!と奴らが食い下がる

ビジホに1泊、往復分なら2泊分は浮いてくるんですぜェ!と

フルドレスのハーレー何某とかフルパニアのR-GSなんかと比べれば

クロ介なんぞ中型とさほど違わぬのに

乗船時に車検証まで見たがるなら重量で料金設定して欲しいね

まあここでグチっても詮無い事ではある



細かいルートや日程を決めるつもりはもちろんない

まだ行っていないニセコパノラマラインと野付半島の道道950号線は走りたい

そして今回はオロロンとエヌサカはあきらめておく

決まっているのはこれだけ

荷物も「寅次郎」に倣ってミニマムにしたい

下着、着替えは2着くらい

地図とipadと充電器

タオルとポリ袋くらいかな

あえてコーヒーセットは持って行こう、のんびりするために

イスはやめてピクニックシートだな

あれならどこでも寝ころべるし

北海道だからと云って特別に期待するものは何もない

十数年ぶりに北海道の道たちに会えることだけが

ただただ楽しみだよ

照るも良し、渋るも良し

それこそボクが望むオートバイの旅というものだ



春雷の一日が明けて

久しぶりに青空が広がった

激しい雨に空気中のチリが流されて視程が良い

高いところへ昇って行って景色を眺めるには最適な日だ

クロ介を引っ張り出してそそくさと支度する

暖機を始めるがやはり仕上がりが早い

寒いといってももうそこまでではないのだろう

迷ってライトダウンを羽織ったけどこれはもういらなかった

汗かくかな、と思いながら久しぶりに高速に乗る

縦置きクランクのフラットツインは今日も快調

春の空気を切り裂いて滑るように走る

何度も云うけど

一度この縦置きクランクは経験しておくべきと思う

それくらい独特な感覚がある

BMWかモトグッチ

ああホンダのゴールドウィングもあるか

グッチは90°V型だからちょっとフィーリングが違う

ドリュウウウウウウウーと軽やかに吹き上がる

でも気持ち良さは少し似ている



浜松SAのスマートICで下へ降りる

この辺り、引佐の山は硬い岩でごつごつして険しい

都田川にぶつかって風車が立ち並ぶ山へ登っていく

狭くて急な取り付け道路をゆっくり上ると展望台に着く



ここから遠州平野が一望

その向こうには遠州灘が広がり

東に目を凝らせば伊豆の山並みまで見渡せる

視程は約100km

夜景がきれいそうだけど

夜中にここへ来るのはちょっと大変かもしれない

本当にこの風景以外何もないところ

もちろんこの景色があればそれでよい



そのあと久しぶりにオレンジロードへ行ってみた

むかしはシュワンツとかドゥーハンが煙を吹いて走っていた

そういうボクもガードナーとか思っていた節がある

いまはむかし、だ

もちろんもう峠を攻めるなんてしないけど

あの頃より確実に上手くなっているとは感じる

滑らかでスムーズな走らせ方が出来る

そしておそらくマージンが増えた

ワインディングで大切なのはマージンだ

それが自分だけでなく周りの人の安全にもつながる

安全に走ることが何より最優先だ



やっぱり春は気持ちが良い

ベタな言い方だけど生まれ変わったような開放感がある

もうすぐ桜も咲くだろう



未知の体験に歓喜したサルは繰り返しスロットルを捻り続ける

2024年03月13日 | SR400(2019)


「春」と云ってももう良いのだろう

水面を渡ってくる風が緩やかに南から吹き付けるこの海岸

今日は波も穏やかで遠くまでふんわりと凪いでいた

アルコールストーブで沸かした湯でコーヒーを淹れると

少しコーヒーにアルコールの匂いが移ると思わない?

あ、思わないか

そんなもやもやとしたコーヒーを啜りながら

渚に打ち寄せる波を飽きもせずに眺めている



この海岸にはもう40年以上前から繰り返し来ているけど

海の方を眺めている限りでは本当に何も変化が無くて

遠くに見える渥美半島に少し風車が建ったくらいか

消波ブロックも防波堤もそのまま

だからここへきて海を眺めていると

まるで時間が止まっているかのように感じる

過去も未来も何も変わらず

ボクが生まれる前も

ボクがいなくなった後も

ここでは本当にそんなことがどうでも良いと思えるから不思議だ

自分の意識をどこかへ放り投げだして心の底から安堵できる空間だ



とにかく、もう春だ

3月に入ったその日は

あんまり陽気が良いので

いつもの「涼風の里」へ行ってみた

暖かかったとは云え

山里の冬にはそれなりの厳しさがある

ヘルメットのシールドから忍び込む風は

まるでモランの溜息のように凍えて

ボクのカサカサの頬を冷たく切りつける

冬用の綿の入ったグローブの中ではすでに指先が痺れていた

凍結の感じはほぼ無いけど

路面温度は相当低そうだから少し気を遣う

それでも案外いつもどおりに「涼風」に辿り着いた



3月は「風の候」だ

移動性の高気圧が東の海上に抜けるとそれを追って低気圧が近づく

南の強い風を呼び込んだ後

通過時には嵐のような雨と風をもたらし

雨が止むと今度は北寄りの冷たい風を吹き込む

正直云って夏や冬の厳しさよりこの季節の「風」が嫌いだ

雨より断然「風」がイヤだね

風の中では思考が停止してしまうのだ

オートバイに乗って走る様を俗に「風になる」とか云うのがあるけど

「風になる」なんて一度だって思ったことないね

むしろいつも「風に逆らっている」って感じじゃない?

この日も風が出ていたが幸い緩やかなものだった

少しためらったけどその風の中でコーヒーを淹れてみたら

それはなぜだかちょっといつもより旨く感じた

風は嫌いでも

風の中で飲む熱いコーヒーは好きなのかもね

今日のコーヒーは風が強かったのでガスのストーブで湯を沸かした

そしたらそれはやっぱりガスの匂いが少しした

いや、これはカップのステンレスのクサ味かな



SRだ

なんと云う青なのかわからない「青」のSR400

ヤマハのHPで見たら「グレイッシュブルーメタリック4」とあった

ますます分からない

金属的な光沢の灰色掛かった青「4」

なんだ、それ?

1と2と3を見てみたい



名前はまだない

自分が買ったオートバイにいちいち名前をつけなくても、とは思うが

何となくいつも名前で呼んでいる

実はこの微妙な「青」色から密かに

「シータ」とか「シーちゃん」と呼んでいた

空から青色の光を放つ飛行石の力でふんわりと下りてきた

ラピュタの正統な王位継承者

「リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ」

いや、やっぱり構えすぎで気恥ずかしい

きっとまだ変わると思う(気に入ってはいるけど)



SRだ

何度も云うが偉大なるXT500(パリダカ総合優勝にして連覇)という

エンデューロ(ヤマハはトレールという)モデルが素(ベース)

SR500はそのオンロード版として生まれたいわば双子だ

そして日本の特殊な免許制度に合わせるべく作られたSR400は

それらシリンダーのストロークをダウンさせた兄弟モデルで

ボアストロークがほぼスクウェアな500のエンジンを

ヘッドから作り直す予算が無く

コンロッドを長くすることでストロークを減らし生まれた

つまりSR400のショートストロークのエンジンは

大人の事情の結果でありおそらく必然ではなかったのだと思う

しかしこのことが逆に400を特別な存在にしたのだとも思える



それまでの単気筒エンジンたちと比べて

クランクマスが小さなSRのエンジンは(500に比べれば400の方が大きいが)

どうしても元気に回りたがるエンジンだ

キャブレター時代のSR400は7000rpmの最大出力に対して

最大トルクを6500rpmで発生させていた

これはインジェクションモデルになり少し下がったが

それでも最大トルクは5500rpmでのもの

だから(マルチとは比べ物にはならないが)やはり回して使うエンジンであり

現にエンジンもどちらかと云えば「回りたがり」だと感じる

巷で5型とか最終モデルと云われるボクのSR400だって

意識しなくてもスムースに高回転まで吹き上がっていく

もちろん4500rpmを超えると

お尻、足の裏や掌と云ったオートバイに触れている面に

強い振動が伝わってくるが

それはそれで刺激的でまったく悪くない

振動自体は硬質で強くはあるが角が尖っていないので

快か不快か、ならば間違いなく「快」だ

実際あまり気にせずに強く加速させ巡行へ持ち込むと

まるでデカいカブに乗ってる感じさえするのだ



けれどこの5型が出た頃

オートバイの専門誌で盛んに低速からの力強さが取り上げられた

中速域のトルク感はまるで排気量が上がったかのようで

日常域でスポーツできる「大人」のモデル

SRの完成形とまで絶賛され盛んにもてはやされていたのを思い出す

そもそもビックボア×ショートストロークのSR400

しかも従来のビッグシングルと比べて小さなクランク

ECUのコントロール位でそんなにも性格が変えられるものかと思うが

如何せん

ボク自身が以前のキャブ車に乗ったことが無い

唯一SRX-6をちょい乗りさせてもらったくらいで

あの時の記憶といえば左折とかで減速した時

ギアの選択を間違えると怖ろしくスナッチが出て

扱いづらかったというものくらいだ

だからこれは想像なのだが

「市街地でクルマに続く時5速へ入れずに4速キープだった」

という記述を見たことがある事からも

おそらく以前のSR400も回転を落としてしまうとスナッチが出て

粘るエンジンと云われながらもやはり使いづらかったのではないのだろうか

それをECUの魔法でトルクバンドを下げ

おまけにそこら辺で使うと排気音もよく聞こえる演出まで加えたのだ

ゆっくり走っても気持ち良いですよって云いたくて



まーこれまでの印象から云えばそれも決して悪くない

ただし4000rpmからのトラクションは逆に感じにくくなったんではないだろうか

2500くらいから4000rpmくらいまで続くトルクの盛り上がりは

それ以上回してもあまりはっきりとはしなくなるからだ

けれど実はボク

あることに気付いてしまった(思い出すだけでついニヤッとするほどね)

それはSRの5速ギアとこのエンジンの相性が

とても特別なものになっているということだ

「5速 2000rpm」

多分以前のSR達なら少しスナッチを感じたんじゃないかな

でも5型のSRはここから使える

この時の速度約40km/h

そこからスロットルを半分くらいガッと素早く開けると

一瞬のタイムラグのあとダッダッダッダッとダッシュを始める

それは

2500rpm 50km/h強

3000rpm 60km/h強

3500rpm 70km/h強

そして4000rpm 85km/hと

この時のエンジン音と排気音そして加速感がヤバい位だ(嫌いだなーこの言葉)

実質的な加速力ではなくあくまで加速感

フィーリングの話だ

それは今までどんなオートバイでも感じなかった感覚で

得も云われぬ快感を伴う

取り付かれたサルのように繰り返しスロットルを捻ってしまうほどだ

こんなにも大量のエンドルフィンの放出を実感したのは初めてかもしれない

そしてこれこそが低速からのトラクションの魅力なのかと気付いた

ECUによって作り出されたこの特性

昭和世代のジジイにはそれが癪に障るけど

やっぱり無条件で楽しい

意味もなく60km/hくらいでスロットルをガバッーガバッーって

おサルは何度も何度も繰り返しやってしまうのよ

そしてそれはやっぱりコーナリングにも効く

コーナー入口でエンジンを2500rpmに置く

3速 35km/h→4速 45km/h→5速 55km/m

とバンクしながらでもシフトアップしていき

4000rpmまで引っ張れば80km/hを超える

上りがキツければ4速だろうけど

高速コーナーなら5速ホールドのままスロットル操作だけで走れる

そしてその方が楽しいのだ

え?

遅い?

そうなんだよ、遅いんだよねー

でもブラインドの対向車に怯えながらペースを上げすぎるより

しっかりとトラクションの掛かったコーナリングの方が

断然楽しいよ



大型のオートバイに乗り続けて

老いた時どこへスペックを落とすか

これは結構当事者には問題なんだけど

個人差も大きいしね

バイクを操るこだわりや深みを感じられるという視点が大切なのだと思う

ボクらレプリカ世代にはのんびりトコトコなんてできない

だから原二、軽二輪はやはり楽しくない(2ストなら別だけど)

250を超えると車検も問題になるけど

ひとつのレベルとしてやっぱり排気量500ccくらい

最大トルク3以上

この辺に答えがあるような気がする

突然の春の陽気に誘われて山へ踏み込んでみる

2024年02月24日 | SR400(2019)


このところの暖かさに驚いたのは雲雀たち

どいつもこいつも慌てふためき

我先にと競いあっては花粉交じりの空へ昇っていく

おかげで長閑な冬枯れの田畑には

そこいら中でけたたましい囀りが響き渡ることになる

それはもう大騒ぎ



そういう人間様の方だって

予想外のこんな陽気

何とはなしにホッとした気持ちにもなるもんだ

雲雀たちも人間も同じ国に暮らす朋輩ということか

私事で云えば

この冬に新しいオートバイを手に入れたりしたもんだから

いつもの冬よりマシマシで

春を心待ちにしている

だからこんな陽気ならもう山へ行っても良いかも

と、途端にそわそわざわつき始める今日この頃だ



走り出してみると

まだまだ路面には乾ききらずにウェットパッチが残る

それでも気温はこの時期としては異様に高く

フリース素材のスウェットに綿のスイングトップを羽織っただけだ

首元を抜けていく風さえも心地よく感じる程だった

チェーンクリーナーを買いに寄った近くの用品屋

駐車場から空を見上げるともう青空だった

--――これなら山へ行ける(ウヒヒッ)

すっかり慣れたキックスタート一発

でもこれ本当にいい

「さぁ、行くぞィ!」とSRにも自分にも気持ちが入る



中央総合公園の丘陵を越えて

下山(しもやま)の方へ踏み込んでみた

両側に樹々が生い茂る細い県道には

このところ続いた風雨のせいで

枯れた枝が降り積もっていた

陽があたらぬ場所も多くて少し気を使うが

それでも山の道は久しぶりで楽しい



ワインディングではまだSRのステアを掴みきれていなくて

INに寄りすぎたり

コーナー出口で帳尻が合わなかったりはある

でもフロントの空気圧をデフォルトの1.75barにあわせてみたら

少し従順になったかな

体重がある方なのでリアのイニシャルをかけてみたのも良かったか

いや、こいつはかけない方が良いような気もする

やはり向き変えの指示を出してからINへ向かう感じがすごい

少し上体をかぶせて(肘をまげて)

アタマをステアリングヘッドのやや内に置いたまま

いつもよりコーナーの外側を少し長めにトレースしながら進入して

向き変えポイントでスッと抜いてやるだけで

SRが鋭く内向し始めるのがわかる

あまりエンジンを引っ張らずに小刻みにシフトアップして

トラクションをかけ続ける方が良いというコメントを聞くけど

5000rpm以上の振動やパワー感も悪くない

あの音と振動はエキサイティングだ



でも細かくシフト操作しながら

少し高いステアリングヘッドを右へ左へとやっていると

オフ車に乗ってるような楽しさが蘇る

知ってのとおりSRはXTベースなので

股間をタンク後端に乗せて

上体を立て、肘を張ると林道へも行けそうな匂いがする

もともとロングストロークのエンジンって好きじゃない

高回転高出力で育ったもんだから

ここが気持ち良くないと好きになれない

XLR250が楽しかったのはそれかな

たまに代車で貸してもらったブロンコも愛せそうな予感がしたし

キックスタートだって250レプリカやオフ車は当たり前だった

あれだな

家系の演出されたラーメンより

50年続いてる町中華のラーメンが旨い

これに似てる



SRを引き取って家へ向かいながら

ちょっと心配してたのは

もうクロ介(BMW R100)に乗らなくなっちゃうかなってことだった

R100の自分的なマイナスポイントは

停まっている時の取り回しの悪さだ

あとハンドルの切れ角が小さくてUターンに少し気をつかう事

まあこの2点だ

入ってはいけない所に入った時の対応がとても厳しい

何度かいっそ倒してシリンダーヘッド軸にして回そうかと思うくらい

ニッチモサッチモになることがあるのだ

少なくともSRにはそれは絶対ないのだろう

でも実を云えば

クロ介に乗らなくなるかもなんて不安は一瞬で払拭された

クロ介で走り出した瞬間

五感からどばーっとドーパミンが出るのを感じた

好きなんだから当たり前だけど

BMWフラットツインはモノが違うのだよ

良いか悪いか

上か下か

高級か低級か

そんな話ではない

SRとR100は「モノが違う」



SRは間違いなくスポーティーだ

24PSしかないけど

鋼管のフレームとスイングアームだけど

スポーツの魂がある

レーシーではなくスポーティー

誰よりも早く走り切るのではなく

オートバイを工夫して走らせるおもしろさ

それはワインディングだけでなく

シティロードでもカントリーロードでも可能だ

絶対速度に縛られずに走る楽しさを感じられる

これこそがSRの個性であり魅力だ

フラットツインの独自性や趣味性をもってしても

SRは不思議な魅力でライダーの心に忍び込む

そしてそのまましっかりとそこに根付いてしまうようだ



ここまでの長い長い時間は真の理解のための必然だった SRラプソディ その3

2024年02月10日 | SR400(2019)


このごろのその日暮らしは

あー、と思いついては

おもむろに(気になる箇所を)覗いてみる

そして、あーやっぱりか

と(不具合箇所の)手直しにかかるか

あるいはピカピカパーツたちを磨きにかかる

そんな感じだ



別に愚痴りたいんじゃなくて

激しい落胆の拠り所が欲しいから書かせてもらうのだけど(いや本当に)



誰にだって単なる見落としや見当違いならあるだろう

でもそれを生業とする者ならばどうだ

中古車販売において販売店の責任は大きいはずだ

昨日免許を取ったばかりの20歳の女の子だってお客さんになりうるのだ

重要度の高いブレーキ周りのチェックを忘れるなんてことがあるのだろうか?



実は今回購入した中古のSR

ブレーキパッドが摩耗限界を超えていた

でも

それに気付いたのは別の不具合からだった



しばらく走った後

再始動しようとするとエンジンの始動に手間取るのだ

フューエルインジェクションなので始動は容易い現行のSR

それはちょっと予想外で

そのたびに空キックを数回かましてやる必要があるのだ(ガス抜き)



プラグでも見てみるか、とプラグキャップに手を掛けたらグラリと動いた

その時は、SRの振動って強烈なんだな

こわいな、とちょっと笑ってしまったボクだった

そのまま外しにかかる

ごそごそと覗き込んでいると

今度はプラグの右斜め上に何かのケーブルがぶら下がっているのを見つけた



それはプーリーから脱落した戻し側のスロットルケーブルだった

「いやーんSRったら…こわいー」

じゃねェーんだよ

いくら振動激しくてもプーリーからケーブル外れるか?

じゃあこのプラグの緩みも怪しいな



ふいにその時ちょっと気になっていたことが脳裏に蘇った

納車の時にフロントブレーキのキャリパーがダストまみれだったことが

気になったのだ、見てないのか?と

スライドピンを抜くだけでキャリパーは外せるので

取ってみたらば「ビンゴ!」

じゃねェーんだよ

ピストン側のパッドはインジケーターの溝がほぼゼロ

ピストンもキャリパーもダストまみれ



メルカリで買ったんだっけ?

だまされちゃったー

こわい、自己責任だもん、自分がしっかりしないとね

ウソ

オートバイ屋さんで買いました



もともと嫌いじゃないから自分でせっせと手直しするんだけど

正直もうあの店にはいかないと思う

いつものテックさんに「申し訳ないけど……」と

他店購入車のメンテをお願いしてみたら

快く引き受けていただけたのがせめてもの救いか



でもSRってメンテがしやすい

キャリパーもシングルだし

タペットもIN OUT一組

部品はみんな剥き出しだし

インジェクションなので燃料ポンプが面倒かな

タンク外すのにパイプやケーブルまであるから

昨日はエアエレメントにタンポポの綿毛が残ってるの発見

いつ吸い込んだヤツやねん



なんやかんやでひと通り触ってやって

おかげでSRとの親密度はいっきに深まった

それはそれでよかったけどさ

タイヤにヒビがあるな、とか

ブレーキオイルちょっと汚いな、とか

取説もおまけ工具もないんだ、とかね

そんなのはいいんだよ

ただね

信頼関係を築く前にその気も無くなることがなんだか切ないのよ



本当はね

どうでも良いからもっとSRで走りに行きたいよ

本当にヤバいくらいかわいいやつだ

すべてが予想以上でうれしい

こんなにボクに響くオートバイなら

もっと早く出会いたかったと少し後悔している

けれど

出会うタイミングには本当に微妙な機微があり

20代や30代でSRに乗っていたら

こんなにも心惹かれなかったかもしれないとも思う

改めて数えてみたら

このSRで32台目のオートバイだった(我ながらちょっと引く数字だ)

本当にありとあらゆる種類のオートバイの果てに

SRを手に入れたことは

やはり必然だったのかもしれない

本当にこれが生涯最後のオートバイになるんだと思うけど

ボクが免許を取ったとき(1980年)にはもう販売されていたオートバイに

40年も経って最終的に出会うなんて

まるでチルチルとミチルになった気分だ

SRとボクのキャリアには不思議な縁があるのかもしれない



SRラプソディ その後の顛末 やっぱりね

2024年01月29日 | SR400(2019)


いろんな理由を考えつくもんだ

オートバイを買うためならね

モーターショーの会場で目が合った、とか

オートバイ屋の店先で「一緒に帰ろう」と云われた、とか

まあまあ大概は下らない言い訳にすぎない

もちろんそれは本人が一番理解している訳だが

けれど、何かしらの理由がそこに在ってくれれば

オートバイを買うという贅沢で無用な

それが故に付きまとう購入への後ろめたさへの

せめてもの救いになるような気がするのだ



一度はもう大きいオートバイは止めよう、などと思った時期があったのに

自分の人生の中で、オートバイが占めてきたモノの大きさに気付き

遠回りしながらも結局ボクサーツインのBMWを手に入れてしまったのだ

それはこっそり乗り始めたエストレヤへの不満から始まったのだが

もともとはR100RSやW800を処分して

年寄りはクルマだよ、とばかりに当時気に入っていたクルマを買い

どうしようもない未練から手元にはカブだけは残していた

カブを走らせるのはもちろん楽しいんだけど

とっても良く回るエンジンなので

どうしてもギャンギャン回転を上げて走らせることが多かった

それなりによく走ってはくれるんだけど

カブってそういうオートバイじゃないよね

だったら250くらいの大人しいやつならいいか、ってことになって

それでエストレヤを買った

ずいぶん前だけど木曽の山の中でエストレヤの排気音を聞いて

痺れた経験があったからだ

でも非力すぎた

最大トルク1.8kg-m

充分走るけどトラクションが足りない

使える回転域も高くて単気筒らしさは出せず

車体もとても足らない

やっぱり(最大トルク)「3」くらいはいるよなー

と漠然と感じたのを覚えている

そもそもあの性格ではのんびり走っても楽しくもなんともないし

ボク自身ものんびり走りたい訳ではない(そもそも結構飛ばす方が好きだし)

スピードをコントロールしてコーナーへ向けてリーンし

エンジンのトルクを利用してトラクションを活かしながらコーナリングしたい

誰かより速く走りたい訳ではないし

レーシングスピードでの限界性能を楽しみたい訳でもない(公道だしね)

オートバイと会話しながらオートバイを自由に操りたいだけなのだ

つまり楽しく気持ちよくスポーツ走行したいのだ



もう一度ボクサーツインを、と探し始めた時

実はツインショックの(R100)RSを考えていた

かつてモノサスから二本サスへ乗り換えた時に

そのフィーリングの違いを目の当たりにし

中速から上の力強さに惹かれていた

それと、モノサスボクサーは

将来を見据え開発されたKバイク(水冷直4)のリリースで

BMWバイクのメインストリームを外れ消え行く運命だった

けれど市場のニーズの多さに動かされたメーカーは

パフォーマンスの追及はKシリーズに任せ

ボクサーは気軽に扱えるツーリングバイクへとシフトし存続が決まった

キャブレターを絞ってパワーダウンさせたエンジン

「日常域で使いやすくなった」と

でもこれ、すごく傷つく言葉じゃない?

下手クソのためにパワー絞って使いやすくしてあげましたって聞こえる

けれどたまたまモノサスボクサーとの出会いがあり

結局それを手に入れた

実際にそれはすごく乗りやすかった

レイダウンしてストロークが伸びたリヤサスと相まって

本当に完成された性能を感じたし

何よりボクの感性がこれを認めるほど成長していたことが大きかったと思う



話を変えてTZR250

ヤマハについて書いておきたい

20代のボクの興味は

カワサキの空冷4気筒400ccを乗り継いできた後

先鋭化する2ストレプリカに移っていた

世界GPでフレディがダブルタイトルを獲るなど

ホンダも2ストに本気を見せていたが

ボク的には2ストといえばRZで

特に750キラーの異名を持つRZ350に惹かれていた



だからTZRが出た時すごく惹かれたんだけど

半面そのマジメ感あふれる外観にちょっとがっかりもしていた

フロントも16インチではないし

アンチノーズダイプフォークでもない

フロントディスクはなんとシングル(でもフローティングだけどね)

シートもしっかりアンコが入っていてひどく普通なのだ

でも結局TZRを買った

それはマイナーチェンジの時に設定された

美しいソノートヤマハのジタンブル―の外装にメロメロだったからだ



実際に走り出すとTZRは怖ろしく普通でありながら

ワインディングへ行くと本当に速かった

そしてすぐにTZRがボクの指示を待っていることに気付いた

指示をすればTZRは期待以上にそれに応えてくれるのだ

走ることが楽しいと初めて感じた

でも実際は指示待ちしてるわけではなく

入力に対する反応が人の感覚に近いというカラクリなのだ

もちろんワインディングだけでなくて

ロングツーリングもすごく得意な「レプリカ」で

ハンドリングのヤマハとすでに云われていたが

キャリアの浅いライダーにもそれはすぐに理解できるものだった

操る人間の感性に寄りそうバランス

それはヤマハのスポーツバイクに込めた魂だった



けれどバイクブームに後押しされた市場は

オートバイの本質を離れますますその性能(スペック)は先鋭化していった

ホンダの88NSRは刺激的だった

当時の大型オートバイとなら発進加速で負けないし

公道の狭いワインディングでは無敵だった

ゼロ発進でフル加速するとフロントを軽々と持ち上げ

加速Gでは身体中の血が引いていく感触がするほどだった

そのあともボクは馬力の虜になったまま歳を重ね

ZX12Rにまで行きついた

今思えば何たる無知と嘆きたくもなるが

本当はボクはもう気付いていた

TZRがボクの求めるオートバイだったのだ



軽くてコンパクトな車体

強い骨格にコントローラブルなエンジンとブレーキ

YPVSの生み出す豊かなトルクを操って立ち上がる気持ち良さ

あれがボクの理想のオートバイの姿だった

のんびりトコトコではなく

グリグリっとトラクションを感じて走りたい



次はSR400だ

SR400は燃調用ECUを搭載しながら

厳しくなる一方の排ガス騒音規制に対応していた

しかもエンジン本体や車体デザインを変えずに

SRがSRのままであり続ける開発を続けていた

正直いえばSRって興味の中心にはないオートバイだった

けれどSRの広告や記事はこの40年間途切れることなく

当たり前のように「ふーん」と眺めていた

そして2021年

翌年からのABS搭載義務にまるで反旗を翻すように

あっさりと市場から消えてしまった

ファイナルモデルは4263台も販売

「え?新車買えなくなるの?」

そう感じた人がいかに多かったかということだろう

そういうボクもその中のひとりだ

いつでもその気になれば(買える)、はもう通じない



去年の夏にSRに寄せる思いを記事にした

「SRラプソディ 忘れられぬ恋はかなわぬ恋というけれど」

あれから事あるごとにSRについて調べていた

それは、なぜヤマハがSRにこだわってきたのか、がとても気になったからだ

その中でいちばん気になったのが実は最終モデルの開発の話だった

最終のRH16Jは排ガス規制対応のためECUを大型化

それはMTシリーズと同じタイプのECUなのだ

インジェクション化のためにSRはフレームや外装にまで変更が加えられているが

それはすべてSRをSRとして残していくためだった

そしてその最新のECUを得ることによって

SRは少しサイボーグ化しているんだけど

より良い性能、のベクトルが

当然のように「より良いSRとは何か」に向けられていた

「より良いSR」とは、「SRの本質」を求めるということで

スムースでパワフル、ではないということだ

最大トルク発生を3000rpmに落とし

「日常域での使いやすさ」と嫌いなフレーズで云いまわされながら

SRは本当にSRらしく作り込まれた

今まで思っていた高回転での性能より

中速域(アクセル開度2分の1)での性能こそが

ビッグシングルの味わいなのだと云わんばかり

そしてそれは日常速度域でのスポーツ性に最も近い

2500rpmから3500rpmのトルクバンドを使って

コーナリング中に矢継ぎ早にシフトアップすれば

SRはもっとも「らしく」旋回していくのだ

これこそがボクが求めている姿に近いオートバイの筈だ

あらためて強く感じた

ぜひ乗りたい、と



という訳で

これが今回「SR400(RH16J)」をボクが買った理由だ

ヒヒヒヒヒッ

2024年 年頭所感 など

2024年01月08日 | R100Trad (1990) クロ介


何となく、

今年はよい事あるごとし。

元日の朝、晴れて風無し



年が明けて元旦が穏やかに開けると

いつもこの啄木の歌を口ずさんで深呼吸する

そして本当にそうであれば良いのにな

と、少し切なくもなる

夕べ遅くに降っていた雨もすっかり上がって

空はすっきりと晴れ渡った今年の元旦

今年はどんな一年になるのかな

いやいや

今年はどんな一年にしようかな、で過ごすことにしよう



でもね

「よい事」なんて普通はあまり訪れない

第一、よい事に出会うようなそんな生活してないしね

だから毎日淡々と暮らせれば

そして毎日淡々と勤しんでいければ

他に何もいらないのだとも思う

他人ごとに期待して落胆するほど暇じゃあないし

悪いことにもたまにはお目にかかるだろう

そんな時こそいつもどおりにやれば良い

禍福は糾える縄のごときものだし

人間万事塞翁が馬なのだ

そして、とどの詰まりは

人間到る所青山あり、ということだ



さて、今年は「旅」の一年にしたい

久しぶりに北の方へ行ってみようと思う

おもむろに書棚から引っ張り出した地図は

なんと2006年版

 

仕方なく大判の一枚地図を新たに買い求めた

結局こういう全体図が一番役に立つ

ツーリングに出掛ける前に

四六時中目の隅に入れておくと

地名とその位置関係がおのずと頭に入る

実際に走りに出るとそれだけで案内標識を見れば一日走れてしまう

あとは県道(道道か)とか市町村道で面白そうなルートを探す

それを繋いでざっくりウェイポイントを決めれば十分だ

あまり決めすぎると窮屈になるし

行動がそれに縛られがちだ

道を間違える

何処にいるのかわからない

通行止めで通れない

店がやってない

寒くてやばい

温泉で変なおじさんに絡まれる

どれも、どんなことも楽しい

予想以上期待以上なんていらないし

ネットで調べたとおりなんて意味すらない

楽しさや充足感は走る距離に関係しないし比例もしない

本当は遠くへ行かなくても良いんだけど

何日も一日中オートバイのことだけ考えてる

ツーリングというそんな状況に引かれるのかもしれない



もうひとつ挙げれば

「日本100名道」かな

ボクも以前(若いころね)は走ることに意味を持たせようと

あれこれ工夫していた時期があった

「日本一周」なんていうのもありきたりだけど

やっぱり魅力的で

何をもって日本一周と定義するかは自由なんだけど

何か縛りがあった方が充実するかなと思っていた時

たまたま「日本100名道」っていう写真集が目にとまって

直感的に「これいいかも」くらいの感じで

そこに載っていたルートを走破しながら日本を回ることにした

「日本100名道」は写真家の須藤英一氏の写真集で

2002年から2013年まで内容を見直しながら3版を重ね

最近ではweb版も公開されている

柄にもないが

ボクにとってはある意味ライフワークにもなっている

今となってはもうどうでも良くなってるんだけど

折角未踏破があと20ルート位まできているので

可能な限り走破していこうと思う

でもね、さすがに残っているルートは遠方が多くて

全部埋める自信はとてもない

桜島の火山の中腹にある湯之平展望所へ向かう道なんて行けるかな?

長崎鼻も佐多岬も都井岬も行ってるのになー



という訳で取り留めもなく

年頭に当たっての所感は以上

ですね

ともあれ、明日が来ると信じて生きていく、それしかできないのだから

2023年12月27日 | R100Trad (1990) クロ介


今年初めての本格的な寒波がやってきた

北から吹き付ける強い風は凍える冷たさで

改めて冬のつらさを思い知らされる



ガレージのシャッターを上げると

クロ介(BMW R100Trad)に冬の朝陽が差し込んだ

カバーを外しタンクに掛けた毛布を剥ぐと

クロ介の金属のボディをゆっくりと解すように光が包む

左右の燃料コックを開けて

チョークを一杯に引き

セルを回す

点火の微妙な兆候を察知してそれをスロットルで掬い上げてやると

1000ccのフラットツインは容易く目覚める

真冬はこのまましばらく暖機運転する



ヘルメットをかぶりグローブをはめながら

クロ介の周りをゆっくり一周して機体をチェックしていく

ミラーやメーターの曇りやスイッチの動作

パーツの取り付き具合とか灯火の具合とか

オイル漏れ、タイヤのトレッドの様子

そんなところか

アイドリングが上がり始めたらチョークを戻して

スロットルをわずかに開けて固定する

左右一体成型のでかいクランクケースに熱が回るにはまだ時間がかかるけど

この辺りで走り出すことにする



気持ち長めにゆったりとクラッチミートさせて発進

1速を少し引っ張ってガスを抜いてやる

シフトアップして2速

3500rpm 60km/h

しっかりと着込んだはずのウエアでもどこかから冷気が忍び込んで

その寒さで体に思わず力が入るのか

体中の関節がぎこちなく

ポジションがなんとなくしっくりこない

冬の「あるある」だ

自宅周辺の脇道から県道との合流点で

まだ怪しいエンジンをストールさせないように

スロットルに少しテンションをかけながら停止する

合流して3速までシフトアップ

エンジンの音は明らかに軽く滑らかになり

クロ介からもようやく「GO」サインが出る



緩やかだけど深いコーナーが左右に連続するいつもの場所

目線の移動だけでゆったりとリーンをはじめ

外足を支点にして内側に荷重を強め

フロントの舵が追従する感覚を確かめる

切り返しのタイミングで内足のステップに荷重して車体を起こしながら

それをそのまま支点にして反対側へリーン

これが無意識でできていれば問題ない

国道へ出るまでに他にもまだルーティーンがある

一旦停止からの左折

一旦停止からの右折

低速でのクランク(国道の側道が下をくぐっている箇所だ)

国道に合流してからの素早い加速

などなど

その一つ一つを試すのがとても楽しい



いつもの散歩コースはこの国道を少し走ったあと

3桁の国道に分岐して山に入っていく

峠が2か所

高速巡行できるエリアが3か所

山に入ると信号はほぼ無いし

いつも行く「涼風の里」までは約50kmあるけど

所要時間は50分くらいかな



おんなじ道を走っていてもその日によって感じることは違う

景色の事じゃなくて

オートバイと自分のことだ

何処へ行くのかとか

何を喰おうかとか

誰と行こうか

そんなことよりオートバイとのコミュニケーションばかり考えている

そしてそれが何より楽しい

コンビニまでカブを走らせても

ツアラーで九州まで一気に走り通しても

その楽しさは全く変わらないし

そして

初めて友達のオートバイのスロットルをブリッピングした16の時と

(その時のボクの顔を見て友達は「オマエ、オートバイにきっと乗るぞ」と云った)

何十台ものオートバイを乗り継いで

何万キロも日本中を走り回った今も

オートバイに対するときめきがまったく変化していない

大声で叫びたいぐらい

オートバイが好きだ

ただそれだけだ



天気予報ではあんまり良さそうなことは云ってなかったけど

なかなかどうしての快晴だった

風も無くて今年最後のクロ介との散歩は楽しかった

山はすっかり枯れ果てて

木々の尖った枝先がツンツンと真っ青な冬の空を突き刺す

それでもどの枝にもしっかりと春に芽を吹く蕾がびっしり付いて

なんだかその生命力がとっても頼もしく見えた



椅子を広げてコーヒーを淹れ

のんびりと風景たちを眺める

枝から枝へエナガの群れが飛び回る

皆一様にチュビチュビとうるさく囀って

ボクの頭の上をあちらからこちら

そしてまたこちらからあちらへと忙しない

けれどその小さな体に似合わぬ程の長い尾を上下に振って

器用にバランスをとる姿がとても愛らしい

「君たちはここで冬をやり過ごすんだね」



今日ここへ来るあいだも

きのう降ったのか雪が残っていたし

一日中陽の当らない山陰は道路が湿って黒くなっていた

気を付ければおそらくこの辺りなら真冬でも入れるのかもしれないけれど

凍結の不安を抱えたままでは全く楽しめないので

1月、2月は山へ向かわないことにしている

だから「涼風詣で」も今日が今年最後になるだろう

その分少し感傷的な気分で山や川を眺めた

先日も書いたとおり

もう来年が当たり前にくる年齢ではない

もちろんわかっている

死ぬことより生きることをこそ考えるべきだ

明日が来ないと分かってもそれは明日にならなければ分からない

明日、何して遊ぼうかな?

それの繰り返しが人の営みだ



クロ介を手元に置いて丸3年がたった

10年以上店頭に放置(展示?)されていた車両なので

徐々に不具合をつぶしながら機械としての信頼を深めていった期間だった

それとそれまで乗っていたR1150RTを売却して

自分自身が長距離のライディングから遠ざかっていたこと

壮年期に入って明らかに身体機能が落ちている自覚があることなど

乗り手のリハビリとリビルドが必要だったこともあって

ロングツーリングをあえて控えていた

けれど500kmを超えるようなツーリングも

以前のように

というかそれ以上に

こなせるだけの技術とフィジカルとメンタルが

身に付いてきたように感じている

なので、来シーズンからはもう少しいろいろなところへ走りに行きたい

来年クロ介と遠乗りすることを楽しみにしている



今年もたくさんの人に読んでいただきとても感謝しています

歳を重ねた分いろいろと感じるところも多くなって

よせばいいのにあれこれ悪態をついてばかりで......

けれど正直な気持ちなのでそこに少しでも何か感じていただければと

このブログにもいつまでも蹴りがつけられないのかもしれません

オートバイという不思議な乗り物が

なぜだかボクの心と響き合うその感覚を

同じように響く人たちに感じてもらえれば

というのが原点です

いまはまだとてもそんな実感がないので

もう少し続けさせてもらえればと思っています



ということで来年もまだまだ走るよ

そしていつかどこかの路上で

良いお年をお迎えください