片岡仁左衛門 片岡孝太郎 能登半島地震チャリティーイベント@ホテルニューオータニ東京 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

孝太郎 舞踊(素踊り)「松の緑」

仁左衛門 「聞く勧進帳」(武蔵坊弁慶、富樫左衛門、源義経、四天王、番卒を1人で勤める)

 

 仁左さまと孝太郎さんによるチャリティーイベントに行ってまいりました。能登半島地震による被災に胸を痛めた仁左さまが、何かできることはないかとこの企画を思いつき、孝太郎さんに声をかけて実現したのだそうです。

 

 参加費(観劇料金、寄付金)は、会場費・設営費など最低費用を除いた全額を、義援金として石川県庁へ納付されるそうです。ホテルニューオータニ東京さんがご好意で会場使用料を半額ほどにしてくださったそうです。また設営は、長唄連中さんと囃子連中さんが座る緋毛氈が掛けられた山台、屏風、照明など、最低限のものでした。

 長唄連中さん、お囃子連中さん、司会の中井美穂さん、収録スタッフなどは皆さんボランティア(無償)で協力してくださったのだと。イベントの最後に仁左さま自ら、収支報告を1円単位まできっちりしてくださり、誠意と良心と善意が感じられる素晴らしいイベントでした🎊

 

 演目のうち、孝太郎さんが踊る「松の緑」は復興への祈願を感じさせるものであり、仁左さまが演じる「聞く勧進帳」は安宅の関=石川県が舞台ということで、いずれも地震チャリティーという趣旨にぴったりです。孝太郎さんの踊りの感想は上手く書けないので失礼しまして🙇‍♀️ 仁左さまの「聞く勧進帳」でございます。

 

 もう、もう、大感動❗️ まさに国宝級の舞台でした~😭 いくつか場面を抜粋して演じるのかと思っていたら、そうではない。最初から最後まで全部通して1時間10分ほどを、台本は持たず、立ったまま、所作など動きは一切つけず、声の高低、強弱、緩急、抑揚などを変えて、弁慶、富樫、義経、四天王、番卒を演じ分けるのです。

 長着に袴姿、右手に扇子を持って舞台中央に立つ仁左さま、スポットライトを浴びるスッとした立ち姿が美しく💖 そのあたりだけ別次元の空間に見えたりしましたよ。長唄だけになると(通常はそこで所作が入る)一旦屏風の奥に入るので、おそらく、喉を潤し呼吸を整えられていたのでしょう。

 

 仁左さまは上演前のご挨拶で「勧進帳は長唄がとてもいい、セリフもいいんです。舞台をご覧の時は役者の動きに気を取られがちでしょうが、今回はセリフをじっくり聞いてください」とおっしゃっていました。そして、第一声の冨樫のセリフ「斯様に候う者は……」が始まった瞬間に、一気に「勧進帳」の世界に引き込まれました。富樫の、少し高めにした声色、理性と知性を感じさせるセリフ回し、鳥肌ものでした。それに対して弁慶は、低く太く、でも決して大声だったり力が入っていたりせず、冷静さと思慮深さがこもっていた。そして義経になると、まろやかさのある声の中に品性と格が滲み出ている。四天王番卒も1人ずつ微妙に声色を変えているように聞こえました。見事な演じ分け👏

 

 声の領域が広く、言葉による感情表現が巧みな仁左さまならではの、至極の演技でした🎉 実際、セリフ(言葉)がこんなにストレートに胸に響いてくるとは! 聞いている自分も驚きましたよ。それぞれのお役に言霊(ことだま)がこもっていました。弁慶と富樫が掛け合う「山伏問答」の緊迫感も凄かったけど、それ以上に「判官御手を……」のくだりにじわっと感動しましたね。

 上演前のご挨拶で、孝太郎さんが仁左さまについて「父は絶対に妥協しない人。舞台はいつも録画し、終わるとそれを観て1人反省会をしている。あそこはもう少しこうするべきだった……とか」というお話をしてくださった。まさに日々精進🙏 そして仁左さまが「もう『勧進帳』のどのお役も、私は演じることはございません」とおっしゃっていたのが、じ~んと心に沁み、こちらも覚悟を飲み込みました😭 それゆえになおさら、今回の貴重な上演を観られて(聴くことができて)本っ当によかったです✨✨✨


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