鉄道改善案

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北陸新幹線は米原ルートで早急に建設せよ ーリニア未開業でも新大阪へ直通できるー

2024年05月12日 | 甲信北陸

絶望的な「敦賀分断」

北陸新幹線の敦賀延伸が成されたが、東京から福井まで直通できるようになった反面、関西・東海方面からは、今まで直通で北陸に行けていたものが、敦賀駅乗換えが必須化し、さらにその敦賀駅の構造のせいで乗り換えが非常に時間がかかるため、大きな問題になっている。さらに運賃も高くなった割に所要時間短縮は僅かであり、総じて改悪でしかない。関西圏、東海圏から北陸の鉄道アクセスが分断されたことは数字にも表れており、関西や東海地域からの鉄道利用は明らかに減っている。この「敦賀分断」は日本の新幹線史上最悪の愚策であり、北陸と関西・東海を分断し、東京一極集中ばかりを加速させる。これでは日本国土の均衡した発展は見込めない。いずれにしてもこの「敦賀分断」は早急に解消しなければならない。

小浜ルートは愚の骨頂、早急かつ永久に破棄すべき

北陸新幹線の敦賀以西の現行案である「小浜ルート(小浜~京都駅~松井山手経由)」は着工の目処が全く立っていない。関西有数の原生林が残る美山地区を貫き、琵琶湖の水量に匹敵する地下水を有する京都盆地を地下で縦貫する計画であり、京都美山の原生林破壊と残土問題、京都盆地の地下水枯渇問題(地下水を利用した伏見の酒蔵などの破滅的被害)が懸念されており、当然地元から強い反対がある。地元のみならず、これは国家的問題であり、千年の都・京都の自然・文化を破壊すれば、国家の大損害、亡国に直結する大問題である。

そもそも、普通の交通地理的感性を持っていれば、小浜経由などという馬鹿げたルートは論外であることは火を見るより明らかである。交通地理学的には、米原ルートか湖西ルートしかあり得ないのであり、非常に遠回りをして小浜を経由するという前提自体が諸悪の根源なのである。(当然、当初俎上に上がっていた舞鶴ルートや山陰新幹線直通など論外中の論外である。)

(※こんな「小浜ルート」を平然と決定した日本の政治機構は問題しかない。日本の新幹線計画はもっと交通地理に精通した人が行わないとダメである。)

要するに現行の「小浜ルート(小浜~京都駅~松井山手経由)」は交通地理的に馬鹿げたルートであるのみならず、美山の残土問題、京都盆地の地下水問題など、環境面からも問題が多すぎ、京都の自然・文化を不可逆的に破壊することは明らかである。

「小浜ルート」そのものが早期開業のネックとなっているのであり、こんな馬鹿げたルートは今すぐ完全に破却し永久に葬り去るべきであろう。

米原ルートは費用対効果が最も高い

交通地理学的に、北陸新幹線のルートは湖西ルートか米原ルートしかあり得ない。特に早期開業をするには米原ルートしかない。ルート選定の際のB/C比較の際も、米原ルートが最も高いと出ていたのである。新規建設距離も敦賀~米原のみで最も短いうえ、名古屋方面との直通にも活用できるという大きなメリットがある。新大阪に直通する場合、米原駅の拡張、新大阪留置線の増設、北陸新幹線のシステム対応のN700Sの新造などが必要(後述)だが、これらを合わせても、新規建設ルートが短いため工費は最も安い。すなわち、敦賀分断」を早期に解消するには、今すぐ「米原ルート」を建設するのが最も得策である。(※既に多くの方々から、「小浜ルートは到底無理、最も効果的な米原ルートで早期開業を!」という提言が出始めている。)

米原ルートは東海地方さらには横浜(神奈川)にまでも恩恵がある

米原ルートは、関西~北陸のみならず、東海~北陸、さらには横浜~北陸の需要も取り込める。

・新横浜~(東海道新幹線)~名古屋(乗換え)~(米原ルート)~金沢は約3時間

・新横浜~(東海道新幹線)~東京(乗換え)~(北陸新幹線)~金沢は、かがやきで約3時間、はくたかで約3時間半

横浜からも、総じて米原経由の方が速いのである。 しかも名古屋駅は対面ホーム乗換のため手間がかからない。米原ルートは、東海道新幹線の新横浜~米原間の全区間の恩恵があるのである。これは、小浜ルートなどとは比較にならないほど大きな価値である。

新大阪への直通は僅かな改良のみで可能 

米原ルートを議論する際に注意しなければならないのは、「東海道新幹線の線路容量が逼迫してるのでリニア中央新幹線開業まで北陸新幹線は米原~新大阪に直通できない」という誤った前提である。この誤解をしている者が多く、非常にもどかしい。 精緻に考えれば、リニアが開業しなくても、最繁忙期でも毎時3本までなら直通できる(詳細はリンク先を参照)。「リニア開業しなくても、北陸新幹線は東海道新幹線米原~新大阪に乗り入れられる」、この認識が広まれば、米原ルートの実現性がかなり高まるだろう。

米原ルートかつ新大阪直通の際にネックとなると指摘される以下は、どれもクリア可能である。(にもかかわらず、いずれかを持ち出して「米原ルート+新大阪直通は無理」というのは非論理的、かつ臨機応変な最善策を放棄する姿勢である。)

・信号システム・車両の違い ⇒北陸新幹線の信号システムにに対応可能なN700Sを製造する
・運賃収受配分問題(JR西日本とJR東海) ⇒会社間で精算(北陸新幹線分をJR西日本に按分)すれば良いだけ
・線路容量(新大阪直通) ⇒上記のように、毎時3本までなら直通可能
・「小浜ルートで決まってるから変更は無理」 ⇒そもそも理由になっていない(後述)

すなわち、以下を行えば北陸新幹線は米原~新大阪に直通可能である。

①新大阪の留置線2本増設(北方貨物線直上に建設)
②米原駅の拡張と車両基地の新設(ダイヤ乱れの際には米原打ち切りで対応するため)
③北陸新幹線の信号システム、耐寒耐雪構造などに対応したN700S(最高時速300km可)の製造

ダイヤ容量の面からは、東京口では、最繁忙期の東京~三島は最大17本/時であり、加えて東京口の回送枠が3本、合わせて毎時20本/時枠がある。これが東海道新幹線の最大容量である。米原~新大阪は繁忙期最大15本/時であり、鳥飼回送枠を2本/時とすれば、毎時3本空きがある。すなわち、北陸新幹線は毎時3本直通可能である。そのためには新大阪駅の西側に折り返し用の留置線2本の新造が必要であり、北方貨物線の直上に設ければ良いだろう。(※新大阪~鳥飼車両基地間がパンクするという見方があるが、この区間だけ時速200km以下の低速で走れば問題ないであろう。)

米原駅は2面6線化し、外側2線を北陸新幹線用ホームとする。米原に北陸新幹線用車両基地を新造する。ダイヤ乱れの際は北陸新幹線は米原打ち止めで影響を最小限にすればよい。

東海道新幹線に乗り入れる車両は、耐寒耐雪構造、信号システムなどを北陸新幹線仕様に対応させたN700Sで良い。 運行系統としてはサンダーバードの代わりになるため、新大阪~富山間のみの列車(東京には直通不要)であるから、新大阪起点で富山までならば、50Hz区間を通ることはない。周波数変換装置は必要なく、富山までなので急勾配への対応も必要ない。N700SはJR西日本としても整備経験があるうえ、何ならそのまま山陽新幹線への直通さえもできてしまう。

なお、米原駅付近にデルタ線つくって、名古屋からもスイッチバックせずに北陸方面に直通できるようにしても良い。 東海道新幹線のスジの空き間に北陸新幹線直通列車を入れられるのは、名古屋発着でも同様である。

このように、技術的には、僅かな改良のみで、新大阪への直通は可能である。


※太字は定期列車、細字は多客日運転列車の枠
※灰字は通過時刻
※新大阪~富山、東京~福井と運行系統を完全に分けるべきである。新大阪からの列車は富山まで、東京からの列車は福井まで(福井駅南側に折返線を整備)とし、新大阪~富山の列車はN700Sに統一すべきであろう。

ダイヤ案

米原駅の配線図案、航空写真、折り返し進入経路案を以下に示す。

 

JRの意向などどうでも良い

米原ルートについて、反対派(小浜ルート固執派)の間では、「JR東海やJR西日本が受け入れるかどうか?」という声がある。米原~新大阪に北陸新幹線を直通させたくないJR東海、敦賀~新大阪の北陸新幹線の利益を自社分にしたいJR西日本(米原~新大阪直通を両社とも忌避している)、という経緯で「小浜ルート」になったこともあるために、そのような言説が出てくるのであろうが、そもそも、なぜ国家的公共事業においてJRに忖度する必要があるのかさっぱりわからない。国家国土の基幹インフラである新幹線の建設で、一企業に過ぎないJR東海や西日本の顔色を窺っている時点でどうなのか。そんなもの国家権力でどうにかすべきだろう。新幹線は国策なのだから国家権力で全てを決定すべきである。一企業のワガママ(やりたくない理由=言い訳)なんかに付き合う必要はない。JRは元国鉄なのだから国家の命に従うのは当然だ。JRの意向など全く無視して何ら問題ない。

「できない理由」は事業者への忖度

上記のように、技術的には米原ルート+新大阪直通は問題なくできるのに、「JRのお気持ち」だけで小浜ルートになってしまっているのが現状である。自社線なら民間事業者が利益最大化のためのダイヤを好きに決めて良いが、莫大な公共投資である整備新幹線のルート選定において絶大な決定権を一民間事業者に与えるのは、愚の骨頂以外の何物でもない。

米原ルート反対派の言う「出来ない理由」は、JR各社、府県の利害関係であることは明白である。これは非常に残念なことである。国家的プロジェクトとして便益の極大化、ユーザー利便性、実現へのスピード感が優先されるべきなのに、くだらないことで足の引っ張り合いをしていてどうするのか。本当に馬鹿げている。

つまるところ、「できない理由」は、単なるJRなどへの忖度であり、そんなもの足蹴にして一蹴すべき話である。

「決定したから変えられない」は誤り

もう一つ米原ルート反対派(小浜ルート固執派)が持ち出す言い訳は、「小浜ルートは政策決定されたものだから変更不可」というものであるが、これは2重の意味で間違っている。

まず、そもそも、「変えられない」という言は、政策というものの本質がわかっていない。政策とは、状況に応じて臨機応変に変えて行くものである。「小浜ルートは変更不可」というのは、例えれば、「減反政策が当たり前になっている状況の中で、戦後の食糧難時の計画を改めることもなく、干潟の干拓事業を強行する」のと同じである。
たとえ決定事項であっても、状況の変化に応じ、変更や中止の判断を大局的に行うのが、正しき公共事業のあり方であろう。

そして、そもそも、この小浜ルート自体、正式決定されたものではない。与党PTなどという、何ら法的根拠のない密室会議の決定に過ぎない。京都府議会など地方議会の承認すらないのである。すなわち、小浜ルートが「決定している」ということ自体が、誤った認識である。

「北陸・中京新幹線」として建設するのが妙案か

しかし、いくら米原ルートの合理性を強調しても、聞く耳を持たない小浜ルート固執派は、一度決まった「小浜ルート」に頑なに執着することも予想される。そこで、最善の落としどころは、「北陸新幹線」は小浜経由で永久に検討し続け、「北陸・中京新幹線」として敦賀~米原を先に建設してしまう、という方法である。(「北陸・中京新幹線」は敦賀~米原のルートで整備新幹線法にも明記されている、「北陸新幹線」とは別の新幹線である。)

これは北陸新幹線の小浜経由を形の上では生かしたまま(実質的には永久凍結となろうが)、別の「北陸・中京新幹線」として敦賀~米原を整備するため、「小浜ルート」に固執する人々に対しても説明が付く。これが、実に日本的な、最善の落としどころではないだろうか。 「北陸・中京新幹線」として敦賀~米原間を先に建設、 「北陸新幹線」の「小浜ルート」は「引き続き全力で取り組んでまいります!」とすればいい。「小浜ルート」を撤回するには色々面倒だと予想されるから、「北陸・中京新幹線」を先に作ればよいのだ。 整備新幹線法に明記されてるうえ、福井県も推進しており、何の問題もない。

どんな手を使ってもいい。一日も早く敦賀~米原を着工すべきである。