孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南アフリカ  初の全人種選挙から30年 与党ANCは劣化した政治・経済・社会を立て直せるか

2024-04-27 22:10:09 | アフリカ

(初の全人種選挙から30年を記念する式典の会場で、南アフリカの国旗を振る子どもたち=27日、首都プレトリア【4月27日 共同】)

【初の全人種選挙から30年】
南アフリカではアパルトヘイト(人種隔離政策)の苦難を乗り越えて、1994年に初めて全人種参加選挙が行われました。それから30年・・・

****南ア、初の全人種選挙から30年 差別根絶へ誓い新た****
1990年代前半までアパルトヘイト(人種隔離)が行われていた南アフリカで、94年に初の全人種参加選挙が実施されてから30年となった。首都プレトリアで27日、記念式典が行われ、ラマポーザ大統領は「今なお社会に存在するさまざまな不平等を乗り越えなければならない」と述べて、差別根絶へ向け誓いを新たにした。

南アでは第2次大戦後、白人支配体制下で異人種間の結婚を禁じるなど人種差別の制度化が進んだ。解放闘争や国際的非難を受けて、91年にアパルトヘイトの根幹法が全廃された。94年の選挙でアフリカ民族会議(ANC)が圧勝して故マンデラ氏が初の黒人大統領に就任し、白人支配は終わった。【4月27日 共同】
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差別は制度上撤廃され、ネルソン・マンデラ氏が率いたANC(アフリカ民族会議)の政権が続く30年で経済成長もありました。 しかし、この30年で進行した「影」の面もあります・・・

****“民主化30年”を迎える南アフリカ****
南アフリカは、アパルトヘイト(人種隔離政策)が撤廃され、全ての人種が参加する民主的な選挙が行われてから2024年で30年という節目の年を迎えます。かつてマンデラ氏が率いたANC(アフリカ民族会議)は、この間一貫して政権を担ってきましたが、汚職や内部対立が絶えません。(中略)

ANCのもとで、一部で黒人の生活水準の向上や、経済成長があった一方で、「格差の拡大」や「汚職の蔓延」、さらに、「犯罪の横行」などが課題になっているからです。  

私(別府正一郎キャスター)は1月に帰国し、この番組を担当し始めるまで4年半駐在していましたが、犯罪は常に警戒していました。

たとえば、強盗に車が奪われる犯罪も起きていますので、街なかを運転する時は、後ろをつけられていないかを警戒していました。つけられているなと思ったら、スピードをあげたり、大通りに出たりしました。

また、役場での手続きで、賄賂を要求されるようなこともあり、閉口したこともありました。  

1994年の就任演説で、マンデラ氏は、全ての人種が平和的に共存する「虹の国」を打ち立てようと呼びかけました。しかし、ANCの長期政権のもとで、さまざまな問題が噴き出しているのが現状です。「虹の国」の理想の実現に向けた、南アフリカは大きな試練に直面しています。【2023年12月6日 NHK「キャッチ!世界のトップニュース」】
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【5月総選挙では与党過半数割れ予測も】
南アフリカでは、全人種参加選挙から30年の節目にあたる今年5月総選挙が行われます。
マンデラ氏以来、一貫して南アを率いてきた与党ANC(アフリカ民族会議)の支持は低下傾向にあり、今回選挙では過半数割れの予測もあります。

****南ア、5月29日に総選挙 与党過半数割れの予想も****
南アフリカ大統領府は20日、5月29日に総選挙と地方選を実施すると発表した。

計画停電や公共サービスの低下、高失業率への不満が高まる中、ラマポーザ大統領(71)が党首を務める与党アフリカ民族会議(ANC)が1994年以来初めて議会の過半数を失うとの予測も出ている。

総選挙と地方選の後、国民議会(下院)が新大統領を選出する。

ラマポーザ大統領は2期目を目指すが、経済成長率の押し上げに苦慮している。

大統領府は声明で「2024年の選挙は南アフリカが自由と民主主義の30年を祝う時期と重なる」とし、「民主主義におけるこの重要かつ歴史的な節目に全面的に参加するよう」有権者に呼びかけた。【2月21日 ロイター】
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ANCの政治はズマ前大統領時代に大きく劣化しました。現在のラマポーザ大統領は故マンデラ氏が自身の後任にと考えていた人物でもあり、ANCそして南ア立て直しの“切り札”的な存在です。
言い換えると、ラマポーザ大統領でダメなら、もはや後がない・・・とも。

【南ア経済 民間企業活用で立ち直りの兆しも 懸念される与党敗北の政治混乱】
南アフリカ経済には民間企業の活用などで立ち直りの兆しもあるようですが、これまで国政を担ってきたANCが過半数を割り込み、急進的主張の政治勢力の影響が強まると再び混迷に陥る不安もあります。

****【混迷極める南アフリカに光】南アはラマポーサ大統領の堅実さで立て直すことができるか****
フィナンシャルタイムズ紙コラムニストのデビッド・ピリングが、3月12日付け同紙掲載の論説‘The bullish case for South Africa’で、長年の悪いニュースの後、南アは短期・中期的には楽観できる理由もあると述べている。主要点は次の通り。
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(FT論説要旨)
ここ数年、南アからのニュースは停電、慢性失業、国家汚職、犯罪、哀れな経済成長、ランド(通貨)の下落という悪いものばかりがここ数年続いてきた。更に、5月予定の選挙でアフリカ民族会議(ANC)の得票が50%を切る可能性があるとの見方が加わり、選挙後の政治的不安定につき様々な憶測が出ている。

しかし、短・中期的には注目すべき話がある。最初の良いニュースは、経済・産業の足枷となってきた電力危機が改善され始めたことだ。

2022年、ラマポーサ(大統領)は、再生可能エネルギーへの転換に反対する石炭ロビーや民間を信用しないANCの双方と話をつけ、民間発電業者に対する発電量制限を一挙に撤廃した。その結果、約10ギガワットの安価な太陽光、風力発電が徐々に導入されることになった。これにより、民間企業からの国家電力公社(Eskom)への需要が軽減され、配電網への電力供給が増加する。

同じことは、運輸・物流部門にも見られる。鉄道・港湾公社トランスネットも、エスコムと同様深刻な危機にあった。送電線や線路の盗難が横行、貨物の輸送ができなかった。

アフリカ最大の港ダーバン等も同様だった。23年11月には、約7万個のコンテナを積んだ79隻が海岸沿いで貨物処理の順番を待っていた。23年、輸送遅延のため南アの石炭輸出量は1993年以来最低の5000万トンに低下した。これも最悪の事態は過ぎるかもしれない。今月、トランスネットは遂に新最高経営責任者(CEO)にフィリップスを、エスコムもCEOにマラコネを任命した。

重要なことに、トランスネットも民間企業に目を向けている。フィリピン企業の国際コンテナ・ターミナル・サービスは、労働組合との雇用保全合意に達し、ダーバン港を運営することになった。政府は、民間企業による自社リースの機関車をトランスネットの鉄道で運行することを認めようと検討している。

第三の前向きのニュースは、2月の予算だ。選挙が数カ月先にあるが、大きなバラマキ予算はなかった。財務省は支出抑制に成功した。数年前には債務の爆発が懸念されていた。スタンダード銀行によれば、債務はGDPの約75%程度に抑えられている。

最後に、5月の選挙は一部の予測ほど劇的ではない可能性が高くなった。ANCは農村地域では強い支持があり、全得票率が40%台にまで落ちることはなく、45%以上を確保するだろう。

また野党の分裂も助けになる。そうであれば、ANCは小さな連立パートナーと組んで国を統治できる。副大統領ジュリアス・マレマや彼の急進的な経済自由戦士党が主導権を握ることはない。
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(論評)
南アフリカがすべき3つのこと
上記の論説でピリングは、南アの状況は最近幾つかの点で好転しているという。南アは、本来もっと立派な国であるべきだ。

ここ10年余、特にズマが大統領になった辺り(09~18年)から、一部急進黒人勢力等による政治の私物化、汚職の蔓延などと、それらの必然の結果としての経済低迷に見舞われた。ズマの後に大統領になったラマポーザも、やや期待外れのように見えた。

問題が余りに大きかったこともあろう。与党の既得権益勢力が強すぎたこともある。しかし、ラマポーザはしっかりした政治家だ。(中略)

目下注視すべき南アの最大の課題は、第一に上述の経済、第二に5月29日の議会選挙(大統領は議員から互選)、第三は外交、特に対米関係の軋みである。

ズマ政権以後の南ア政治の劣化は、甚だしい。与党ANCの劣化は激しく、ここ数年、与党ANCは過半数を失う可能性が指摘されてきた。

94年の新生南ア誕生後ANCは一貫して単独で統治してきた。次は連立政権になるかもしれないと言われる(最近の世論調査でANCは50%を切る)。しかし、良い連立相手がいるのか。

ズマは12月、新党「MK党」(9月結党)への参加を表明した。新党名は、60年代にマンデラが結成したANCの反アパルトヘイト闘争実力部隊の名前に因む(新党は必要によっては暴力に訴えると述べている)。

ANCは、この新党の選挙参加登録取り消しを選挙裁判所に求めたが、3月26日裁判所はこれを却下した。この新党も波乱要因になるかもしれない。ズマ出身の雄州クワズルナタールでは強いだろう(後略)【4月26日 WEDGE】
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ズマ前大統領については、以下のようにも。
“前大統領のズマ氏が率いる「民族の槍」(MK)の動向にも注目が集まっている。MKは元ANCメンバーにより2023年12月に結成された新党で、ズマ氏の根強い支持基盤であるクワズール・ナタール州を中心に得票すると予想される。

ズマ氏は過去の有罪判決を理由に立候補不可とされていた。しかし、4月2日に選挙裁判所が立候補者リストに加えることを支持する判決を出したことを受け、4月12日、IEC(独立選挙管理委員会)は同氏の立候補は不可であることを憲法裁判所に緊急提訴しており、憲法裁判所の判断が待たれている。”【4月23日 JETRO】

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