ボイチェンが無料で出来るGRAILLONの紹介です。
ボイスチェンジャーとしても使えるピッチコントロールVSTプラグインになります。
このツールを用いて男声から女声にしたり、女声から男声にしてVTuberとして活動されている方が沢山いらっしゃいます。
特に、大きく声質を変えた場合にはGRAILLONだけで理想の声質に変化させることは難しくて
- マイクへ入力する声色の工夫
- マイクの入力からGRAILLONに音声がデータ届くまでの音調整
- GRAILLONを通して出力された音声の調整
まで、多岐にわたります。
ボイチェンをするために利用される主要なアプリやツールは数多くありますが、その中でもGRAILLONは、1つのツールだけでシンプルに設定していくことが可能で、直感的にツマミを動かすだけで声質を変化させて理想の形につめていくことが可能です。
また、GRAILLONでは、ピッチシフトとフォルマントの調整だけがフューチャーされていますが、遅延のない状態を維持しつつ、FXツールの「Gate」やローカット(Low Cut)なども調整することで、さらに声質調整をしていくことが可能になります。
本記事では、GRAILLONで使える機能をできる限り使い尽くすやり方に合わせて、ライブ配信プラットフォームでよく利用されるOBS Studioを用いて、無料で利用できるプラグインのみを用いて声質をより利用に近づけるために、GRAILLONの前後に差し込むフィルタの紹介までを書いていきます。
OBS StudioでGRAILLONを設定する場合
OBS Studioのシーンから音声入力キャプチャを追加する
音声入力キャプチャの設定でフィルタを選ぶ
フィルタから「+」を押してVSTプラグインを選ぶ
VSTプラグイン一覧の中から、GRAILLONを選択する
プラグインインターフェイスを開く
無料でボイチェンのツールとして利用できるGRAILLON

GRAILLONで男声から女声にしたり、女声から男声にするなど、大きく声質を変えるボイチェンをゴールにした場合、「音」に関する様々な知識が必要になります。
ただ、このGRAILLONにおいては、難しい理論はさておき、直感的に操作してくだけで声質をかなり変えることができます。
このツールの各機能全容などについてはGRAILLONの公式サイトにあるマニュアルを翻訳すれば確認できるので、ここではボイチェンとして設定する機能とその意味を簡単に解説し、参考値だけを記載していきます。
ピッチエンジン(PITCH ENGINE)を選択する
G2 | Graillon 2のアルゴリズムです。声質によっては以前のバージョンが馴染む場合のほうがありました。 |
G3 | Graillon 2のアルゴリズムと比べて高音域の変換結果に少し違いがありますが、声質によって相性があると感じます。 |
I1 | GRAILLONと同じ開発メーカーのプロダクトにInner Pitchというピッチシフターがあり、そのアルゴリズムを使用します。 ボイチェン用途で音を整えていくには使い方が難しいかもしれません。 |
ピッチシフト(PITCH SHIFT)を設定する
つまみを左に回すと音が低くなり、右に回すと高くなります。
筆者が、このプラグインで男声から女声に変えようとする時は、大体+5.5〜7.0くらいに設定するのですが、もっと「高い女性の声」や「イコライザーの調整ではっきりと聞こえるものの、そっと話すようにおとなしい感じに聞こえる声」などにする場合は+12まで一気に上げてしまってから徐々に下げていった方が調整しやすいかもしれません。
フォルマント(Formants)の調整
フォルマントの工学的な解説はかなりのボリュームになってしまいます。
ボイチェンの用途としては、左側にツマミを回すと太くて男性的な声に。
右側にツマミを回すと細くて女性的な声になっていきます。
先ほどのピッチシフトと、このフォルマントによって、ボイチェン後の声質が決まってくるくらい重要な部分になります。
正直、例えば、男声から女声にするときに、入力できる「声」の調整がある程度調整できるになると、あまりフォルマントは動かさなくなるか、使わないという選択肢もあったり、ピッチの上げ具合によっては、むしろ左に回して(フォルマントを下げる)、声の入れ具合を調整することで自然さを上げる工夫をしたりと、入力される声とボイチェンで実現したい声色によって、かなり使い方が変わってきます。
コレクション(CORRECTION)の設定
ボイチェン用途で使う時は、このコレクション(CORRECTION)機能はOFFにします。
コレクション(CORRECTION)機能エリアの左上にある電源マークを押すとOFFにできます。
アウトプット(OUTPUT)の調整
ボイチェン用途としては、この部分の設定は、どのような声質を選んだかによって、かなり変わってきます。
言葉としては、そのままOUTPUTなので、どれくらいGRAILLONの音変換結果を出力するかということなのですが、ツマミやスライダーを動かすと、音量だけではなく、出力された声の様々な成分にかなり影響します。
ここで、出力の音量が小さくなってしまっても、この後にOBS Studioで設定するイコライザーや、GAIN等を設定して、GRAILLONの設定後に出力された声の音量を調整することが可能なので、アウトプットされる音量はあまり気にしなくて大丈夫です。
というのは、スライダーを小さくすると、音がこもってはいきますが、揺らいだような声の成分も軽減されます。
ボイチェン時に生じるデジタル的な声の揺らぎを抑えて聞きやすい自然な音にして、このあとの別工程で音量を上げれば良いので、声色を決める重要な部分になるので音量よりは音色で選んで、細かく調整していきましょう。
Amount
Amountについては、例えば、男声から女声にしていく場合、50%から徐々に右に回して調整していくイメージです。
GAIN
ここでのGAINは、ボイチェンでどのような音を選んだかによって変えていく必要があります。
調整する時の目安
調整の目安としては、先に徐々にGAINのAmountのツマミを調整しながら、余計な音の揺らぎ成分がなくなってくる良いところを探してGAINのスライダーを調整するイメージです。
加えてGAINに関するスライダーについても、アウトプットされる音量というよりは、出力された声にダブり感やじりじり感がないかということを優先して設定値を決めます。
その分、後でイコライザーやアップワードコンプレッサー(小さい音を自然に大きくする)等で調整します。
ローカット(Low Cut)
ローカットは、ハイパスフィルター(HPF)と同義語です。
低周波という低い声の成分をカットします。
元の声が濁声(ダミ声)の場合に有効に働くので、まずは思い切って100Hz以上などに設定してみて、声の変化を確かめてみてください。
ウェットとドライについて
ボイチェンとして使用する場合には、ウェット(WET)を最大値に上げて、ドライ(DRY)はスライダーの1番下まで下げてください。
ウェット(WET)は変換した声の成分比率に影響します。
ドライ(DRY)は、元の声を出力でどれくらい出すかに影響します。
特に、男声から女声にする場合には、ドライ(DRY)成分は必要ないのでスライダーの1番下にします。
PTMの設定
PTMは、ボイチェン用途で使う場合には必要になることはほとんどないと考えます。
なので、電源ボタンマークがPTMの文字の横にあるので、OFFにしてしまいましょう。
FXの設定
どれも、変換した声色と声量を調整していくのに重要な設定部分なのですが、1番重要なのは「Gate」です。
この部分をうまく調整できると、収録環境で悩むことの多い「環境音」も合わせて消せるようになります。
GATEは、ツマミを右に回せば回すほど、小さい音の成分がカットされます。
ここの設定部分も、元の入力される声質によってはアウトプットの結果にかなり影響する部分になるので、しっかり突き詰めて調整しておくと便利です。
なにより、合わせて環境音もカットできるのが魅力的です。
GRAILLONでの調整が終わったら行う設定
今回は、ライブ配信でボイチェンすることを前提とした設定を書いています。
ライブ配信に使用する配信ソフトウェアはOBS Studioを利用する前提で書いていきます。
OBSの音声入力キャプチャから設定できるフィルタで最終調整する
現状、本記事で進めている場合、ここまでの設定もOBS Studioを利用して設定してくれていると想定します。
続いては、フィルタの「GRAILLON」の前後に差し込むフィルタを書いていきます。
OBS Studioの音声入力キャプチャからフィルタ設定を開いて、上から順番に紹介していきます。
通常設定していくようなフィルタ順番ではないので違和感があるかと思いますが、声のダブり感やジラジラしたような揺らぎは少なくなっていると考えます。
ただし、「歌枠」には向いていない設定なので注意してください。
「歌枠」を行う場合には、下記に書いてあるうちの「アップワードコンプレッサー」をはずして、さらにリバーブでエコー設定を行う必要があるので、さらに調整が難しくなります。
ノイズ抑制
これはRNNoiseを指定します。
GRAILLON
ここでGRAILLONを差し込みます。
ゲイン
GRAILLONの設定次第では、出力される音量がかなり少なくなっていると考えます。
この場合、ゲインでかなり上げてしまっても大丈夫です。
アップワードコンプレッサー
ゲインで音量を上げて、さらにアップワードコンプレッサーでも平均的な音量を上げつつ安定させていきます。
TDR NOVA
TDR NOVAはイコライザーなので、すでに使っているイコライザーがあればそちら全然大丈夫です。
LPF(ローパスフィルター)とHPF(ハイパスフィルター)で、音がこもって聴こえないギリギリまで周波数帯域を絞っていきましょう。
さらに、低音域、中音域、高音域を極端に上下してみて、自分の声の場合で生じている声のダブりやじりじり感が出来るだけなくなるように、最初は本当にかなり極端に調整します。
そして、しばらくボイチェン用の声を出しているうちに、慣れてくるとイコライザ側で極端に上下に振らなくても良くなってきます。
その時に都度、振り幅を縮めていくと、自然なボイチェン声に近づけるようになるので、このあたりは時間が必要です。
リミッター
最後に差し込むフィルタはリミッターです。
ボイチェンをした音で割れるとかなりつんざく音になるので、かならず「リミッター」を差し込んで、音が破れないようにしましょう。
ボイチェンを使用している場合、それほど声のボリュームが変わるような声量になったりはしないと思うので、設定値は-1.0dbくらいにしておけば大丈夫だと考えています。
設定が慣れてきたら、「コンプレッサー」も用いて、音量が安定するようにさらに設定を詰めていければベストです。
GRAILLONのボイチェンで配信を楽しむ
今回の設定は、「ゲーム実況」や「雑談枠」、「作業枠」などの、普通の話し声をボイチェンする時の設定です。
歌枠については、さらに「リバーブ」でエコーなどの調整をしたりするので、声ごとにあわせるのがさらに難しくなります。
試しにやる時は、リバーブ系プラグインを「リミッター」のまえに差し込んでください。
配信する内容によって、ボイチェンの設定を変えたりしなければならない面もありますが、大きく声変わりさせなくても、少し変えるだけで、自分の声とはバレない、より自然な声での配信や収録もできるようになるのが、GRAILLONのようなピッチシフターの使いどころです。
本記事がお役に立てば幸いです。
本記事の画像で載せている設定値は、あくまでも参考です。
入力される個々の声質と、ボイチェンで目指す「声色」によって設定値は大きく変わることを前提にしていただければ幸いです。