いまでは珍しいゲーム機、パックマンなどが置いてあり両替ついでに子供らが菓子やジュースを買う。
自分の美学で育児をする。
子供は愛情を注ぐものだ。
愛情ってなんだろう。
悠真は考える。
家に帰ると弟が縛られ浴槽のなかに顔を押しつけられていた。
またはじまった。
「殴って言い聞かせますから。帰ったらわかってるね!!」
見かねた近所のひとが児童相談所に連絡を入れたが持論を展開する母親の考えを真っ向から否定した。
躾が悪い。
それを聞いた途端、母親は気が狂ったように叫びだした。
いま、思えば母親は境界知能だったのかも知れない。
弟は字が書けなかった。
発達障害はいまでこそ知られる障害だが当時は個性だと片づけられた。
詰め込み教育。
右翼養成学区と揶揄されるほどに勉強より体育。
とくに運動会になると、本番さながらに通しで練習させられる。
それも一回二回ではない。
そうなると授業はお座なりになる。
遅れた授業を一気に走り抜ける。ついていけないものはここで落第の一歩を進むことになる。
成長とともに非行が垣間見える。
同和と言っても普通に働いている父親は多かった。
給食費を封筒に入れて持参する時勢。
給食費が払えない悠真の家庭は支払いが遅れる生徒に教師は手を上げさせる。
手を挙げるのは悠真一人。
ヒソヒソと悠真のことをクラスメイトは話す。
「あいつ、ノートすら買ってもらえないんだぜ」
ノートは消しゴムで消してなんども使わなければいけない。
うっかりノートを破ってしまうと母親から叩かれる。
本当の愛情ってなんだろうか。
特殊学区というだけあってこの学校にいる教師もおかしなのが多かった。
通知表が配られる日。
ドキドキするのではなく通知表を回し読みをしてからデキの悪い生徒を前に立たせ「こいつらみたいになるなよ」
そう教師はいう。
運動に費やす時間が多く、当時、塾に行けない子らは置いてきぼりだ。
公園に行っても誰もいない。
みんな勉学に勤しんでいる。
それなのに――悠真はぽつんと一人ブランコを漕ぐ。
人生ゲームすら悠真は大人になっても名前ぐらいしか知らなかった。
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