60歳を過ぎた頃から
人の為になる事がしたいという思いがあり
たまたま寄ったコンビニの求人誌を見て、
ココロは揺れた。
"人工透析①送迎ドライバー募集"
現職に比べはるかに安い給料と
2交替制のシフト業務。
①主に血液透析をメインに週3回通院し、
1回/4時間〜5時間かけて血液を浄化する。
のちに知った車椅子患者さんを含め、
240名以上の自宅を覚える事、
そして、ハイエースを操りながら
履行できない狭き道をも突き進む
テクニックが必要。
だが4トントラックから
Mercedesの6リッターまでの運転経験が
私の背中を押してくれた。
さっそく後日面接の予約をし
あえてスーツなど着ず
白いポロシャツにチノパンという格好で
実技試験に望んだ。
そして、
人の為に尽力したい思いを面接時にぶつけ
ようやくそれは終わった。
"いつから働けます?"
即決だった。
職場の有給休暇を使い切り退職をしたが
新天地では患者さんの顔や名前・場所も
なかなか覚えれず休日息子を連れ出しては
住所を元にルートを頭に叩きこんだものだ。
イメージ
3年も経つと親しくなった患者さんから
車中惜しげも無く
過去の話をしてくれる様になった。
◯亭主関白なご主人がアルツハイマーになり、
献身的な看病の末に死別。
自身が永年の不規則で慢性腎臓病を発症し、
人工透析を開始。
◯バブル期、家庭をかえりみる事などせず
毎晩の接待。ビール、日本酒、ワインなど
暴飲暴食をする。
戸建て1軒分程の浪費ののちに糖尿病を発症。
症状が悪化し片足を切除。
様々な人生経験を聞くが何故か皆明るい。
帰り間際に元酒屋の大将は
"気ぃつけて帰りや"と一言。
ご婦人を送り届け、降車の際に一言。
「普通でいいのよ、普通で」
帰路の車中その言葉が何度も
頭の中を木霊した。