孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  不法移民問題に苦慮するバイデン大統領 急増する中国人不法移民

2024-04-28 23:16:36 | アメリカ

(【2023年7月17日 産経】アメリカを目指す中国人不法移民のルート ビザなしで入国できるエクアドルから陸路、多くの人が命を落としているジャングル地帯「ダリエン地峡」を抜けての移動になります)

【大統領選挙最大の争点、移民対応に苦慮するバイデン大統領 強硬姿勢への修正も】
メキシコから国境を越えて流入する移民の問題はアメリカ大統領選挙の最大の争点ともなっています。

“2月に実施された世論調査では「アメリカの最も大きな脅威はなにか」を尋ねた質問に、28%が「移民」の問題を選びました。去年8月の調査では9%に過ぎず、半年で「経済」(12%)と「物価上昇(インフレ)」(11%)を上回る問題に浮上し、大統領選挙でも大きな争点となるとみられています。”【3月28日 NHK】

****移民、選挙戦最大の争点に=バイデン、トランプ両氏が非難合戦―米大統領選****
11月の米大統領選を前に、メキシコから国境を越えて流入する移民の問題が最大の争点に浮上している。2月29日には再対決が濃厚なバイデン大統領とトランプ前大統領が南部テキサス州の国境の町をそれぞれ訪問し、お互いを非難し合った。
 
「これはバイデンによって引き起こされた侵略だ」。トランプ氏はイーグルパスでの演説で訴えた。バイデン氏の移民に寛容な政策によって治安が悪化したとも批判。同日の大衆紙への寄稿では、「当選すれば、就任初日に国境を封鎖して侵略を阻止し、バイデンの不法移民を国から排除する手続きを開始する」と表明した。
 
一方、バイデン氏はブラウンズビルで、国境警備隊員らを慰労した。演説では、上院が超党派で合意した移民対策を盛り込んだ法案が「トランプ氏の妨害で頓挫した」と非難。その上で「トランプ氏に言いたいことがある。政治的な駆け引きの代わりに、一緒にやり遂げようじゃないか」とこの移民対策に賛同するよう呼び掛けた。

対メキシコ国境を越えて流入する移民はここ最近急増している。昨年12月には1カ月の越境者が約30万2000人に達し、過去最多を記録した。【3月1日 時事】
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従来比較的穏健な移民対応をとってきた民主党バイデン大統領にとっては、増大する移民への世論の硬化を受けて、苦しい対応にもなっています。

一部、トランプ氏が主張していた強硬な政策を取り込む形で軌道修正も図っています。

“政権発足以来、寛容な移民政策をとってきたバイデン政権は、不法移民急増への国民の不満が高まり、トランプ氏が国境封鎖や「国境の壁」建設、不法移民の摘発強化・強制送還等を主張する中で、中止していた「国境の壁」の建設再開の方針を表明するに至っている。”【4月25日 菅原淳一氏 JBpress“米大統領選で過熱する「米国第一」競争、トランプ化が進むバイデン政権の通商政策”】

****バイデン大統領、国境警備強化法案の新権限行使ためらわないと断言****
1月26日、バイデン米大統領は、上院で与野党が協議している国境警備強化法案に触れて、成立すればこれまでで最も「厳しく公正な」改革措置となるとの見方を示すとともに、国境閉鎖の権限が与えられればちゅうちょなく行使すると断言した。(後略)【1月29日 ロイター】
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しかし、移民対策でバイデン大統領に“手柄”を与えたくないトランプ氏の共和党への働きかけもあって、冒頭記事に「トランプ氏の妨害で頓挫した」との発言があるように、有効な対応がとれていません。

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議会上院の与野党は、総額600億ドルあまりのウクライナ支援と、メキシコとの国境管理の強化を抱き合わせた緊急予算案でいったんは合意。

2月7日には、議会上院で、この案の審議を前に進めるかどうかの採決が行われました。しかし結果は、共和党の議員が合意を反故ほごにして反対に回り、49対50の1票差で否決。ウクライナ支援は、暗礁に乗り上げました。

共和党議員が反対に回った最大の理由は、トランプ氏の存在でした。
トランプ氏のホームページに掲載された バイデン氏を批判する動画トランプ氏が採決前に集会で演説し、国境管理が不十分だとして共和党議員に対し、法案に反対するよう圧力をかけたことが影響したのです。(後略)【3月28日 NHK】
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また民主党内部にも、「ニューヨークに来る移民すべての衣食住を払い続ければ、市は破綻する」(アダムズ・ニューヨーク市長)のような移民対策を求める“突き上げ”があります。しかし、一方で従来の穏健な対応を求める民主党員も多く、バイデン大統領は対応に苦慮しています。

****移民問題に悩む米バイデン大統領 身内の民主党内からも“突き上げ”****
(中略)
ニューヨーク市など、有力首長から財政支援などの対策を求められ、突き上げを食らうバイデン氏。トランプ氏と激しい支持率争いを繰り広げる中、先月には…

バイデン大統領 「アメリカ史上、最も厳しい国境警備の改革法案だ」
就任当初、トランプ政権の厳しい移民対策を批判していたバイデン氏も姿勢を変えています。

移民問題を国の脅威と考える民主党支持者も増加。ただ、それでも寛容な政策を求める人が多くいます。
民主党支持者 「民主党は移民に寛大な価値観を保つべきですが、いまは怖気づいています。バイデン大統領はどこまでも中道を演じようとしている」

移民への厳しい対策は“民主党らしさ”を求める支持者の反発を食らう恐れもあり、バイデン氏は難しいかじ取りを迫られています。【3月29日 TBS NEWS DIG】
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【トランプ前大統領「「(不法移民は)人間でなく動物だ」】
トランプ氏の不法移民対応については、政策以前の基本的な部分で、どうしても同意できないものがあります。

****トランプ氏、不法移民を「動物」と表現 国むしばむと警告****
トランプ前米大統領は2日、米国への不法移民は「動物であって人間ではない」と表現した。

ミシガン州で演説し、不法移民が容疑者となっている犯罪を列挙し、11月5日の大統領選で自身が勝利しなければ暴力と混沌が米国をむしばむと警告した。

トランプ氏は「民主党は(不法移民は)人間なので動物と呼ばないでくれという。しかし私はこう言った。違う、人間でなく動物だ」と語った。

同氏は演説でしばしば、メキシコから越境する不法移民は自国の刑務所や収容施設を抜け出し、米国で暴力犯罪を増やしていると発言している。

移民による犯罪に関するデータは少ないが、研究者ら米国の不法居住者による暴力犯罪発生率が国内出身の居住者より高いわけではないと指摘している。【4月3日 ロイター】
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もちろん不法移民が社会に与える問題はありますし、自国の利害を考えるとき、場合によっては厳しい対応も必要になるかも・・・しかし、移民の側も生きるために命がけで国境を超えようとしているのであり、「人間でなく動物だ」と言うのは、政策というより人間性の問題でしょう。

【移民希望者を惑わすSNS情報 「もしトラ」の焦りも そこにつけ込み情報を利用する斡旋業者】
そういうトランプ氏復権「もしトラ」に焦る移民希望者も多く、そこにつけ込む斡旋業者も。米大統領選挙で流される真偽入り混じった情報が、斡旋業者に都合よく利用されることも。そうした情報を野放しにしているフェイスブックなど巨大プラットフォーム企業の責任も問われます。

****「もしトラ」に焦る米移民希望者、つけ込むあっせん組織****
(中略)
メキシコ市の移民キャンプは、主に中米や南米からやってきた多数の米移民希望者で混雑。こうした人々は正式な難民申請手続きをするか、あるいは不法に越境する準備を整えている。

その1人のバルガスさんはトムソン・ロイター財団に「(前大統領の)トランプ氏が返り咲くと聞いている。彼は移民希望者の強制送還を始めるだろうから、事態はひどいことになる」と先行きへの不安を明かした。

こうした米国への移民希望者たちは、目まぐるしく変更される密入国あっせん組織からのオファーや、多くが間違っているSNS上の情報に頼って重要な決定を下している。

移民希望者が目にする情報の大半は、フェイスブックとワッツアップ経由で、援助団体や公的機関が発信したものではない。内容のうち本当の話はせいぜい半分、または真実のように思える虚構に過ぎない。

移民希望者にとって、信頼できて正確な情報は避難施設や水と同じぐらい重要な意味を持つようになった。しかし密入国あっせん者や犯罪組織がばらまくネット情報は、うそか本当か判別するのが難しい。

移民希望者の間で最も利用されているフェイスブックは、密入国あっせんのコンテンツを禁止していると主張。運営会社メタの広報担当者はトムソン・ロイター財団に「われわれは密入国をあっせんするコンテンツないしサービスをプラットフォーム上で禁じており、見つけ次第削除する」と明言した。

ただ専門家が見たところでは、偽アカウントが削除されている形跡は非常に乏しい。巨大プラットフォーム企業に正確な情報を得られる環境を確立する責任を求めているテック・トランスパレンシー・プロジェクトのケイティー・ポール氏によると、フェイスブックは中南米地域で最も利用者が多いSNSであるがゆえに、最大の誤情報の供給源になっている。(中略)

<トランプ氏の脅威も利用>
ネットに偽情報で出回る流れは、米大統領選が近づくとともにさらに加速する公算が大きく、貧困や犯罪集団からの暴力、失業、気候変動などさまざまな理由で母国を逃れてきた移民希望者の決断に影響を及ぼしつつある。

米大統領選とその結果は、メキシコで「コヨーテ」と呼ばれる密入国あっせん組織がSNSで発信する情報にも反映され、移民希望者に求める料金も左右している。

例えばバイデン大統領が就任した2021年、あっせん組織はまず応募者を集めるため、バイデン政権下で、国境管理と米国在留許可が緩くなるとうそを宣伝。一方で実際には国境管理が厳格化され、密入国が難しく危険になったことであっせん組織に10−20%の上乗せ料金を支払わなければならないという話も伝わってきている。

ポール氏は、国境はがら空きだという米共和党の間違った主張を、あっせん組織があたかも事実であるかのようにそのまま流していると述べた。

このような情報操作の結果、バイデン政権になって米国境に殺到する移民希望者は過去最高に達した。

そして11月の大統領選にトランプ氏が共和党候補として臨みそうな情勢になった今、あっせん組織は移民希望者らに対して即座に行動するよう呼びかけている。トランプ氏が再び大統領になれば、国境管理が厳格化され、強制送還が増える恐れがあるという以前とは正反対の理屈からだ。(中略)

(難民・移民援助団体インターナショナル・レスキュー・コミッティーの)ベラスケス氏はその一例として、ワッツアップに「米国境が閉じようとしている。今すぐ走り込め」とのメッセージが書き込まれていることを挙げた。(中略)

ポール氏は「われわれは、一大産業規模で展開されている移民希望者を食い物にする犯罪を、このプラットフォームが助長し、その弊害への対応を怠っているという話をしている」と憤りを隠せない様子だ。【3月3日 ロイター】
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【急増する中国人不法移民 「居残ることが容易」という事情も】
そうしたなか、最近目立つのが中国人の不法移民増加です。

****メキシコ沖でボート転覆、中国人8人死亡…米向かう不法移民か****
メキシコ南部オアハカ州沖で3月29日、中国からの移民を乗せたボートが転覆し、中国人8人が死亡した。州検察当局によると、ボートは同28日にメキシコ人男性の案内で、グアテマラ国境の南部チアパス州を出発した。

死亡したのは男性1人、女性7人。中国人の男性1人が生き残り、検察当局の調べに「突然、ボートがひっくり返った」などと説明したという。

メキシコ経由で米国を目指す中国人は急増している。昨年9月までの1年間で米南部国境から不法入国した中国人は5万2700人で、前年同期間の倍近くに上った。メキシコ政府は、チアパス州で取り締まりを強化している。

中国外務省の汪文斌ワンウェンビン副報道局長は1日の記者会見で「メキシコ側に生存者への援助と事件の調査強化を要請している」と述べた。【4月3日 読売】
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****中国人の米国密航が激増、国別でメキシコを抜き年間2万人を突破―華字情報サイト****
米国で摘発された密入国者の国籍別統計で、2023年度にはメキシコ国境から米国に不法入国した中国人がメキシコ人を抜いて2万人を突破(2万4048人)した。21年度はわずか323人だった。(中略)22年度には1970人だった。

中国人の不法移民は激増しつつある。これまでの経緯からすれば、中国人が米国で亡命を申請すれば認められる可能性が高く、認められなくても中国への送還は難しいという。米国に不法入国する中国人が激増する背景には、「居残ることが容易」という考え方があるとみられる。(中略)

米下院の高官は、米国の国境警備部門は中国人を前にして「途方に暮れている」と述べた。中国人の多くは「出身国をほとんど考慮せずに米国内に解放されている」という。同高官は、「亡命による救済を求めている人もいるかもしれないが、すべての人に十分な安全審査を行うことはできない。特に敵対国の国民の場合はそうだ」と述べた。

米国では、中国人が観光客になりすましてアラスカの軍事施設に入ろうとする事件が繰り返し発生している。うちアラスカ州フェアバンクスのウェーンライト空軍基地では、米軍が中国人を乗せた車両の中からドローンを発見した。(後略)【2月25日 レコードチャイナ】
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米中両国の当局の協議も行われてはいるようです。

****中国人の米国への密入国が激増、両国当局が協力へ―華字メディア****
海外華字サイト・文学城は7日、中国人の米国への密入国が相次いでいることについて、両国の当局が当事者らを協力して送還すると報じた。

アレハンドロ・マヨルカス米国土安全保障長官はこのほど、「米中は中国国民の中国への期間について交渉しており、重大なブレイクスルーを期待している」と述べた。この件をめぐって、同氏は今年2月に中国公安部長の王小洪(ワン・シアオホン)氏とオーストリア・ウィーンで議論したという。(中略)

記事は、米紙ニューヨーク・タイムズのデータとして、「米国は前年度に288人を中国に引き渡したが、引き渡されるべきなのにもかかわらず米国内に居住している中国人の数はおよそ10万人に上る」と伝えている。【4月9日 レコードチャイナ】
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【中国人不法移民 “多くは自由や職を求めて”】
遠く中国から海を超えて、どういう者がアメリカを目指すのか?
事情は様々でしょうが、“多くは自由や職を求めて”とも。

****「娘に愛国教育は受けさせたくない」アメリカへ不法越境した中国人が語った本音 闇業者に頼り、長旅の果てに…国境警備当局による拘束は10倍以上に激増****
中国・山東省出身の張は1月下旬、30代の夫と10歳ぐらいの長女と一緒に、メキシコからアメリカ西部カリフォルニア州に入った。両国を隔てる「国境の壁」の切れ目を通り抜けての越境。「頭に浮かんだのは、『自由』の二文字だった」。その直後、張はどこかすっきりとした表情で語った。

アメリカへ不法に渡る中国人が激増している。実態を探ろうと訪れた現場で私が出会った張夫妻にとって、長女の存在が祖国を去る決断をした理由だった。あっせん業者に多額の渡航費用を支払い、さまざまな危険を冒してまで、なぜアメリカを目指すのか。不法越境の現場で語られた「本音」とは―。(敬称略、年齢は取材当時 共同通信ロサンゼルス支局 井上浩志)

(中略)中国人移民希望者を顧客とする中国系アメリカ人弁護士、黄笑生によると、多くは自由や職を求めて米国を目指す。

 ▽11カ国の旅路の果てに
私が出会った張一家は祖国を離れた後、タイやトルコなどを経由した。入国にビザが不要な南米エクアドルに到着し、その後は主に陸路で北上。計11カ国、50日超の長旅だった。中国系動画アプリTikTok(ティックトック)を見て、初めて具体的な渡航方法を知った。3人で30万元(約620万円)かかったという。

道中では、コロンビアとパナマにまたがり、アメリカを目指す多くの人が命を落としているジャングル地帯「ダリエン地峡」も通った。危険を覚悟でアメリカを目指したのは「経済的な苦境に加え、長女の教育と健康のため」。

中国の習近平指導部は思想統制の一環で愛国教育を実施しているが、張は「娘は学校で共産党や政府への忠誠心を育てるスローガンを復唱させられるが、そんなものは学んでほしくない」と強調した。

 ▽長女の夢
汚染された中国の水や空気が長女の身体に与える影響も心配だったという。決断に拍車をかけたのが、中国の新型コロナウイルス対策「ゼロコロナ政策」だった。感染拡大を封じ込めるため、ロックダウン(都市封鎖)や集中隔離などの強制措置が実施され、経済は停滞。自営業者だった一家は「多大な影響」を受けた。ゼロコロナ政策は2022年末ごろ、事実上崩壊。張一家はその後、北京に移ったが、事態は好転しなかったという。

祖国は既に捨てた。親族や友人にはもう会えないが、張は「きっと決断を理解してくれる」と語った。一家はアメリカのどこに居を構えるか決めていない。だが長女の夢は明確だった。「ハーバード大に入学して、研究者になりたい」(後略)【4月27日 47NEWS】
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“新型コロナウイルス対策で仕事を失ったり、人権侵害や宗教上の迫害を受けたりしたことなどが理由という。”【23年7月17日 産経】とも。

ギャングの横行などで、生命・生活が直接的に脅かされている中南米からの移民とは、やや異なる様相も。経済的にも一定の余裕がないと無理かも。

もっとも、自由を奪われ、迫害を受ける者にとっては、国民の生死を司り、その命に逆らっては生きていけない中国共産党は世界最大のギャングかも。

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