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ガッカリ韓国革新技術を使った大韓海運LNG船が廃船に

大韓民国ニュース
この記事は約11分で読めます。

なんというか、ご愁傷様?

[単独] 「韓国型貨物倉」 SK海運のLNG船、一度も使わずに廃船になる

更新日 2024.04.30. 16:28

韓国型液化天然ガス(LNG)貨物倉(KC-1)を採用したSK海運所属の大型船2隻が一度も商業運転を行うことができず、結局廃船手続きに入った。事業を拙速に推進した結果、国内造船業界と海運業界が莫大な資源と時間を浪費し、韓国の技術に対する海外船主たちの不信感を高めたという指摘が出ている。

朝鮮日報より

まあ、そういうこともあるよね。

造船業と弥縫策

造船業は低迷気味

日本の造船業が韓国と支那の造船業の追い上げによって、極めてキビシイ状況になっている話は、政府としても問題視している。

https://www.mlit.go.jp/common/001353025.pdf

液化天然ガスや石油の輸入に使うタンカーは、それなりの技術力を要する分野ではあるが、韓国や支那の技術水準が上がったことで、相対的に人件費の高い日本が追い詰められる結果となった。

先ずは、フェリーなどの人を乗せる船を作る分野を失い、更に石油タンカー、そしてLNGタンカーという順番である。

また、世界的な需要が低下していることも、影響している。

これは日本の造船業がドッグ新設をしていないことも関係していて、設備の面では後進国である支那の方が遙かに大きく立派な設備を持っている。

韓国も同様で、財閥系企業のバックアップを受けて造船業に力を入れていたので、日本の造船業はかなり追い詰められた。

ただ、この話は日本の造船技術がお粗末だという話ではなくて、コストの面での競争力の問題が大きいのだという話である。

薄利多売でシェア拡大を図った韓国

特に、韓国造船業はとにかく薄利多売でシェア拡大を目指していた。その結果、更に安い支那造船業に追い詰められて、赤字を垂れ流すという残念なことに。

SK海運、2400億ウォンが消えた 会計監査で判明

Posted April. 17, 2003 22:07,

SK海運から2400億ウォンが煙のように消えてしまった。また「特殊な関係者」とされる第3者に資金を貸したが、530億ウォンが貸し倒れになっていることも明らかになった。

東亜日報より

苦戦していたSK海運は、2003年頃からすでに危機的状況であり、2018年には売却の憂き目に。

韓国のSKグループ、SK Shippingを売却

1 10月 2018

*韓国の大手家計大手SKグループは、業種の減速による借金負担を理由に、海運会社であるSK海運を解約することで出荷を中止する方針だ。*

SKグループの持株会社であるSKホールディングスは、パルクの報告書によると、SK海運の株式の過半数を現地のプライベート・エクイティ企業ハーン・アンド・カンパニーに約1兆5000億ウォン億ドル)。

ハーン・アンド・カンパニーは、SK海運が発行する新株式を買い取る方法を検討していると言われています。

MARINE LINKより

それでもロンダリングをしながら生き延びてはいるようだが、社運をかけて建造していたLNGタンカーが転けてしまったというのが、冒頭のニュースである。

SKグループが4000億ウォン投資してLNG運搬船建造した理由は…

2019.04.17 17:21

北緯35度28分588秒。東経129度24分205秒。

17日午後1時40分。韓国南東部の蔚山市東区(ウルサンシ・トング)の現代重工業海洋プラント事業場。SKグループが2000億ウォン(約197億円)かけて建造した天然ガス(LNG)運搬船の操舵室内のGPS(衛星利用測位システム)装備は現代重工業沖を指していた。

~~略~~

LNGが注目されているのは世界的に最も多く消費されるエネルギー源である石炭に比べて炭素排出量を減らすことができるからだ。これに加えてシェールガス採掘技術が発展し、LNG消費が中国を中心に急速に伸びているからだ。

中央日報より

「これからはLNGの時代が来るニダ!」と、頑張って作ったのだが、ココで一つ大きな問題にぶち当たった。

フランスに特許料を支払いたくない!

そう、実は効率の良いLNGタンカーを作ろうと思うと、他国の技術を採用する必要があるのだ。

LNG船の貨物倉(貯蔵タンク)はモス型(上)とメンブレン型に分かれる。メンブレン型は積載空間の効率性が高く、船舶運航時に視野が確保され、大型LNG船全体の955%を占める。
中央日報より

上側がモス型と呼ばれるLNG船で、下側がメンブレン型と呼ばれるLNG船である。下型はフランスのGTT社が開発したタンク形状であり、見て分かる通り同じサイズのタンカーでも積めるLNGの量が多くなるメンブレン型が有利だ。

が、GTT社が特許を持っているので、他社が作るには特許料を支払わなければならないんだよね。

韓国、フランスから「LNG技術」独立可能か

2020.11.27 16:09

韓国の公正取引委員会が「メンブレン型」液化天然ガス(LNG)貨物倉の独占技術を保有するフランスのGTT社に対して課徴金を賦課したことを受け、韓国造船会社がこれまでの慣行を遮断できるかに関心が集まっている。

公取委は25日、「GTTがLNG船舶を建造する国内造船会社を相手にLNG貨物倉技術ライセンスを提供しながらエンジニアリングサービスまで購入するよう強制した行為に対し、是正命令と課徴金125億2800万ウォン(約12億円)を賦課する」と決定した。

~~略~~

LNG船のロイヤリティー問題が「国富流出」と見なされ、政府は2004年から10年かけて国内造船会社、韓国ガス公社などと共に国産貯蔵タンク技術「KC-1」を開発した。2018年にサムスン重工業がこの方式で建造したLNG運搬船をSK海運が運航したが、貯蔵タンクの外壁に結氷現象が表れるなど欠陥が発生した。

中央日報より

で、10年かけて国産技術「KC-1」を開発して、コレを使ったLNG船を韓国国内で作ったというわけだ。

フランスにはびた一文支払わない!という覚悟が見て取れるね。

まあ、日本でも似た感じの開発をしてSPB型というのを開発している。

https://www.ihi.co.jp/var/ezwebin_site/storage/original/application/84f0dad0b27644717d92aa927897fbd1.pdf

コレが優れているか?というと突出した技術というところまでは行かなくって、建造費が高いので色々な技術と組み合わせてトータルでメリットを出す感じになっているようだね。

トラブル多発

で、韓国が国家の威信をかけて建造したKC-1方式のLNG船だが、どうにも具合が悪いようだ。

10年かけて開発した韓国産LNGタンク技術…197億ウォンかけて補修も同じ欠陥

2019.12.03 14:35

韓国造船会社を支えているLNG船。

~~略~~

ところが2018年4月、この技術を適用したLNG船2隻の船体の外壁に結氷が発生した。その後、197億ウォンを投入して一度補修したが、昨年5月にまたも同じ欠陥が表れた。先月、2度目の補修に入ったLNG船2隻について「修理完了後にもまた欠陥が表れるおそれがある」という指摘が出ている。

中央日報より

頑張って作ったのに!

国会産業通商資源中小ベンチャー企業委員会所属のチャン・ソクチュン自由韓国党議員室が2日に韓国ガス公社から受けた資料によると、SK海運所属のSKセレニティ号、SKスピカ号は先月から来年3月の完了を目標にサムスン重工業巨済造船所で補修中だ。

資料によると、2次補修方法はタンク下側の空間に断熱材を設置して空間内部の対流現象を防ぐ方式だ。ガス公社は「タンクのコーナー空間内の低温気体流動を遮断し、低温発生部位を除去する」と明らかにした。

中央日報「10年かけて開発した韓国産LNGタンク技術」より

……中央日報は、技術的内容を分かってないで記事を書いただろう?読んでもサッパリ意味不明だ。

簡単に解説すると、LNGは極低温(マイナス162度)で運搬する必要があるので、タンクの外に温度が伝わると困る。しかし、作り方が悪いとタンクの外側に霜が付いてしまうのだ。

img

こんな感じのスポットが出来上がると、2つ問題が考えられる。1つは、タンク内の温度上昇に伴う圧力上昇によるタンクの破壊。1つは、金属が低温脆性と呼ばれる脆化現象(要は脆くなって亀裂が入る)によるタンクの破壊だ。

この記事に書いている「空間内部の対流現象」というのは、おそらく二重化したタンクの外側壁と内側壁の間の空間のことであり、断熱材を入れて対流を防ぐという話をしているんだが……。

サムスン重工業が建造して9月に大韓海運に引き渡したSM JEJU LNG1号船の場合、KC-1技術が適用されたが、断熱方式が異なる。大型タンク(メンブレイン)の外側の空間をすべて断熱材を覆って対流現象を防いだ。コップに例えると下面と横面にすべて布をぶせた形態だ。SM JEJU LNG1号は現在正常運行中で、今月末に2号も引き渡す予定だ。業界関係者は「全体に断熱材を覆わず空間を残す点がSKセレニティ号、SKスピカ号の2次補修の問題」と指摘した。

中央日報「10年かけて開発した韓国産LNGタンク技術」より

実際に断熱材を使えばある程度は問題の解消に貢献はすると思う。ただ、そんな単純な話でもないんだよね。

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そして廃船へ

じょ、条件付き運航で

恐らくは構造的な欠陥があるであろう韓国製のLNG船だが、記事通りであればサムスン重工業が作った方は、モノになった感じがする。

一方で、SK海運の作ったLNG船の方は何度も修理したんだけど、直っていない。

欠陥抱える韓国製LNGタンクに条件付き運航案も

記事入力 : 2023/06/04 06:58

液化天然ガス(LNG)タンカーの「SKセレニティー」「SKスピカ」は現在も慶尚南道の巨済島沖に停泊している。両船舶は外国企業への技術使用料負担を軽減するため、韓国ガス公社と国内の造船・海運会社が共同開発した韓国独自のLNG貨物タンクである「KC-1」を採用し、2018年に建造したLNGタンカーだが、6年間運航できずにいる。出港したところ、「コールドスポット」(結氷現象)と呼ばれる欠陥が発生し、数回修理を行ったが、問題を解決できず、設計、製作、運航を巡り訴訟が長期化する事態となっている。

朝鮮日報より

この記事は比較的問題点がハッキリ分かるように書いてあるな。中央日報はダメダメだったけど。

4回にわたる修理を終えた今年初めの試験運航でも欠陥が発生し、ガス公社などはこれ以上性能改善は困難との立場だという。このため、水温が6度以上で気候が温暖な中東などの航路で条件付き運航は可能だと判断し、SK海運に運航を要請した。

朝鮮日報「欠陥抱える韓国製LNGタンクに条件付き運航案も」より

で、問題のある2隻については、「条件付きの運行ならOK」という話がでてきた。いやいや、それは不味いっしょ。

受け取れない

実際に、船主の方は「はっはっは、ご冗談を」という感じだったらしく、結果的に問題の2隻は廃船にする方向で話が進んでいる。

30日、海運業界によると、SK海運の17万4000㎥級LNG運搬船SKセレニティとSKスピカは最近、マレーシア・サバ(Sabah)州の連邦直轄領ラブアン(Labuan)に到着し、長期係留(船舶が運航を停止して停泊または係留すること)の手続きを進めている。

マレーシアのラブアンは船の係留地として有名だ。海運景気が悪くなると、この沖合に大型船が増える。船主が仕事が見つからない船を低コストで管理し、中古として売るためにここに送るからだ。こうして売られた船の多くは、バングラデシュやインドなどの廃船ヤードに送られ、解体された後、スクラップとして売られる。

朝鮮日報「「韓国型貨物倉」 SK海運のLNG船、一度も使わずに廃船になる」より

実は、船舶の運航をする場合には、港がその船を受け入れても良いか、ということを事前に停泊する港に確認する必要がある。

ところが、上述したような脆化の問題があるので、停泊中に爆発しかねないと、港側が難色を示しているというのが実情だ。船主としてはそんな船使えないので、受け取れるわけがない。

昨年1年間でLNGタンカーを120隻余り建造した韓国が貨物タンクの重要技術を持つGTTに支払った技術使用料は約1兆7000億ウォンに達した。造船業が好況になるほど、技術使用料も増える構造だ。

朝鮮日報「欠陥抱える韓国製LNGタンクに条件付き運航案も」より

GTT社に素直に技術使用量を支払う方針を採っていれば、そんなことにはならなかったのにねぇ。安全に対するお金を惜しむからこういうことになる。

事故船舶が直せない

なお、上で紹介したサムスン重工業が作った船の方なのだが……。不幸にも事故に遭ってしまったようだ。

「韓国型貨物倉」 残酷な事故…大韓海運LNG船の修理も難航

入力 2024.04.26. 06:00

韓国政府と韓国ガス公社、造船業界が野心的に開発した韓国型液化天然ガス(LNG)貨物倉(KC-1)を採用したSMグループ系列の船舶が事故で破損したが、資機材供給網が崩壊し、復旧が容易ではないことが確認された。

~~略~~

25日、海運業界によると、SMグループに属する大韓海運の子会社である大韓海運LNGの「SM JEJU LNG1」号は、2月17日未明、全羅南道莞島郡汝洲(ヨソド)郡汝嶼嶼(ヨソド)近くの海上で他の貨物船と衝突した。

~~略~~

SM JEJU LNG1号はこの事故で右側の貨物倉が損傷したが、損傷した貨物倉に海水が入り、大規模な修理を受けなければならない状況になった。

朝鮮日報より

うーん、残念だったね。

当然、壊れたのだから修理すれば良いのだが、この修理、製造したサムスン重工業に依頼したら「ゴメン」と断られてしまった。

実は、この形式のタンクを作るのに用いる金型などが既に廃棄されおり、対応できないのだとか。更にサムスン重工業が他の船を作るのに忙しいのでドッグが空いていないのだとか。

巨額の費用を投入して金型から作り直しても、この方式のLNG船の発注がなければ困ってしまう。廃船してスクラップにした方がマシだろう。

そもそもこの事故に遭った船を運航していたのは、大韓海運LNGという会社で、韓国ガス公社の委託を受けて運航していた。韓国ガス公社といえば、公営企業でかつこのKC-1方式を開発した会社でもある。

自分のところで開発した技術を使った船を自分で使っている状況で、他社は「ちょっと怖いから」と使うのを見送っている。だから、この技術を使っている民間企業は1社もない。実にガッカリの話だね。

記事で紹介されているKC-1方式のLNG船は4隻で、うち2隻は既に廃船濃厚。うち1隻は事故で廃船濃厚。最後の1隻は韓国ガス公社が使っているようだが、何かトラブルが起きて使えなくなれば、修理は難しい事が分かっている。

失敗は失敗として認め、さっさと次に進んだ方が良いよ。

コメント

  1. アバター Nobody より:

    その昔、東電のLNG火力発電所を見学したことがあります。
    「台風や悪天候となると、まず一番にLNGタンカーは東京湾に入れなくなります。」
    「LNGの貯蔵量は1週間分なので、悪天候が続くとなると大変です。」
    と説明がありました。

    同級生がLNGプラントに勤務しているとき、「何かあったら生きていないよ。爆発したらファイアーボールで半径300mは何も残らないから。地上のタンクに火が入りそうな時はとにかくタンクからLNGを抜き出して被害を少なくするだけさ。」と話しをしてくれました。幸いなことに同級生はそのような事態には遭わずに済んでおります。

    それらの話しからすると、欠陥LNGタンカーはどこでもお断りという判断は当然のことでしょうね。

    • 木霊 木霊 より:

      なるほど。

      気になって調べてみたら、LNGタンク絡みの事故ってあるんですね。
      過去に数件、結構大規模な爆発事故が。

      原発の事故も洒落になりませんが、LNGタンク火災も十分ヤバそうです。

  2. アバター 匿名 より:

    韓国の船は韓国で事故してください。
    他国に出向いて迷惑かけてはいけません。
    我が国には、侵入禁止でお願いしたい。

  3. アバター 山童 より:

    液化天然ガスって、そんな超低温で運ばねばならないのでしたか。大変だとは聞いていたけれども、そこまでとは。
    んで〜まぁ南小中華はどうでも良いすが。それって輸送船だけでなく、積み込みする港にも極低温化する施設が必要てありましょ?
    アシアに最も近い液化天然ガスて、ペルシャ湾のカタールてしたっけ、アルジャジーラの国、あそこにしか無いですね。
    ガス田があるだけじゃ話にならない事は記事を読めば解る。するとイランとイスラエルが衝突して、米軍が介入したときに空爆に巻き込まれたら、その回復はオイルなんかとは比べ物にならんですね。
    燃料あっても極低温にして、特殊な容器出ないと運べないんですから。
    いや、それはシャレにならないな。
    お隣さんはどうても良いけど、にわかに中東が不安になりました。

    • 木霊 木霊 より:

      天然ガスの搬送というのは結構厄介なんですよ。
      そういう意味では、ロシアがパイプラインで天然ガスを送る手法を採っている(液体にする必要がないのでお安くできる)のは、良いやり方なのでしょうね。

  4. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    外壁が凍るというのは、タンク外壁だと思ってたのですが、もしかしたら配管等だけでなく、船の外壁もヤバかったのか……と、廃船の報に接して思った次第です。

    低温環境下の金属の劣化については、
    https://www.shippai.org/fkd/cf/CB0011020.html
    リバティー船の脆性破壊

    LPGガスについては
    https://www.shippai.org/fkd/hf/HC0300001.pdf
    フランス フェザンのLPGタンク爆発火災 (1966年)

    が即座に思い出される七面鳥でした。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      僕の理解としては、デカイタンクを複数抱えている構造なので、船の外壁を切らないと入れ替えできないのでは?と。そうであれば廃船やむなしですな。

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