せっちも 徒然雑記

50代半ばの全然不惑じゃない道楽親父が、思い付いたことをただ徒然記するブログです。

還暦からのローファー考 part2… “転石苔むさず”…COAL•HAAN vintage loafers

 20代中頃、大阪へ出張の際に新幹線の時間前に立ち寄った東京駅大丸百貨店の紳士靴売り場で、一際存在感のある靴に目が留まりました。

 おそらく私の人生でも一番多くの時間を共にした、コールハーンのペニーローファーとの出会いの瞬間でした。

 大人びた雰囲気の中にもアメリカ製靴特有の質実剛健な作りに、すっかりぞっこんになってしまった私は、それ以降コールハーンのローファーを買い増していくことになるのです。

 今回は現在まで大切に保管し所有してきたコールハーンのローファー5足を紹介します。

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 最初に紹介するのは、80年代後期から90年代初頭にかけてリリースされた、アメリカン ペニーローファーの典型のようなモデルです。

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 このメイドインUSAのモデルには、ヒール部にキッカーバックといった意匠が施され、より一層アメリカントラディショナルな雰囲気が醸し出されています。

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 コールハーンのローファー全般にいえることですが、ハンドソーンでのモカ縫いによって生じた革の合わせ部の皺にも、職工の匠の技を感じてしまいます。

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 バーガンディといった色味から、なかなか出番がなく、似合う歳に達したら履こうと靴箱に眠らせてきましたが、いよいよ還暦を迎え、これからはどんどん履いておじさんの足元を飾ってくれるものと期待しています。

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 こちらの黒色ガラスレザーのフルサドル ペニーローファーも、同時期にアメリカで生産されたものです。

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 冒頭で紹介の最初に出会ったコールハーンのペニーローファーがまさしくこれで、オンオフ問わず無造作に使用していたことから、ついには履き潰してしまい、写真のものはオークションサイトで、ほぼ未使用の同じモデルを見つけて入手するに至りました。

 撮影時のホコリに気が付かず、お見苦しい写真ですいません。(_ _;)

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 フルサドルの意匠とガラスレザーによる光沢から、あたかもオペラパンプスのような大人の色気を醸し出しているところと、アメリカ製ローファーの堅牢な佇まいが、同居しているところがたまらなく好きなんです。

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 このモデルは古着市場でも人気があり、特に需要のある黒色は希少価値があります。

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 この時期に生産されたコールハーンのペニーローファーは、サドルに施されたアイと呼ばれる横方向の切れ込み周辺に、四方にわたって縫製が入っており、全体的にキュッと締まった印象を受けるところもお気に入りポイントなんです。

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 90年代にリリースのブラジルで生産されたフルグレイン、オイルドレザーのモデルです。

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 80年代後半にナイキの傘下に入って以降、少しずつ人件費の安い他国での生産が推進されていたのですが、「良い商品をより安く」を実現するために自社工場を持たないといったナイキの企業理念が、経費削減のためだけでなく、生産国の靴の特徴などを反映させ、それでいてコールハーンらしさを損なわない、コールハーンの企業理念であるモダンアーチザン(革新的スタイルを熟知した職人技の結晶)が、この時期のコールハーンの製品には良く表れているものと思います。

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 ブラジルで生産されたこのペニーローファーは、アメリカ製にはみられない、低いヒールに浅い履き口、ローファーというよりは、モカシンと呼んだ方がしっくりくるイメージの靴で、夏のリゾート地でリラックスした雰囲気の中、素足で履きたくなるような靴に仕上がっています。

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 このあとに紹介しますが、イタリア製のローファーとアメリカ製の中間の位置付けといったらイメージが湧くでしょうか。

 踵のキッカーバックやハーフサドルの端が丁寧に処理が施されていることで、コールハーンらしい品性も醸し出されており、特にお気に入りの一足で、おそらく一番出番が多く履いているローファーだと思います。

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 この時期にブラジルで生産されたコールハーンの靴も、そのいずれもが、一部の古着マニアの中では、いまだに人気アイテムとなっているんです。

 ちょっと意匠を変えまして、90年代に入手したホースビットローファーです。

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 ホースビットローファーといったら本家グッチが有名ですが、ハイブランドですから、とにかく高価ですし、私たち世代では当時のファッション雑誌で多く紹介されていたことから、コールハーンの方に愛着を感じる方も多いと思います。

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 90年代にイタリアで生産されたものですが、この時期のコールハーンはモデルよってその多くをイタリアのシューズファクトリーに委託生産したりしています。

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 ソールがイタリアの靴特有の、一枚革のマッケイ製法であることから、歩行蹴り出し時のソールの返りが良く、アッパーのカーフレザーと相まって、より柔らかい履き心地を実現しており、購入して以降、靴擦れなどしたことがありません。

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 本当にコールハーンなの?と思わされますが、インナーソールにスニーカーの要素を取り入れたアーチがみられ、軽く、柔らかく、疲れない履き心地を追求し、さらなる進歩を目指す姿勢こそが、まさしくコールハーンらしさなんだと思います。

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 最後も同じく90年代にイタリアで生産されたスエードのペニーローファーです。

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 スエードのローファーには兎角野暮ったいイメージを持っていたのですが、こちらのイタリアで生産されたモデルもビットローファーと同様に、ソールがグットイヤーウエルト製法ではなく、マッケイ製法が採用されており、シンプル且つスマートにまとめられ、大人の品格と風格を漂わせる逸品です。

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 本当は秋冬に履くことを想定して購入したのですが、非常に軽い履き心地とその雰囲気から、春夏に素足で履いた方が、よりこの靴の良さを引き出せるかなと感じていて、その結果なかなか出番がなく、ずっと靴箱の中で眠っていました。

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 でも還暦を迎え、南仏プロバンスの街角にいそうな、小洒落たおじさんをイメージして履いてみたいと思い(笑、靴修理店でソールの補強とメンテナンスを施しました。

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 履き心地は同じイタリア製のビットローファーよりさらに軽く、ローファーというよりスリッポン、エスパドリューに近い履き心地に感じられます。

 以上、80年代後半から90年代にかけて、生産国は違うものの、いずれもコールハーンらしい職工のこだわりが、ヒシヒシと伝わってくる5足を紹介いたしました。

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 ここ数年は、ビジネスシーンでローファーを履くことがはばかれる職種への転職を機に、内羽根オックスフォードの短靴ばかりを購入してきましたので、ぜひ、さらにスニーカーライクな履き心地といわれる、現行モデルのコールハーン製ローファーも履いてみたいと考えています。

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 いかがでしょうか?、私がコールハーンに魅せられる理由…

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 創業以来、常にモダンアーチザンの理念を追求して、伝統を維持しながらも変化を続ける靴…

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 還暦を迎えた歳だからこそ、良いものは踏襲しつつも、新しいものへの冒険心を忘れずに、さらに成長していきたい…

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 最近、70歳を悠に超えてもなお、精力的に新しいアルバムをリリースし、ワールドツアーさえも発表した、ローリング ストーンズのバンド名に由来する、ボブ・ディランの名曲「ライク ア ローリングストーン」…

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 「転石苔むさず」というイギリスの古い諺を捩った歌詞の解釈にあるように、いつまでも、気持ちの上では老いることなく、好奇心を持って挑戦していく姿勢は保っていきたいと思います。

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 ローリングストーンズ、もう次は無いだろうなぁ、もう一度あの興奮を…、ぜひ来日公演してくれないかなぁ😚

 

=PS=

 人目を避けての撮影のため、早朝に海浜公園で靴を並べているところを、散歩で通りかかった老夫婦から、声をかけられてしまいました。

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 「靴の撮影ですか?」

 「30年も前の靴なんですか?」

 「どれもピカピカですね!」

 気恥ずかしい私を察し、しばらくの間、少し離れたところから、ふたり寄り添うように、アタフタと撮影する私の様子をご覧になっていました。

 奥さまを気遣いながらのご主人の姿に、昨年亡くなった父親を重ね、

 私はどんなおじいさんになるんだろう…

 不惑?…

 きっと、この先も惑わされながら生きていくんだろうなぁ…

 それはそれで良いのかなぁ…

 ふと そんなことを考えながら、ドタバタと場所を変えたり、靴を並び替えたり、撮った写真をスマホで確認したり…、なんとも慌ただしい撮影でした。