伊勢神宮の吉川竜実さんに学ぶ「神道」縄文意識覚醒アート―㉑甲州三嶌超―(一)

「神道ことはじめ」コラム

「縄文意識」とは、己が生業なりわいに全力で勤しみ、無我や没自然の境地となって真の自己を解き放ち、あるがままの姿で自由に生き切っていく意識のこと。=0意識(私=0=∞)=ゼロ・ポイント・フィールド。

吉川さん:『富嶽三十六景』の中で、その「三役(神奈川沖浪裏・凱風快晴・山下白雨)」と並び称されるほど北斎の気宇広大さを表す絵として国内外からの衆目を集めるのが『甲州三嶌越』です。

三嶌越とは鎌倉武士団も「いざ鎌倉」の時に使用した甲斐国(山梨県)から駿河国(静岡県)の三嶌へと抜ける山道の険しい峠のことを指します。

『甲州三嶌越』は国境にある難所の籠坂峠付近から一本の巨木を通して勇壮なる裏富士を眺望した絵画といわれていて、この峠の眼下には甲州側に山中湖、駿州側には御殿場ごてんばが広がっているのです。

当該巨木の実存は不明ですが、現在『北斎漫画』や歌川広重画『諸国名所百景』に掲載されている甲州笹子峠の「矢立の杉」を充当し、配置したとする説が有力視されています(※)。

※久保さとる「甲州三嶌越(富嶽三十六景)の解説―葛飾北斎の解説―葛飾北斎の富士山の場所を特定する謎解き―」(Fujigoko.TV)参照

この絵が有する特異性は、北斎が何よりも次の二つの作画常識を覆している点にあります。
1.主題となる対象(霊峰・富士の雄姿)を遮る障害物(一本の巨木)を敢えて前面に配置していること
2.中央で絵を分割する(画面の上下を貫いて一本の巨木が立っている)こと

垂直/平行三分割法によるデザイン分析
出典:戸田吉彦著『北斎のデザイン』(翔泳社)より

これらの課題に果敢に挑戦し、以下のように描き出すことで、北斎は見事に一枚の絵として仕上げているのが看取されます。

まずは「垂直三ツ割法」を用いて観察すると、画面中央部において前面に巨木の幹を中心線より少しく右に寄せて立ち上げています。その左の空いた空間には、前面の巨木の幹を刀で右袈裟懸けに斬るように、後面の富士の美しくも流麗なる稜線を描いて大胆にクロスさせています。

巨木と富士とを画紙からはみ出さんばかりに全面対決させることで、両者の拮抗関係を生み出していることが窺われます(→対極=瞬間=爆発)。

次に「平行三ツ割法」から検分すると、画面下段部では旅人たちが手と手を取り合って巨木の大きさを誇示するかのように幹の太さを測りあう姿や、その傍らで急峻な峠の険しさを暫し忘れてホッとする旅人の憩う姿も確かめられます。

また画面中段部の中央では先に触れた巨木と富士との一騎打ちが展開されると共に、その左右の画面には遠景に望まれる富士を応援するかのように大地からムクムクと沸き立つ雲が描写されています。

そして画面上段部の中央では、近景に天をも貫くように巨木が立ちはだかると同時に、その左画面では巨木よりの大きな枝が大地へと向けて垂れ下がっています。その右画面では、遠景の泰然とした富士の頂きに竜のような浮雲がたなびく様子が見て取れます。

前掲の久保氏の画像考証では、中段部の左右画面の雲の形は巨木の付け根の左右で声援を送るかのように生い茂る草木と相似形の関係にあり、上段部右画面の浮雲の形と左画面で垂れ下がる枝葉とも同じフラクタルにあることが指摘されています。


(次号に続く)

出典:「富嶽三十六景《凱風快晴》」公益財団法人 東京富士美術館収蔵
財団法人 東京富士美術館収蔵
https://www.fujibi.or.jp/our-collection/profile-of-works.html?work_id=6153

バックナンバーはこちら▼

セミナーのご案内

吉川竜実さんの「気づきの連続セミナー」第3弾の受付開始 !

詳細は、同封の「わくわくイベント便り」またはURLのリンク先を
ご覧くださいませ。

▼詳しくはこちら▼
https://www.thd-web.jp/shopdetail/000000002488

吉川 よしかわ竜実たつみさんプロフィール
神宮参事・博士(文学)
皇學館大学大学院博士前期課程修了後、平成元(1989)年、伊勢神宮に奉職。
平成2(1990)年、即位礼および大嘗祭後の天皇(現上皇)陛下神宮御親謁の儀、平成5(1993)年第61回式年遷宮、平成25(2013)年第62回式年遷宮、平成31(2019)年、御退位につき天皇(現上皇)陛下神宮御親謁の儀、令和元(2019)年、即位礼及び大嘗祭後の天皇(今上)陛下神宮御親謁の儀に奉仕。平成11(1999)年第1回・平成28(2016)年第3回神宮大宮司学術奨励賞、平成29(2017)年、神道文化賞受賞。
通称“さくらばあちゃん”として活躍されていたが、現役神職として初めて実名で神道を書籍(『神道ことはじめ』)で伝える。

★吉川竜実さん著書『神道ことはじめ』の無料お試し読みプレゼント★

知っているようで知らないことが多い「神道」。『神道ことはじめ』は、そのイロハを、吉川竜実さんが、気さくで楽しく慈しみ深いお人柄そのままに、わかりやすく教えてくれます。読むだけで天とつながる軸が通るような、地に足をつけて生きる力と指針を与えてくれる慈愛に満ちた一冊。あらためて、神道が日本人の日常を形作っていることを実感させてくれるでしょう。

下記ページからメールアドレスをご登録いただくと、『神道ことはじめ』を第2章まで無料でお試し読みいただけます。また、吉川竜実さんや神道に関する様々な情報をお届けいたします。ぜひお気軽にご登録くださいませ♪

タイトルとURLをコピーしました