追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

In a sweet pale shade

真っ黒い絵の具
粉団に混ざり込んだ
妙に艶めかし過ぎな


ソフトクリームを
溢して破茶滅茶に
塗りたくられた空の下


正気を取り戻した
見慣れる緑の景色
いつか途切れたままの


白昼夢の情景と
リンクして不自然な
鮮やかさを帯びる


少しだけ先の未来に
踏み出し歩く感覚


頭ではくっきり
捉えているようで
曖昧さは否めない


丸裸で森の中を
彷徨っているようで


無意識に進めば
このまま望みの
場所まで辿り着けそな


操られているのか
そっちの方向へ
いやそれとはまた違う


気持ちは宙に
ゆらり翻し返した踵


冷やかな風が
そおっと身体を撫ぜ
水面を騒がせ始める


いつも陽の昇りを
迎える丘の池畔に立ち


僅かばかりの
濃い光が零れ照らす
眼下の田舎町を眺め


道草をくってまた
この風景から抜けだし
食い倒れ人形宛ら


毎度の工事現場
粧し込み佇むついで


本当はもっと
気儘放題にやりたい
心を密かに押し殺し


皆に愛想を振り撒く
滑稽な自分の姿を
やるせなく思い浮かべる

























※In a sweet pale shade
…甘やかな淡い影色で

Fly wrapped in spring

海月のように
日和に揺られ
過ごし流される又


緩んじまった
頭のネジまで
ふらふわする季節


おっとりとした
陽気と涼風に
抱かれどこへやら


俺の空っ穴な心は
みるみると暈け
際限なく薄まる


重い着包み抜けて


夢宙に漂うんだ
稀に見る気持ちよさ
ふっと運ばれほら


なにやら時折
眼に浮く綿毛の種に
なっちまったみたい


沈んでる訳でも
虚しいともちと違う
額にちらつき游ぐ雲


いつかの眩い夏まで
ゆったりぶらり 
誘ってくれんのかな


いつまでもこの儘
浸っていたい丸ごと


別に理由なんて今は
摑み所のない自由に
委ねているだけなのさ
























※Fly wrapped in spring
…春に包まれて飛ぶ

As the flower pieces fall

ちるはら
ふっと顕れる眼前に


ひらちら
宙で瞬くように翻し


するいら
浮き廻り漂いそっと


紛れ込む
斑点模様の黒絨毯へ


零れ静かに
降りてゆく花片達


傍えだけの桜並樹
柵に沿い林道の半ば


立ち留まり眺め
その儚く麗しい姿を


辺りに立ち込める
甘い香りと
幻景が誘う束の間


夢心地で見詰めた
どこへも届かぬ想い
淡紅の彼方に昇る


ぴりりと苦い
踊る紫煙と共に
当てなき旅路の途中


朽ち果てるまで
この身がやがて
咲き誇る無尽の春に
いつまでも溺れていたい
























※As the flower pieces fall
…花片の零るままに