敷金返還請求問題 ブログ質問への回答 | 司法書士佐藤勇輝の業務日誌

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群馬県に事務所を構える司法書士佐藤勇輝の業務内容をざっくばらんに書いていきます。

主な業務は債務整理、交通事故、賃貸トラブル、相続、登記などです。

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面談できる範囲で遠方からの依頼も受け付けております。

司法書士の佐藤勇輝です。

ブログのコメントにあった質問に関して回答いたします。

なお、今後の他の質問があっても返答するかは保証いたしません。内容に関しても、法的に責任を負いかねますので、あくまで当職見解ということで自己責任でお願いします。また、東日本では敷引きという概念がなく、当職はあまり詳しくありません(仕組は知っていますが使ったことも使われたこともないです)。

 

 

質問内容

 

はじめまして。突然すいません。敷金返還を求めて少額訴訟の準備を進めています。

賃貸契約書には「契約に関する債務終了後敷金は返還するものとする。』とあり、特約事項には『故意、過失、注意義務違反による破損及び通常使用を超える使用による損耗の回復は修繕義務を負う。自然損耗のを除くものとする。

と書いてあるものの、借家は退去後取り壊されており、不動産仲介業者からは『修繕や工事は実施していない。』と証言がありました。

大家からは『敷金を2万円オーバーしたけど割引しといたから。』と電話があり、225000円の領収書が送付されてきました。

私が仲介業者を介して敷金返還請求の裁判を起こす旨を伝えると、はじめは全額返金すると言っておきながら、主張を一転。
『仲介業者の顧問弁護士と相談した結果、過去の判例も加味し、返金には応じない。』とのことでした。

ご助言いただきたいのは以下の点です。

①相手を納得させるというか、相手に勝つための理屈は何でしょうか?東京ルール?改正民法?

②工事していないのに2万円割り引いて云々、というのは詐欺にならないのか。詐欺としても訴えることは視野に入れられるのか。

③大家は公務員なのですが、②の行為が地方公務員法の信用失墜行為にあたるかどうか。

不慣れな訴訟ですのでどの程度理論武装していけばいいのか疑問です。ご助言いただければ幸いです。突然失礼しました。

 

1契約の開始日、2010年5.8ごろ。木造二階の戸建て借家
明け渡し日2019.8月末ころ

退去理由(建替えのための退去かどうか)は私が家を建てたためです。借家の建て替えのための退去ではありません。
立退料無し

2 請求内容の内訳 クロスがいくらとか、クッションフロアがどうとか 請求には内訳はありません。一枚小さな領収書がきただけです。

3壊したり傷つけてしまった箇所の有無、ある場合その箇所。

 

玄関の引き戸錠の破損交換。経年劣化だと思います。だんだん鍵の噛み合わせが悪くなりました。
押入れの中の棚板に割れがあり、直してもらったことがあります。

退去後、ハウスクリーニングは実施していません。これは不動産仲介業者が言いました。

4室内喫煙の 無し

5ペット飼育の 無し

6領収書の但し書きの名目 破棄していて不明 2万円値引き、と書いてありました。

以上

 

当職回答

 

少額訴訟を検討されておりますが、良いのではないかと思います。貴殿ブログも拝見しましたが、もう、訴訟予告も済んで、まだ支払いされていないようですから訴えを提起してはどうかと思います。私は1回交渉して無理なら訴状出します。

 

攻め方は2つあります。

⒈取壊して、原状回復費用を要しなかったので、返還せよ。

⒉ 通常使用であるので原状回復費用は発生しない。仮にあったとしても9年以上入居し、壁、床等の減価償却をすると価値は0

 

⒈の取壊したから金額は発生しないというのは心情的によくわかるし、貸主も、今まで稼いできたのだから返してやれよと思います。

しかし、攻めやすい方で攻めればいいのです。

一般的な事案であるし法的構成がしやすいのは⒉の方かもしれません。

⒉を主位的な原因にしてそこに「実際は修理をしておらず、取り壊しているから原状回復自体不要であった」などと⒈の要素も加えればいかがでしょうか?

写真等で室内がひどく汚れている画像等がなければ、貴殿に有利に働くでしょう。

実際に工事していませんから、仮に見積書があったとしてもその工事の必要性があったかどうか少し認定しづらくなります。

工事の必要性があっても減価償却で0と主張できます。

 

あまり慎重に考えなくても、原状回復費用の立証は相手方がする必要があります。取り壊し予定の場合、見積等を取っているかといえば取っていないことが多いと思います。

裁判を出した時点で、和解に応じるかもしれません。

 

相手の主張する「取り壊す建物でも原状回復義務がある」というのも全く通らないわけではありません。

私が貸主なら「今回の入居で、室内がポロボロになり、修復できなかったので解体することにした」とでもいうかもしれません。

 

貴殿の質問の

>>①相手を納得させるというか、相手に勝つための理屈は何でしょうか?東京ルール?改正民法?

は国交省の敷金ガイドライン及び民法、契約書だと思います。

 

>>②工事していないのに2万円割り引いて云々、というのは詐欺にならないのか。詐欺としても訴えることは視野に入れられるのか。

警察にも相談してみたらよいと思いますが、あまり積極的には全く動いてくれません。

やるなら民事で不法行為として、敷金+1万円を計上するとかでしょうか。それも簡単ではありません。

 

>>③大家は公務員なのですが、②の行為が地方公務員法の信用失墜行為にあたるかどうか。

証拠が少なく、今のままでは難しいと思います。

今後証拠の捏造等があれば、検討すればよいと思いますが、刑法に触れるとかでないとなかなか難しいかと思います。

 

余談ですが

今回の紛争の相手方 はサブリースでなければ あくまで貸主です。

被告も貸主になります。

管理会社は、あくまで物件の管理で、敷金紛争に関与すると弁護士法に触れます(刑事罰あり)。

 


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