伊勢神宮の吉川竜実さんに学ぶ「神道」縄文意識覚醒アート―⑳凱風快晴―(四)

「神道ことはじめ」コラム

「縄文意識」とは、己が生業なりわいに全力で勤しみ、無我や没自然の境地となって真の自己を解き放ち、あるがままの姿で自由に生き切っていく意識のこと。=0意識(私=0=∞)=ゼロ・ポイント・フィールド。

吉川さん:富士五湖・TV代表でシステム開発・設計のスペシャリストである久保覚 くぼ さとる氏はライブカメラによる富士山の定点観測映像の詳細な分析とコンピューターグラフィックも駆使した緻密な考証とによって、北斎の『凱風快晴』の描画視点を次のごとく導き出しています。

季節は5月初旬の早朝(あるいは夕方)、前日までの晴天も今日から天気が崩れるのか鱗雲が空を覆ってきた。しかし空はまだ高く、(日の出間もなくなので)田子の浦から江尻に向かう船上からは富士川河口が作り出した平野の向こうに日に染まった富士山を見る。その時一陣の南風が北斎の頬をなで筆を運ばせた。
(ネット記事「凱風快晴(富嶽三十六景)の視点解説―葛飾北斎の富士山の場所を特定する謎解きー」(Fuj igoko・TV)参照)

十分納得できる見事な解答と考えられますが、この推論が正しければ『凱風快晴』の描画視点は、千葉県木更津付近の海上を視点とする『神奈川沖浪裏』と同じく太平洋上に浮かぶ船から北斎自身が瞬間的に仰ぎ見た絶景の富士が共に選ばれたということになります。

そうすると、『神奈川沖浪裏』で捉えられた波間に垣間見える藍色(山肌)と白色(山頂)で表現された富士の姿を、『凱風快晴』では拡大して、奇跡的な自然現象として赤く染め上げられた雄姿として悠然と存在感豊かに顕現させていると感じられるのは筆者だけに限られたことでしょうか。

北斎自身が『凱風快晴』と『神奈川沖波裏』という二つの浮世絵を一対のものとして製作した意図はまったくなかったと考えられます。しかしながら、江戸後期から現在に至るまで一般庶民たちが三役から『山下白雨』を除外した『凱風快晴』と『神奈川沖浪裏』とを一対のものとして取り扱ってきた歴史的経緯が認められます。

それは、火焔型土器と王冠型土器を二つで一つとした縄文以来の日本人が保有していた哲学思想のDNAが覚醒し、発露されてきた結果ではないかと憶測しています。

『富嶽三十六景』の三役に数えられる『凱風快晴』と『神奈川沖浪裏』は個別で鑑賞するのももちろん素晴らしいのですが、やはり二つで一つの一対として捉えて並列させて鑑賞した方がより縄文意識を感受できるでしょう。

さらに、霊峰・富士を中心に果てしなく広がる空と豊かな水に湛えられた海とが渾然一体となった宇宙観を、目にしたすべての人々が体感できるのではないかと思っています。

(次号に続く)
(波線と強調は編集部による)

出典:「富嶽三十六景《凱風快晴》」公益財団法人 東京富士美術館収蔵
https://www.fujibi.or.jp/ourcollection/profile-of-works.html?work_id=3769

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吉川 よしかわ竜実たつみさんプロフィール
神宮参事・博士(文学)
皇學館大学大学院博士前期課程修了後、平成元(1989)年、伊勢神宮に奉職。
平成2(1990)年、即位礼および大嘗祭後の天皇(現上皇)陛下神宮御親謁の儀、平成5(1993)年第61回式年遷宮、平成25(2013)年第62回式年遷宮、平成31(2019)年、御退位につき天皇(現上皇)陛下神宮御親謁の儀、令和元(2019)年、即位礼及び大嘗祭後の天皇(今上)陛下神宮御親謁の儀に奉仕。平成11(1999)年第1回・平成28(2016)年第3回神宮大宮司学術奨励賞、平成29(2017)年、神道文化賞受賞。
通称“さくらばあちゃん”として活躍されていたが、現役神職として初めて実名で神道を書籍(『神道ことはじめ』)で伝える。

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