ダニング=クルーガー効果曲線図の嘘と真実:あなたはこの図信じますか?


知識・能力の浅い人ほど自信過剰に陥りやすいとするメカニズムを説く心理学成果として知られるダニング=クルーガー効果。しかし翌々深堀してみると意外な事が解ってきました。




ダニング=クルーガー効果とは曲線とは何か?

ダニング=クルーガー効果は、1999年にコーネル大学のデイビッド・ダニングとジャスティン・クルーガーが報告した心理現象です。

ある実験結果から、ダニングとクルーガーは、能力の低い人は自分の能力を客観的に評価できないため、過大評価してしまうという結論を導き出しました。

Ⅰ無知の山は一般には{馬鹿の山」と言われる事が多いです。Ⅳ持続可能性の高原は他に様々な呼び名があります

上の図は世に広く知られるダニング=クルーガー効果の曲線図です。

その図が語る特性とは

  • Ⅰ:無知・自信無しの状態からわずかな経験で【無知の山】に向かって自信が急上昇
  • Ⅱ:しかし直ぐに世の広さを知り自信を急速に失い【絶望の谷】へと突き落とされる
  • Ⅲ:それでもその後地道に努力を重ねる事で【啓蒙の坂】を上り続ける
  • Ⅳ:やがてその自信は確固たるものへと確立され【持続可能性の高原】へと達する

という訳です。

みなさん、どうですか?これ納得出来ましたか?ご自身で経験ありますでしょうか?

私はこの図を見たとき「おお!共感・納得できる!」とは思いませんでした

ではどう思ったかというと「へえこういうモノなんだ~。でもう~ん、何か極端?」というのが正直なところです。正直言って、「そんなに初心者って自信過剰な人ばっかりかなぁ」という疑問がどうしても付き纏いました。

で、この記事の私の最終結論を先に書いてしまうと「このグラフはある特定の条件下でしか適用できないものに過ぎないだろう」という少し残念な感じのものなのです

以下の項目でどうしてそうなったのかをご説明いたします

ダニング=クルーガー効果の真実

一旦冒頭のダニエル=クルーガー効果曲線図の事は置いて、一次ソースであるダニング氏とクルーガー氏の論文を見て見ましょう。下記の論文掲載サイトから原文の和訳を全文読む事ができます。

https://www.researchgate.net/publication/12688660_Unskilled_and_Unaware_of_It_How_Difficulties_in_Recognizing_One’s_Own_Incompetence_Lead_to_Inflated_Self-Assessments

と言ってもこの和訳版を読むのは和訳精度的にオススメできたものではありません。

しかしどんな内容についてふれているのかは何となく分かります。以下に要約します。

論文名『未熟でそれに気づかない:自分の無能さを認識することの難しさがいかにして自己評価を過大評価してしまうのか』
  • 被験者
    コーネル大学の学生
  • テスト内容
    ユーモア、論理的思考、英文法の3つの分野におけるスキルテスト
  • 自己評価
    テスト後、自分の成績が全体の中でどの程度かを自己評価
  • 結果
    能力の低い学生ほど自己評価が高く、能力の高い学生ほど自己評価が低い傾向が見られた
    特に、能力が低い学生は、自分の能力を著しく過大評価していた

この実験結果から、ダニングとクルーガーは、能力の低い人は自分の能力を客観的に評価できないため、過大評価してしまうという結論を導き出しました。

この心理現象は、彼らの名前から「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれるようになりました。

ところでこの論文には冒頭のダニング=クルーガー効果の曲線図は全く出てこないのです。

この論文に存在する図は下記の5点のみなのです。

https://www.researchgate.net/publication/12688660_Unskilled_and_Unaware_of_It_How_Difficulties_in_Recognizing_One’s_Own_Incompetence_Lead_to_Inflated_Self-Assessments  より引用

この図からはどうやっても冒頭のダニング=クルーガー効果の曲線図は出来そうにはありません。

ダニング=クルーガー効果の曲線図は2次創作なのは確実

ダニング=クルーガー効果は、心理学の研究成果として非常に興味深いものですが、その情報が広まる過程で、以下のような偏りが生じていると考えられます。

  • 簡略化された説明: 複雑なメカニズムや実験内容が、理解しやすいように簡略化されて伝えられることが多い
  • 誇張された表現: 興味を引くために、効果が誇張されたり、極端な例が取り上げられたりすることがある
  • グラフの独り歩き: 元の論文には存在しないグラフが、ダニング=クルーガー効果を説明するものとして広く使われるようになり、誤解を生んでいる
  • 情報の断片化: ダニング=クルーガー効果に関する情報が、断片的に拡散され、全体像を理解するのが難しい

現にこの記事に載せた冒頭のダニング=クルーガー効果の曲線図も筆者のお手製です。またひとつこの図が新たに2次製作されたという訳です。

推測:ダニング=クルーガー効果の曲線図の作成意図

ダニング=クルーガー効果の曲線図はその情報が広まる過程で内容が簡略化、歪曲化、誇張された中で生み出されたものであるという見解を示しましたが、それでも全く役に立たないデタラメとは私は思いません。

この図が何を意図して作られたのかを考えればおのずと図の真意は見えて来ると思うのです。

では一体何を意図してこの図は2次創作されたと考えられるか?

  • 可能性1:「馬鹿の山」という表現が流通している所からは差別的なレッテル張りの意図?
  • 可能性2:あえて極端な例を見せる事で強い啓蒙や警告をしたい?
  • 可能性3:ダニング=クルーガー効果を解りやすく説明しようとするあまりの誇張?

この辺りが考えられます。

可能性1は私見ですが元の論文でも「未熟者」「無能」等の差別的な言葉がでて来ておりやや偏見や差別のニュアンスを研究者自体からも感じます。2次創作者が偏見・差別に利用したというよりも元の研究者のニュアンスをくみ取った可能性もあるかもしれません。

可能性2は「にわか」なのに全てを知ったかのような態度の人に対する啓蒙や警告をしたいと思ったのではないかという事です。

可能性3は記事にインパクトを与えたい2次創作者の誇張などが考えられます。

私見結論:ダニング=クルーガー効果の曲線図の捉え方

以上の可能性を考慮するとダニング=クルーガー効果の曲線図はこのように捉えるのが適切なのかもしれません。

  • この図を初心者に対する偏見・差別に使うのは厳禁
  • 「にわか」なのに全てを知ったかのような態度の人に対する啓蒙や警告には多少有効
  • しかしこの図の根拠はやや不明瞭であり過信は禁物

特にsnsでレスバになった時などにドヤ顔でこのダニング=クルーガー効果の曲線図を使って相手を非難したり指摘するとこのグラフの信憑性を問われ返されるという思わぬ反撃を受けるかもしれないです。くれぐれも取り扱い要注意な代物だという事を皆さまの安全のために強調したいと思います。

みなさんはどう思われましたでしょうか。



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