3月8日(土)、映画「35年目のラブレター」15時45分からの上映回を観に、初めての「T・ジョイ横浜」へ。
当初この映画を観るつもりは全くなかったのですが、公開日直前になって偶然、物語の舞台が奈良、音楽担当が岩代太郎と知り、俄然行く気に。
ネタバレは本意ではないので詳細を記すのは控えますが、主人公の保(笑福亭鶴瓶&重岡大毅)の苦難に満ちた生い立ちとそれに伴う苦悩を描くのみならず、保の妻皎子(原田知世&上白石萌音)や夜間学校の教員・谷山(安田顕)等がそれぞれに抱く心の奥底の哀しみや傷についても、但し決してあざとくなること無しにさりげなく触れられていて、それが物語に一層の奥行きを与え、それでも皆が前向きに生きていく姿が、静かに心に染み通るような感動を呼び起こしていたように思います。
また、芯に凜としたものを秘めつつもふわりとした柔らかさや包み込むような優しさと清冽さを纏った皎子像を醸し出してみせていた、原田知世と上白石萌音の何とも魅力的だったこと。
谷山役の安田顕や、皎子の姉佐和子役の江口のりこ、保と皎子の長女浩実役の徳永えり、保を雇い入れ親身に面倒をみた寿司職人逸美役の笹野高史といった実力派俳優も、物語を更に引き締めていました。
過剰になることなく抑制されながらも美しい筆致の岩代太郎の音楽も期待どおり。
そして時折挿入される、鹿が鹿せんべいや草を食む姿や、若草山、浮見堂、平城宮跡、薬師寺、わけても興福寺五重塔と奈良ホテルを遠景とした鷺池の美しい夕景といった奈良の風物の映像が、心に安らぎをもたらしてくれました。
この上映回では、終映後に丸の内TOEIでの舞台挨拶の模様のライヴビューイングが。
鶴瓶・原田・重岡・上白石の主要キャスト4人と塚本監督、及び主題歌を担当した秦基博が登壇し、時にユーモアも交えつつ親密な雰囲気のトークを展開。
主要キャストにとっても、この作品の温かい空気感を制作現場で共有できたことは、得難い想い出として残っているようです。

全般ランキング