きたなくても日本が気楽でよろしく~文豪からの手紙③ | 便箋らぼ(時々切り絵ボトル)

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欧州に来て金が無ければ一日も居る気にはならず候(そうろう)。
きたなくても日本が気楽でよろしく候。
(夏目漱石より妻、鏡子へ 明治33年10月22日)
 
117年前の今日(明治33年10月30日)、夏目漱石はロンドンにいました。
9月に横浜を出て一昨日の夜ようやく留学先ロンドンに到着、昨日は散策に出るも、すっかり迷子になってしまって散々。
長旅の疲れもあって、今朝は10時頃までベッドに入っていたそうな。
 
一週間前には他の留学生と一緒にパリに滞在、エッフェル塔に上ったり、パリ万国博覧会を見物したり。最先端の都市パリの街並みに圧倒され、エッフェル塔の威容に度肝を抜かれ、
興奮ぎみに東京の妻、鏡子に手紙を書きました。
 
『「パリス」に来てみればその繁華なること、これまた到底筆紙の及ぶ所にこれ無く、
なかんずく道路家屋の宏大なること、馬車、電気、鉄道地下鉄の網のごとくなる有様
まことに世界の大都に御座候。
(略)
名高き「エフエル」塔の上に登りて四方を見渡し申し候。
これは三百メートルの高さにて人間を箱に入れて綱条にて吊るし上げ吊るし下す仕掛けに候』
 
ところが、その同じ手紙の追伸として書かれたのが冒頭の一文。
大都市パリの繁栄に驚嘆し圧倒されながらも、その裏にある拝金主義や科学万能主義に違和感を抱いてしまう、庶民派の漱石先生なのでした。
 
この後ロンドンでの留学生活中、漱石は妻、鏡子に宛てて頻繁に手紙を書き送っています。
曰く、日本が恋しいの、ハゲを治せの、入れ歯をしろ、下らない小説ばかり読むな、云々。
つらつら読んでいると大変面白いのですが、それはまた改めて。
 
写真は「秋色にはえて」便箋(2012年日本ホールマーク社より発売)
 
 
今日の便箋らぼ*は夏目漱石の手紙と、カミヤ・ハセ(T.Hasegawa)デザイン、秋の便箋のご紹介でした。
 
※手紙の文面は読みやすいように表記を改めました。
 
 
 

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