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『麒麟がくる』第17回「長良川の対決」視聴レビュー(2020年5月10日:NHKBS4K)

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『麒麟がくる』第16回「大きな国」視聴レビュー(2020年5月3日:NHKBS4K)

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『麒麟がくる』第15回「道三、わが父に非ず」視聴レビュー(2020年4月26日:NHKBS4K)

https://ameblo.jp/mituko-naotora/entry-12592495356.html

 

 

 

 …『麒麟がくる』前半の紛れもない牽引力となっていた本木雅弘演じる斎藤道三退場後、初めて迎える回である。前回「長良川の対決」は予想通りネット上でも大いにバズり、本木道三の最後に花を添えた。その反面、道三・高政父子の大将同士が直接相まみえるという、あまりに漫画チックな展開を失笑する反応、ラストの高政に寄りかかる最期を「抱擁」とするやや的外れな評論も見受けられ、そして視聴率も、節目となる回としては、また新作ドラマが極端に数少ない昨今の事情にもかかわらず、思いの外伸びなかった…これは事実である。

 そして、遂に来た放送一時中断の公式アナウンス。

大河ドラマ「麒麟がくる」放送一時休止のお知らせ
(2020年5月15日 『麒麟がくる』NHK公式サイト)

https://www.nhk.or.jp/kirin/news/news_200515.html

 前回記事の通りで、収録再開が早くとも6月末頃になる以上(5月末に緊急事態宣言が明けたとしても、約一か月は収録準備に割かれることになるのだ)、やはり放送自体の再開は7月末か8月だ。予定通り東京オリンピック開催が成されていた際の放送数よりも、更に放送回が減らされる可能性も高い。

 脚本の変更、計画外に及ぶ撮影スタッフ及び俳優の拘束、大人数を集めねばならない撮影手法に及ぼされる致命的変化など…正直なところ今後の『麒麟がくる』が、思い描かれていた通りの内容となって映像化されるかどうか…これがかなり微妙になった。

 不運である。そして、無念である。

 私には十兵衛光秀が、明智荘を去らねばならなかった時の気持ちが、必要以上にわかってしまった…。

 



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 明智荘を脱出し美濃を落ち延びた、十兵衛(長谷川博己)とその一族たち。これに駒(門脇麦)菊丸(岡村隆史)が帯同する。伊呂波大夫(尾野真千子)に牽引されて、朝倉義景(ユースケ・サンタマリア)のいる越前に辿り着く。

 義景と面会する大夫と十兵衛。ここで大夫の意外な出自が明らかにされる。恐らくこの先も、大夫の身の上に纏わる伏線が用意されているに違いないであろうから、これは放送回を観てのお楽しみ、ということで…。

 義景は細川藤孝(眞島秀和)の書状もあって、十兵衛ら明智の者らを食客として匿うことを承諾するが、十兵衛は義景からの金銭的援助は断る。大夫は援助を受けておけば良いのに、と十兵衛を諭すものの、十兵衛は義景より身を匿ってもらう以上の助けは、理由がないと頑なに断るのだった。

 越前領内のあばら家に仮の住まいを設ける十兵衛ら。ここまで行動を共にした駒は、
牧(石川さゆり)と話すうちに幼き頃に火災から我が身を救ってくれた美濃・明智の武士は、十兵衛の父・光綱であることを知る。

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 一方、尾張では、織田信長(染谷将太)が弟である信勝(木村了)の重臣である柴田権六勝家(安藤政信) より、主君・信勝が改めて美濃を配下として掌握した斎藤高政、および駿河の今川義元(片岡愛之助)と通じ、兄・信長を「除く」動きがあることを注進する。主君を裏切った権六に、自ら首を刎ねることも示唆した信長だが、権六は怯まず、たとえ命が掛かっていようとも尾張を案じて事ここに至った旨を粛々と述べる。

 
帰蝶(川口春奈)は信長に、まず信勝に会ってみることを提言する。但しこれは兄弟の対話を意味していなかった…帰蝶は、先にも謀反を起こして兵を多数失ったにもかかわらず懲りない動きを見せ続ける信勝に、会ったうえでどう「始末」するのか、その場で「決めれば」良いと諭す。

 



 先に斎藤高政(伊藤英明)が病と偽って弟達を暗殺したのと同じく、やはり病を装って信勝をおびき寄せる信長。毒の入った湧水を献上品として信長に差し出す信勝。全てを看破していた信長は床の中にすらおらず、それどころか最初から病と称して信勝を殺す意図があったことをあからさまに告げる。

 そして幼き頃より、
母・土田御前(檀れい)の愛情と、織田家の若君としての称賛を集めていた信勝を妬ましく思っていたことをまたも赤裸々に語る信長。対する信勝も、卓越した行動力で次々と尾張の支配を広げていく信長に嫉妬していた本心を明かしてみせる。

 我らは似た者同士だ、と語る信長は、献上品の湧水に毒が含まれていたことを把握した上で、信勝にその水を飲めと命令する。怯えた表情を見せる信勝だが、信長の狂気の表情は収まることは無い…別室で待つ土田御前もただならぬ事態を予感し狼狽するが…時既に遅く、信勝は無念の表情を見せる仁王立ちの信長の前で、息絶えていた…。


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 今回の見どころは2か所…兄・信長が義龍こと高政の「仮病の計」にて弟を呼び寄せて事を決しようとするのに対し、斎藤道三が得意とした毒殺を自ら試み迎え撃とうとする弟・信勝…この辺りは池端俊策の脚本の妙の極致と言って良い。

  またこの池端脚本を体現して見せる、あたかも「毒婦」ではないかと思わせる様な帰蝶の策略家ぶりを
川口春奈が、そしてこの帰蝶に導かれ、冷徹な戦国の覇者として徐々に開眼していく信長を染谷将太が…とても魅力的だ。特に染谷将太の、ピュアさと狂気を孕んだ信長ぶりは、得てして見ものである。

 …次回はまたも斎藤高政(義龍)が登場、京に上らんとする信長を暗殺せんとする、歴史的事実とされるエピソードを中心にした回となる模様である。