彼女が天使でなくなる日

 寺地はるな 

2020年9月8日 第1刷発行

作品紹介・あらすじ

九州北部にある人口300人の小さな星母(ほしも)島。
そこで育った江藤千尋は1年前に戻ってきて、託児所を併設した民宿『えとう』を営んでいた。島には「母子岩」と呼ばれる名所があり、家族・子供・友達のこと……悩みを抱えた人々がそのご利益を求めて訪れる。
複雑な生い立ちを抱える千尋は、島の人達とお客さんと触れ合いながら、自らの過去と今を深く見つめていく。
明日への新しい一歩を踏み出す「強さ」と「やさしさ」が心に沁みる、書き下ろし長篇小説。

 

妊娠出産育児、女性ホルモンの劇的変化の数年は個人差はあれどしんどいものだと知っている。

育児も母性だけで乗り切れる人ばかりでもない。

日本はまだまだ男社会だから父親が育児の主体になるのは難しいのだろう。せめて田所理津子の義母のように妨げになる存在にはなりたくないと思う。最後にそれでも理津子がもう一人産みたいと夫と島を再訪したのは驚きだが事態が好転したという救いがある。感動したかといえばそうでもないが、しみじみと良かったとはいえる本。

*気になった文章*

①自分に都合の良い素敵な人生の物語の展開を夢見るのは自由だが、感情も事情もある他人に都合の良い役柄を押し付ける人は嫌いだ。

②なにかの経験をした人が、その経験がない人に「あなたには私の気持ちがわからない」という行為が嫌い。

同じ経験をしていても見えるもの感じるものは違うから。

自分以外の人間の気持ちはわからない。

③「その経験がある」ということを理由に一段高いステージに立ったように他人を見下ろす行為に我慢ならない。