真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「白薔薇学園 そして全員犯された」(昭和57/製作・配給:株式会社にっかつ/監督:小原宏裕/脚本:伴一彦/プロデューサー:林功⦅日本トップアート⦆/企画:成田尚哉/撮影:杉本一海/照明:木村誠作/録音:佐藤富士男/美術:後藤修孝/編集:山田真司/選曲:小野寺修/助監督:釜田千秋/色彩計測:福澤正典/現像:東洋現像所/製作進行:香西靖仁/出演:三崎奈美・太田あや子・山地美貴・織田倭歌・美野真琴・宮本麻代・港雄一・田浦智之・上野淳・吉原正皓・片岡五郎・明石勤・溝口拳・水木京一)。
 現在ではスバルビルも解体され、大分様相の変つた在りし日の新宿駅西口。臆面もなく名門を自負する、「白薔薇学園」の教師・栗田亜矢子(三崎)が総勢三十五名の女生徒を、二泊三日の研修旅行に発つ観光バスに迎へ入れる、そこ集合かよ。見るからシリアスな問題を抱へ、左手首には包帯も撒いた中村葉子(太田)が陰鬱な面持ちで車に乗り込み、最初のカットで画面左から、三原よしえ(美野)と広瀬絵里(織田)に荒木理花(山地)、森田尚美(宮本)の四人は普通にキャッキャ現れる。往時の用語を引つ張り出すと、ツッパリ気味の尚美が亜矢子に服装の緩みを咎められつつ、ひとまづ出発進行。行程の記載された、プリントに生徒が目を落とす画にタイトル・イン。そのまゝ、皆で「丘を越えて」を合唱してみたりするタイトルバック、男優部のクレジットが四人づつ括られる吉原正皓と片岡五郎の間が、三十秒強も空く謎の間隙は全体何なのか。
 その他一行のうち、若干名は乳尻を披露しながらも一絡げにクレジットレス、本当に三十人ゐるのかは数へてない。便意を訴へる尚美の姦計で、バスは予定外のサービスエリアに急遽停車。配役残り、大きな荷物を抱へ焦れた様子の上野淳が、実は葉子の兄・研二。研二が表で待つ電話ボックスから出て来る田浦智之は仲間の、尚美的にはディスコで知り合ひ、当地で落ち合ふつもりであつた辰夫。何処で手に入れたのかショットガンを得物に、研修旅行バスを乗つ取る物騒か大概な計画を立ててゐた研二と辰夫は、もう一人のジュン(名前が口頭に上るのみ)が来なくなつたため一旦途方に暮れる。一方、行き交ふ女に手当り次第声をかけては、当然怖がられる港雄一がSAの無頼通り越して無秩序な掃除夫・剛三。女子手洗に忍び込んだ剛三が、持参するエロ写真と汚物入れの使用済みタンポンを肴に、まるでシャブでも喰つてゐるどうかした勢ひで凄惨な自慰行為に狂ふ。人間性を彼岸の彼方に捨てて来た、壮絶な一幕は二分を跨ぐ相当な長尺も割かれ、この御仁が主役かと軽く見紛ふ序盤のハイライト。グラサンだと不愛想な高木ブーくらゐに映る吉原正皓は、バスの寡黙な運転手・村田。木に回想を接ぐ、純粋な男優部絡み要員の明石勤は、渡米について行かない形で亜矢子が別れた恋人・武田、地味に職業不詳。前半と後半のちやうど境目辺り、ブスを理由にバスを降ろされた―中に美野真琴がゐるのが今作最大の不条理―約半数の女子を、通りがかつた4tトラックが拾ふ。そら、最低その大きさの車でないと全員乗せられない。片岡五郎が助手席の芹沢で、溝口拳はハンドルを握る渡辺。この二人、どう見ても堅気の運送業といふよりも、完全に右翼の造形。新たにバスから降ろされる毎に拾つて行く、徐々に増えるのが可笑しい女子高生以外の、元々の積荷に関しては語られない。各種資料では管理人とされる水木京一が実際には、研二らが籠城するラブホテル「シャンティ石和」の支配人。もう一人縛り上げられる従業員は、何となく内トラ臭い。
 剛三がマスをかく―だから女子手洗―個室を、研二と辰夫が襲撃。最も無防備な状況、且つ二対一。幾ら天下無双の港雄一とはいへ、流石に狼狽へる剛三に対し、研二が晴れやかな笑顔と上野淳一流の弾ける発声で「オッサーン、元気いゝね」。パンクス・ミート・ア・パンクのビート感が絶品な、小原宏裕昭和57年第三作。当年全五作といふのは、この人にとつては別に多くない。
 カッたるい研修旅行をバッくれて、彼氏とフケる。理花らに尚美が得意気に吹聴してゐたアバンチュール―の算段―も、男達にとつては所詮手筈のひとつに過ぎなかつた。怖気づいたジュンの代りに、剛三を新たな仲間に引き入れた研二と辰夫が、女教師一人と三十五人の女子高生を乗せたバスをジャックする。ザクの抜けた戦力不足を、ビグザムで埋めるが如きパワーバランスの出鱈目さが清々しい。いよいよ三人組が車を占拠、剛三が絵里を手篭めにしかけるまで。実に序盤を丸々ノー濡れ場で通過してのける、女の裸の疎かと紙一重のワイルドな活劇を、上野淳の粗削りなエモーションと港雄一の箍のトッ外れた変態性欲者ぶり、あと田浦智之のトッポいリーゼントで加速。思ひのほか色気の欠如も感じさせず、痛快に見させる。放逐された少女を回収、バスを追ふトラックを転がすのは素頓狂な義憤に駆られた、妙に戦闘力の高い矢張り強面二人。毒を以て毒を制す超展開はやがて、港雄一と溝口拳のタイマンとかいふ、正しく竜虎相搏つ怒涛の見せ場に結実する。無軌道にブッ放す上野淳もカッコいゝけれど、溝口拳がショットガンを構へた姿の、完璧にキマッた様になり具合は尋常でない。ちなみに激突の雌雄は、木刀を携へた渡辺の圧勝。剛三がノサれてなほ、「ウゴォ」、港雄一らしい口跡の呻き声で地味に気を吐くのが、フレームの片隅に輝く一粒の宝玉。
 雌伏した序盤を取り返すべく、中盤以降はノンクレ隊込みで二十人近い女優部をひたすら剥いては犯し剥いては犯す、品性下劣なエクストリームに徹する。何故か難を逃れた美野真琴が、事件の発端、の口火たるシャワー室まで脱がない、シャワー室でしか脱がない結構な温存あるいは横紙破りまで含め、量産型裸映画的にも十二分に申し分ない。亜矢子と葉子が、何某か共有する秘密。辰夫は嬉々と、剛三は鬼気と。人外の体力で亜矢子以下―車内の―全員を犯し倒す剛三と辰夫に対し、誰にも手を出さうとしない研二。強姦魔の走らせるバスを右翼のトラックが追ふ、アナーキーな追跡劇。亜矢子が銃の強奪に成功する、緊迫した脱出サスペンス。掌を返した村田のみならず、シャン石に辿り着いた芹沢と渡辺も研二らを制圧するや矢張り、全員犯し始める実も蓋もない低俗ポルノ。そして、終に明かされる悲愴な真実。強靭に充実した一篇を、果たして如何に畳むものかと、思ひきや。ウーヤーター!もとい、よーもーやー!のまーさーか!正真正銘全部放り投げ、目的地のレイプならぬレイクホテルに十五時間遅れで到着して目出度し目出度し、にならうとはなつてしまはうとは。正しくお釈迦様でもといふか、こんなもの見通せる訳がないオシャカな作劇には度肝を抜かれた。元脚本がどうなつてゐたのかは知らないが、ダブルエックス御大・珠瑠美にすら劣るとも勝らない、稀に見るレベルの盛大な木端微塵作。ベクトルの正負はこの際兎も角、受ける衝撃の絶対値は兎に角デカい。つかタマルミの場合は爆散するも何も、ケシ飛ぶだけの物語が初めから成立してゐないだろ。

 村田が肌身離さぬフェイバリットの緊縛写真に似た女を見繕ひ、理花に白羽の矢を立てるのは些かならず判り辛い、盛り過ぎたきらひも否み難い藪蛇な機軸。
 備忘録< 研二の子を中絶した葉子が、周囲の噂も苦に自殺未遂


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