既にご存知の方も多いかも知れませんが、中の人は事業の一環としてマジック・バーを作る案があり、その際に法律周りのことについて軽く調べたのでここでシェアしたいと思います。

1つ注意事項として、私は法律の専門家ではなく、また最新の条例などを追っているわけではないため、実情と異なる可能性があります。詳しく知りたい方は弁護士等の専門家にご相談ください。

最初に言ってしまうと日本でマジックを仕事する際にぶち当たること法的問題は非常に多く、マジックバーもまた合法的に運営するのが難しい業種の1つだと感じました。

またマジック・バーの問題点と、ホッピング・スタイルの問題点は共通しているため、先にホッピングの話から始めます。

ホッピング・スタイルの問題点:

テーブル・ホッピング、或いは単にホッピングと呼ばれる形式は、名前の通りテーブルからテーブルへと回り、それぞれの卓でマジックを演じるスタイルとなります。

卓についてマジックをする上での問題点はただ1つで…

「接待に当たる」

これは後述するマジック・バーでも同じく問題となる要素であり、日本でマジックを仕事にする上での難所だと私は考えています。

日本で店側のサービスとしてスタッフがカウンター越し、或いはテーブルに同席しての接待を行うには風俗店の1号営業の許可が必要となります。そのため、この許可が無い店で、店舗側からギャラを貰ってテーブル・ホッピングをするのは法的に問題があります。

ホッピングを合法的に行うには:

最近、「ギャラなしチップオンリーのホッピングが増えている」とよく言われますが、これが合法的にホッピングを行う方法として最も簡単な解決策となります。
(※ギャラなしのホッピングを「流し」と呼ぶ場合もあるそうです)

要は、店舗側からギャラが出ていないければ、店舗のサービスではなく、たまたまその場に居合わせた人が客にマジックを見せ、その結果としてチップの受け渡しがあっただけで、これは接待に該当しないのでは?ということです。

ソープにおける行為が偶然突発的に起きたものだからセーフみたいな考えた方と同じですね(ぇ)

店舗側のリスクとして、マジシャンがチップ交渉をすることによって客が不快に感じ、集客が落ちることが挙げられます。そのため、今後はマジシャンを入れるにしても「チップ交渉NG」の店舗が増えるんじゃないかと予想しています。

マジック・バーにおける問題:

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

カウンター越しだから問題ない???

よく「カウンター越しにマジックを見せれば問題ない」という言説を見かけますが、昨今コンカフェがカウンター越しの接待により摘発されるケースが増えているため、カウンター越しだろうが1号営業の許可がなければ違法と考えて問題ありません。

マジック・バーが摘発されないのは単純に規模が小さすぎて後回しにされているか、泳がされているだけの可能性が…あるかも知れません。

噂ではマジック・バーのお客さんに警察官もいるそうで、彼らが何も言わないからセーフ、みたいな話もありますが、警察官は意外と法律に詳しくないため違法と知らないだけの可能性がそこそこ高いです。

ちなみに、警察官は一般的な国民とは異なり、違法行為を発見した場合に通報の義務があるので、法律に詳しい警察官がマジック・バーに来た場合は問題にされることが考えられます。

ついでにいうと、電波法に違反した道具も、もし警察官がその存在を知った場合は通報しなければらないため、もし「公務員」を名乗るお客さんがいたら、全て合法的に行える演目にしておいた方がお互いのためになります。

クロースアップ・マジックを行うためには:

既に何度か出ている、「1号営業」の許可が必要になります。

これさえ取ってしまえば、店内のテーブルを回ったり、カウンター越しにクロース・アップ・マジックを演じるのも全て合法です。

ただ、1号営業にもメリット・デメリットがあります。

風俗店の1号営業について:

接待を伴う飲食店の営業に必要な許可ですが、これを取得すると幾つかの問題が生じます。

1号営業のメリット:

既に述べたように「カウンター越し、或いはテーブルに同席して個別の客にクロース・アップ・マジックを見せられる様になる」、これに尽きると思います。

1号営業のデメリット:

申請の面倒臭さは取り敢えず置いておくとして、ざっと以下のデメリットがあります。

  • 0時以降の営業ができない(0時以降の酒類の提供ができない?)
  • 18歳未満の立ち入りが不可になる(客・スタッフ問わず)
  • 近隣に学校や病院があると許可が取れない
  • 店舗の設備や広さによっては許可が取れない

1号営業と0時以降に酒類を提供するための許可は併せて取ることができないため、深夜営業が不可能になります。
(自治体によっては1時すぎまで提供可能みたいなところもあります)

風俗店は青少年が立ち入れない様な配慮が求められ、客・スタッフ問わず18歳未満を入店させると罰せられます。また、自治体によってまちまちですが、半径 〇〇 m 以内に小中学校や大きい病院があると1号営業の許可が取れないようにしているケースが多い印象があります。

(※昼にカフェとして営業する等、事業形態が異なる場合、その時間だけ未成年が入店できるケースもあるそうです。ただ、その際はクロース・アップ・マジックを見せることはできないと考えられます)

合法的にマジック・バーを運営するには:

ライブハウス形式:

最も簡単な方法は、おそらくライブハウスと同じ形式にすることです。

クロース・アップ・マジックが問題になるのは、その性質上、個別の客に見せることになり、それが接待の提供と見做されるからであって、不特定多数が一斉に見る形式にすれば通常の飲食店の営業許可で運営できると推測されます。

店内にステージ(と認識されるもの)を設置し、時間で区切ってステージ・マジックを行うスタイルがベターですね。

これは飲食店のイベントでマジックを見せる場合も同じで、その店舗が1号営業を取っていなければホッピングはせずに、ステージ(或いはパーラー)を来客者に一斉に見せる形式だけにすべきだと言えます。

店舗側が知らない場合もあるため、確認し場合によっては提案もしておくと信頼を得やすいかも知れません(余談)

1号営業の許可を取る:

未成年の客を必要とせず、且つ営業時間が0時までで良く、立地や設備的に許可が取れるのであれば1号営業を取ってしまうのも手です。

要検討:

1号営業を取らずにマジック・バーでクロース・アップ・マジックを見せる方法を考察してみました。

※ 繰り返しになりますが、私は法律の専門家ではないため実際に可能であるかは不明です。もしやるならまずは専門家と相談してください。

ステージを設置する:

既に述べたように、ステージを設置し不特定多数の客に対し一斉に見せるのであれば接待にあたりません。

で、更にここから発展させると…

雇ったマジシャンにステージをやってもらい、ギャラもステージでの演技に対してのみ払うという内容の契約書を作成し、クロース・アップ・マジック(≒ホッピング)は空き時間に無給でやっているという体裁にすれば、接待に該当しないのでは?と考えました。

この場合、時給を出していると都合が悪いわけですが、私の知る限りマジックバーでの出演は日給であることが多く、もしかするとこの辺の問題をクリアするためにそうなっている可能性がありますね。

なお、店主はこの方法が取れないので、自分のお店でクロース・アップ・マジックを見せたい場合はやはり1号営業を取るしか無いんじゃないかと思われます。

逆に言えば、オーナーではなく雇われであれば、マジックを見せられるとも言えます(実際にこれが合法であればですが…)

ちなみに、ホテルなどのイベント、ディナー・ショーや結婚式で ステージ & ホッピング、特に後者が許されているのも恐らくギャラがステージのみに発生しているという体裁を取っているからかも知れません。

実際にこれで違法にならないのかは不明なので、実際にやる場合は法律に詳しい人に聞いてみてください(まる投げ)

まとめ:

日本は法律的にメディアやステージ以外でのマジックがほぼ違法かグレー、或いはできる環境が非常に限られるため、合法的にマジックで稼ぐのが難しいと言えます。

電波法の問題もありますし、コンプライアンス重視が叫ばれる昨今、いよいよ本格的にマジシャンの議員を擁立して法改正を行わなければ、今後よりマジシャンが稼ぐのが難しくなってくるかも知れません。