2001年7月。一郎と昭子は、小樽港発23時30分、敦賀港行きのフェリーのデッキに居た。
小樽の夜景が、どんどん小さくなっていく。
思えば、18歳の年、将来北海道で酪農をやろうと思い、上野駅から特急「はつかり」、真夜中の0時から青函連絡船「摩周丸」、5時函館発特急「おおぞら」に乗り次いで、初めて北海道に渡った。
あれから途中中抜けはあるものの、通算30年の間、いい人や環境に恵まれ、当初の夢はかなわなかったものの、楽しい人生を送ることができた。
昭子とは同郷での見合い結婚だった。
赴任先の稚内に嫁いできた。
結婚してから25年間に9回も引っ越しをした。その他、単身赴任1回。昭子は、慣れない土地で出産、子育てなど、苦労したと思う。
今は、子供達も独立し、夫婦2人だ。
夜景が見えなくなり、船室に戻っても次々と思い出がよぎってくる。
しかし、これからは、これまでの人々の恩は大切にしなければならないが、甘えてはならない。気持ちをリセットし、ゼロからの出発であることを覚悟する。
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