今回は東京・荒川区の三河島にある
角打ち「家谷酒店」の激渋酒場レポート。
新大久保以外にもある
常磐線沿線民以外には「三河島」といっても、ピンと来る人は少ない(と思う)。
山手線からだと日暮里から常磐線に乗り換えて一駅。
歩いても15分ほどの駅だ。
もう一駅乗ると交通の要衝、南千住駅があるけど見落とされがちな駅だ。
駅舎にも長いホームの端に1か所だけ改札口があるだけの地味な風情だ。
ちなみに読みは「みかわじま」ではなくて「みかわしま」らしい。
コリアンタウンといえば、「新大久保」が今や女子人気となっているけど
ここも古くからのコリアン街。
しかしK-Popやチーズハットグとかいったキラキラしたお店はほぼ見当たらない。
オーセンティックな焼肉屋、韓国料理店が幅を利かせていて、中高年には安心できる風情の街だ。
そして今回訪問するのが、駅から徒歩10分ほどの住宅密集地に出現する角打ちができる「家谷酒店」。
真向かいには銭湯ファンには有名な、これまた激渋湯「帝国湯」が待ち構えている。
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角打ち「家谷酒店」
以前銭湯巡業にハマっていた時、帝国湯に行ったら、その真向かいに酒屋があるのは気付いていた。
半分シャッターが閉まっていて、店内をチラ見したら中は暗いし、なんだか荒れ放題な雰囲気。
その時は「湯上り向けな感じじゃないな」ということでパスしていた物件だ。
この日は夜から大井町で飲み会があるから、そのついでに(でもないけど)寄ってみることにした。
店内には客も店の人もいない。
奥からはTVの音が聞こえてくる。居住スペースらしい。
声をかけると、ゆっくりと大将が登場してきた。
髪も髭も伸び放題で、むさ苦しい感が充満している。
「中で飲めますか?」
と聞くと、
「どうぞどうぞ。冷蔵から好きなのどうぞ」
と。
店内は灰皿だらけ。吸い放題らしい。
タバコも売ってます。
ワン・ウェイ・トーク・ショウ
入り口横の冷蔵庫にビール、缶チューハイ、花壇には日本酒も見える。
とりあえずの黒ラベル255円。王道の現金都度払い。
サントリー系は置いていない。
タカラ辛口焼酎ハイボールもある。なんだかうれしい。
他には客がいないので、お店の歴史とかを大将に聞いてみる。
「このお店は何年くらい営業してるんですか?」
「え?私は85歳」
「や、お店は何年ですか?」
「5人兄弟の4番目」
「。。。」
「耳が遠くなってねぇ」
とのこと。
ここからお父さんのワン・ウェイ・トークが始まる。
アド街登場
耳は遠いけど、活舌はしっかりしている。
数年前には『アド街』にも出たらしい。
その時は「幻のウィスキーに出会える酒屋」として紹介され、全国から買い出しのお客さんが来店。
山崎や竹鶴とか、昔仕入れたままで放っていたのがあっという間に売れていく。
一人で59本買い付けた輩もいたそうだ。
昔は銀座あたりまで配達もしていたのが、今は店内売りだけの営業とのこと。
それでも『アド街』のおかげで一日数十万円の売り上げがあったらしい。
数少ないテーブル席にはウィスキーが数本。
「お客さん、このスピリッツって知ってますか?」
「いや、このニッカですか?」
「これは原酒不足の時、ウィスキーと焼酎と合わせて出したもの。
今は見当たらないでしょう。まがい物ですけど。
昔はオールドの干支ボトルとかたくさんあったんですけど、
『アド街』で全部売れました。」
大将の話は止まらない
こっちの質問は一切聞き取れていないけど、大将のトークにもドライブがかかってきたので、缶チューハイ(170円)とさきいか(110円)追加。
今度は大将が雑誌を出してきた。
酒場雑誌に幾多も取り上げられていて、それを見せてくれる。
吉田類も来たことがあるとのこと。
20年前と店内の様子はあんまり変わっていないようだが、確かに棚上に干支ボトルがある。
このあと、家族の話になる。
長兄は太平洋戦争で戦死、姉は東映ニューフェイス3期生で里見浩太朗と同期。
写真を見せてもらったが、確かに美人。
一番下の弟は「森さんの秘書」をやってたのこと。
どこの森さんかよくわからなかったけど、どうやら「森喜朗元首相」らしい。
しかし数年前に病気で他界。
息子は数人いるけど、誰も継がないとのこと。
とにかく話好きで、話は淀みなく沸きでてくる。
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大将のゆるエクセル画
しかし、そろそろ大井町に移らねば。
結局1時間ほど滞在で、2本と乾き物で〆て585円。
大将はこのリストを見て、会計も都度払い。
ここも、跡取りはいないので大将の代でおしまいの限界物件だった。
大将の話が最高のアテだった。
また行きたい。
最後に大将をうろ覚えのエクセル画で。
酩酊。