どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ナイトメア・シティ」…疾走するゾンビとびっくり仰天のラスト

イタリア・スペイン合作、「人喰族」のウンベルト・レンツィ監督による80年ホラー。

知能派ゾンビが登場する「ゾンビ3」と比べられることが多く、気になっていたのを初鑑賞してみましたが…

ナイフも銃もお手のもの、猛ダッシュで動くゾンビにびっくり(笑)。

設定的には〝放射能汚染で血を求めるようになった人間〟らしく、厳密にはゾンビといえないのかもしれませんが、「バタリアン」「28日後」などの先を行っていたのではないかと思う斬新なゾンビものでありました。

 

◇◇◇

核物理学者・ハーゲンベック教授を取材するため空港に出向いたTVリポーターのミラー。

突如そこに国籍不明の軍用機が飛来。

機内から核汚染で突然変異を起こした人々が出現した…

 

空港のロケーションといい、エキストラの数といい「ゾンビ3」と比べるとお金をかけてしっかり撮った感じがする映像。

先頭の教授は普通の顔色なのに、続くゾンビは腐敗が進んだ顔をしていて、1体1体のムラが激しいです(笑)。

「ゾンビ3」のゾンビも道具を使う知恵者でしたが、こちらは刃物を持って猛スピードでメッタ刺しにしてくるのがおっかない。

放射能で血液細胞が破壊されたため常に新しい血を求めるらしく、女性の首を刺してはチューチューと血を啜る、まるで吸血鬼のようなゾンビ。

主人公の勤めるテレビ局にも一気にゾンビがなだれこみますが、武富士ダンスを踊っていたレオタード姿の女性たちにゾンビが襲いかかるシーンがシュール。

(軽快なエアロビBGMから突然の阿鼻叫喚)

(人間の心が残ってそうなスケベな目ww)

場面転換が雑で残酷描写もチープですが、怒涛の勢いで話がどんどん進んでいきます。

 

主人公・ミラーは女医の妻がいる病院へと向かいますが、こちらも地獄絵図で夫婦2人であちこち逃げ回ることに…

主人公役の俳優さんがかなりの大根役者。

表情筋が全く動かない虚無の顔で「大丈夫、なんとかなる」と妻を励まし続けるのが1番ホラー(笑)。

妻の方は逃げ込んだカフェでインスタントコーヒーを飲みながら「文明の利器は果たして人間を幸福するのか」…などといきなり深い話をし始めます。

撮っている制作陣はきっと大真面目。伝えたいメッセージは何となく理解できるものの、ポエムのように作者の主張を唐突にねじ込んでくる、強引で雑な脚本に笑ってしまいます。

 

パニックを鎮圧しようとする軍人サイドのキャラクターも登場。

情報統制して事件を隠蔽しようとする将軍役はメル・ファーラーが演じていて、無能な上官役がハマり役。

自分の身内だけは助けようと密かに娘夫婦に連絡したものの、「非常事態宣言?何それ!?」とナメてた2人が殺されるのにはスカッとしました。

現場を奔走するウォーレン少佐役には「恐怖の報酬」のフランシスコ・ラバル。

お付き合いしていた芸術家の美女もあえなくゾンビに…

車を運転し、銃を乱射し、電話線を切断する…賢すぎるゾンビたちに大苦戦。

噛まれた人間もゾンビ化するらしいものの、この辺りの描写が不足していて感染の恐怖や多勢に無勢感が伝わって来ないのは残念でした。

ロメロのゾンビを完全にトレースしたようなヘリからの上空景色、「サンゲリア」を模したような目を抉るゴア描写なども炸裂。

ロケ地はヨーロッパなのか、途中に出てくる近代的な建築の教会など妙に印象的でした。

 

(ここからラストまでネタバレ)

クライマックスは遊園地…!!

ゾンビとアミューズメントパークの組み合わせ、非日常感があって素晴らしいです。

追い詰められた主人公夫婦はジェットコースターのてっぺんまで逃げるも絶体絶命。

そこに救援のヘリコプターがやって来てロメロのゾンビエンドかと思いきや、惨たらしく転落死する妻に絶句…!!

まるで理不尽な悪夢…と思ったらなんと本当に夢オチ!?

悪夢から目覚めた主人公が空港へ取材に向かい、冒頭と全く同じ場面が再生されていくループエンド。

全てはうだつの上がらない男の暗い願望を映し出した夢だったのか…それとも未来からの警告的予知夢だったのか…

こんなB級映画なのになぜかラストは「インセプション」にも負けない深い深い余韻が残りました。

 

エログロのドロっとした感じの強い「ゾンビ3」、これでもかというサービス精神の「ヘル・オブ・ザ・リビングデッド」と比べると、思ったより大人しめの印象。

自分の中ではこの2作を上回ることはなかったけど、イタリアのゾンビものを観た!!という満足感はしっかりと残りました。

 

主演の俳優さん、他の映画でもこんな演技なんだろうか(笑)。  

虚無的表情のどこか冷たい感じのする主人公と、現実と虚構の境目が曖昧になったようなラストが妙に味わい深く、なんかいい感じの作品でした。