2つのお城と戦いの歴史『佐伯市歴史資料館』(佐伯市)

大分県

佐伯城の登城口に建つ歴史ミュージアム。栂牟礼城や佐伯城、さらには幕末の台場や防空壕まで、様々な佐伯の歴史を知ることができます。展示ボリュームはそれほど多くありませんが、わかりやすい解説で見ごたえは抜群です。

訪問日:2024/4/5(金) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

佐伯の歴史ミュージアム

大分県南部の佐伯市は、縄文時代の遺跡や中世の山城跡など、多数の史跡が残る歴史の深いまち。そんなヒストリーを体感できるのが、佐伯駅から2kmほどのところにある佐伯市歴史資料館

標高144メートルの八幡山山頂一体に築かれた総石垣の山城・佐伯城の登山口でもあります。本当は佐伯城の本丸まで山を登るつもりでしたが、豪雨に見舞われてしまったので登山は断念。せっかくここまで来たので、この歴史資料館をじっくり堪能していくことにしました。

展示室は大部屋がひとつだけなので、さっと見るだけならそれほど時間はかかりません。最初は「中世のさいき」からスタート、その後「近世のさいき」「近代のさいき」と続いていきます。

佐伯氏と栂牟礼城

平安時代から400年間この地を支配していた佐伯氏。鎌倉時代には守護の大友氏の影響が高まる中、地頭としてこの地を治めます。戦国時代には大友氏の重心として活躍しました。

大永年間(1521年~1528年)に佐伯惟治(これはる)が、標高224mの栂牟礼山頂に栂牟礼(とがむれ)城を築きます。地形を巧みに利用した郭や掘で構成された堅牢な城であったそう。

そんな栂牟礼城を舞台におこったのが「栂牟礼合戦」。大友に氏に謀反の疑いをかけらた、または勢力を強めていたのを恐れられたためか、大友氏の配下の臼杵長景によって攻められます。

館内ではプロジェクションマッピングにより栂牟礼城と栂牟礼合戦を見ることができます。

二万あまりの兵で一ヶ月ほど攻められるも城は落とされません。臼杵長景は、和睦の場を整えるのでひとまず城を空け渡し反抗の意思がないことを示すようにと指示され、佐伯惟治はこれに従います。

しかし、これは臼杵長景の策略。惟治は城を出たところを長景に通じていた土民に討たれ、無念の死を遂げます。惟治の祟りを恐れた人々は、各地に神社を建立したそう。

佐伯氏は惟治亡き後も大友氏に使えます。豊臣秀吉によって大友氏が改易となると藤堂高虎の家臣となり、三重県津市へ移り住み明治を迎えます。

江戸時代に完成した佐伯城

佐伯氏にかわり、江戸時代にこの地を治めたのは毛利氏の佐伯藩と、中川氏の岡藩。

初代佐伯藩主の毛利高政は、関ヶ原の戦いで西軍に加担したため佐伯に転封に。前述の栂牟礼山は険しい山の中にあるため政治には不向き、八幡山に新しく佐伯城を築き城下町を整備します。

4年かけて完成した佐伯城。館内にはそんな佐伯城のジオラマもあります。天守閣は築城後すぐに失われ、再建されることはなかったそう。資料によると三重天守であったとのことです。

そんな佐伯城も明治時代に廃城に。建築は撤去されました。

高政ゆかりの品々

佐伯藩初代藩主である毛利高政ゆかりの品も多数展示されています。

高政が着用したと伝わるのがこちらの「萌葱糸素懸威金伊予札胴丸(もえぎいとすがけおどし きんいよどうまる)」。朝鮮出兵の際には、これを着用して戦ったそう。

高政は砲術の達人であったとも伝わっています。「津田流」という流派で修行し、のちに自らの「伊勢守流」を創始。仙台藩2代藩主の伊達忠宗に極意を伝授したともいわれています。

2mはあるかという大鉄砲がずらり。それぞれに付けられている名前は「閻魔王」「四海波」「秋風」・・・。めっちゃかっこよくないですか?

幕末に築かれた台場

幕末、西南戦争の舞台となった佐伯城。各地には今でも台場跡が残っています。

こちらの地図はそんな台場の位置を示したもの。赤が政府軍、青が西郷軍とかなりの数が築かれたことが一目瞭然。政府軍の台場は西洋から影響を受けた多角形のものもあったそう。

こちらの銃と銃剣は、西南戦争の遺品。政府軍は連射性の高い後装式を使用。この銃は前装式であるため、西郷軍のものと考えられています。

屋外に残る建造物

屋外にも多数の展示物があります。国道に面している部分に建つのは三府御門。1802年にこの地に設置された藩役所「三府役所」の門であったそう。

この家屋は毛利家御居間。明治時代に入ると毛利家の屋敷が建てられます。こちらは1890年に建てられた建築であるそう。なお、この建物は昭和初期からは料亭としても活用されていきます。

こちらは防空壕跡。1934年に佐伯海軍航空隊が開隊されます。この地にあった料亭は海軍士官の社交場となり、この防空壕はそんな士官のために築かれたと考えられています。入口はコンクリート、地上部分は盛土で目立たないようになっております。

さらっと見るだけなら20分ほどでも大丈夫なボリュームですが、読み物が面白く、1時間くらいたっぷり滞在してしまいました。佐伯城の登山前に立ち寄るのも良さそうです。

アクセスと営業情報

JR佐伯駅からバスで約6分、「大手前」下車徒歩2分。

開館時間 9:00~17:00
休館日 月曜、年末年始
料金 300円
公式サイト https://www.city.saiki.oita.jp/rekishi/default.html

※掲載の情報は2024年4月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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