The Policeの中心メンバーだったStingが発表した
1985年のソロ・デビュー・アルバム
伝説の3ピース・バンド、ザ・ポリスを解散後、満を持してソロ活動を開始したスティングのファースト
アルバムにして大傑作、もう以前のようなポリス時代の姿はそこにはなく、ポリスの最終作品の
" シンクロニシティー "でみせたあらゆるジャンルを取り入れた独自の展開が多少面影として残っている
しかし、それにもましてパワーアップしたスティングの世界観は、もはやこのスティングでしか
なし得ない荒業といっていいだろう
簡単にいうとポップ性のあるスティング特有の浸透しやすいメロディに、ジャズ、レゲエ、ソウルなどを
織り交ぜ、しっとりと大人の香り漂う雰囲気を音としてうまく表現している
§ Recorded Music §
1 If You Love Somebody Set Them Free - セット・ゼム・フリー
2 Love is the Seventh Wave - ラヴ・イズ・ザ・セヴンス・ウェイヴ
3 Russians - ラシアンズ
4 Children's Crusade - チルドレンズ・クルセイド
5 Shadows in the Rain - シャドウズ・イン・ザ・レイン
6 We Work the Black Seam - 黒い傷あと
7 Consider Me Gone - コンシダー・ミー・ゴーン
8 The Dream of the Blue Turtles - ブルー・タートルの夢
9 Moon Over Bourbon Street - バーボン・ストリートの月
10 Frotress Around Your Heart - フォートレス・アラウンド・ユア・ハート
§ Personnel §
Omar Hakim - オマー・ハキム( Ds )
Darry Jones - ダリル・ジョーンズ( B )
Kenny Kirkland - ケニー・カークランド( Key )
Branford Marsalis - ブランフォード・マルサリス( Sax )
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そもそも、ジャズ畑のスティングがポリスの中では実現できない部分が多く、一気にやってみたいことが
玉手箱のように吹き出した感じがする
バンド時代もやっていたレゲエは引き続き顔をのぞかせるが、ジャズへの接近はプレイヤーの選択や
アレンジ面から強く現れている
後のアルバムに続く変拍子モノやジャズ・ポップのような味付けの曲、声高にいいたいことはしんみりと
したバラードの持ち込むところなど、後段のアルバム作りの原型となった非常に重要な作品である
時代のアイコンである彼が音楽の融合を目指し、多くの指示を集めるためポップに走ったことから
賛否両論を招いたアルバムだったように思う
" シンクロニシティー "ですでにその後のソロに近い楽曲を作り出していたので、容易に想像できた
とはいえ、どの曲も素晴らしい出来だと思う
ロック・テイストの" フォートレス・アラウンド・ユア・ハート "とか、その後の彼の詩の世界に度々
登場する忠実についての彼の心情、解釈を歌う" チルドレンズ・クルセイド "など、あまり語られることは
ないがスティングでしか聴くことのできない美しいメロディである
スティングは、メロディ・メーカーとして高く評価されているが、詩の世界はそれ以上に評価されるべき
アーティスト、そして、ジャズ・ミュージシャンたちとの共演は何の違和感もなく、見事に溶け合って
いて、いろいろ考えさせてくれるアルバムである
スティングにはポリス時代の" シンクロニシティー "という傑作アルバムがあるが、ソロでは、この
デビュー作と次作のライヴが最高傑作ではないかと思う
成功の要因は、バックを務める若手のジャズ・ミュージシャンの演奏による部分が大きい
特に、ケニー・カークランドのキーボード・プレイは秀逸で、バタバタと座を乱しがちなブランフォード
マルサリスのサックスまでしっかりと受け止めて、きっちりとまとめ上げている印象である
曲も名曲揃いで、中でも" バーボン・ストリートの月 "はスティングってロック畑の人なんだっけと
疑ってしまうようなダークなジャズ作品となっている
当時の世相を色濃く反映した" ラシアンズ "以外は、今聴いてもまったく古さを感じさせない