おやくそく(3)

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 そう、いつもの幾ヶ瀬とは何かが違う。

 圧倒的にツッコミにキレがないのだ。


 だからといって心配する様子もないのは相変わらずか。

 シレッとした表情で有夏は紙面に視線を落とした。

 放っておくと「エナジー切れ」になるまで、またゴロゴロとマンガを読むのだろう。


「あのさぁ、有夏……」


 寝転がる有夏の傍らに座り込んだ幾ヶ瀬。

 お茶で濡れた唇を見つめながら、ぽつりと呟いた。


「有夏はいつか……俺から離れてくの?」


「は?」


 あまりに唐突な言葉に、有夏が雑誌から顔を上げる。

 大きな目を見開いて、ポカンと口を開けて。これは見慣れた間抜け面だ。


「もぅ……何か俺、ツラすぎるんだけど? 有夏がちゃんと大学に行ってたなんて」


「はぁ?」


「引きこもりで学校どころか、人と会話なんてできない有夏なのに……」


「はぁ?」


「おやくそく4」につづく
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