ロック探偵のMY GENERATION

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Sepultura, Guardians of Earth

2024-05-12 22:03:58 | 音楽批評


今回は、ひさびさに音楽記事です。

前回、過去記事ということで、スリップノットについて書きました。
ジェイ・ワインバーグ脱退後にスリップノットに新ドラマーとして加入したのが、セパルトゥラのエロイ・カサグランデだったということなんですが……そこで名前が出てきたついでということで、今回のテーマは、セパルトゥラです。


セパルトゥラは、ブラジルのメタルバンドです。

前回の記事で書いたとおり、活動終了を決定し、フェアウェルツアーに臨むところです。
近年、大物アーティストでそういう話がよくあるわけなんですが……しかし、セパルトゥラの場合、そんなに高齢のバンドというわけではありません。結成は1984年。メンバーチェンジで若返ったりもしていて、現ボーカルのデリック・グリーンはまだ50歳ぐらい。年齢的な問題で引退ということではないでしょう。カサグランデの脱退はフェアウェルツアーのリハが始まる3日前だったといいますが、そういったところから考えると、バンド内に何かごたごたがあって結束を保てない状態だったのかとも思われます。まあ、推測の域を出ませんが……


このセパルトゥラというバンド、なかなか私の琴線にひっかかるものがありました。
ツボをおさえているというか……そういうところがあるのです。
それゆえに、グローバルなメタルソサエティでリスペクトを受けてもいるようです。
それを示すのが、コロナ禍に行っていたSepalquarta という企画。
ゲストを迎えて過去に発表した曲を再録するという企画なんですが、ここに参加しているゲストたちが非常に豪華なのです。以下、いくつか例をあげましょう。


このときはまだメガデスにいたデヴィッド・エレフソンを迎えて。

Sepultura - Territory (feat. David Ellefson - Megadeth & Metal Allegiance)

エレフソンのシャツに日本語で「ロックンロール」と書いてあるのが気になりますが……


モーターヘッドのフィル・キャンベルを迎えて。

Sepultura - Orgasmatron (feat. Phil Campbell | Live Quarantine Version)

レミー・キルミスターがプリントされたクッションが泣かせます。


アンスラックスのイアン・スコットを迎えて。

Sepultura - Cut-throat (feat. Scott Ian - Anthrax - live playthrough | June 17, 2020)

モーターヘッド、メガデス、アンスラックス……いずれも、このブログで真にリアルなメタルバンドとして取り上げてきました。こうした顔ぶれから、セパルトゥラというバンドがワールドワイドな存在であるということだけでなく、信頼に値するアーティストであることが伝わってくるのです。


もう一曲、Trivium のマット・ヒーフィを迎えたSlave New World。

Sepultura - Slave New World (feat. Matt Heafy - Trivium)

おそらくこのタイトルは、Brave New World のもじりでしょう。シェイクスピア劇からの引用で、ハクスリーが書いたディストピア小説のタイトル。それをモチーフにして、アイアン・メイデンやモーターヘッドといった名だたるメタルバンドが曲を作っているというのをこのブログでは紹介してきました。
セパルトゥラは、彼ら一流のセンスで、それを Slave New World=“奴隷たちの新世界”として歌ったわけです。こういうところが、つまりは「ツボをおさえている」ということなのです。


ちなみに、マット・ヒーフィはミドルネームを“キイチ”といい、日本出身のミュージシャンです。生まれは山口県岩国市。
ここで日系の人とコラボしたのはたまたまかもしれませんが……しかしセパルトゥラは、日本に浅からぬ関心をもっているようなふうもあります。

たとえば、日本の和太鼓を取り入れた曲があったりします。
日本の和太鼓集団「鼓童」とコラボした「かまいたち」です。

Kamaitachi


そして、日本への関心ということでは、こんな曲もありました。
Biotech Is Godzilla。ゴジラソングということで、このブログとしてははずすことができません。

Biotech Is Godzilla

どういう経緯でかはちょっとよくわからないんですが、この曲はデッド・ケネディーズのジェロ・ビアフラが制作に加わっているらしいです。
デッド・ケネディーズといえば、パンク/ハードコアの方面でアメリカ代表ともいうべき存在。先述した大物メタルバンドだけでなく、デッド・ケネディーズまでがからんでくる。いかにセパルトゥラがすごい奴らであるかが伝わってこようというものです。

スラッシュメタルのシニシズムと、パンクのラディカリズム……そこに通底する透徹した目。そして彼らは、突き放すシニシズムだけではなく、闘争するアティチュードももっています。
そんな彼らのスタンスが凝縮されたような一曲がGuardians of Earth です。

Sepultura - Guardians of Earth (Official Music Video)

「地球の守護者」というこの歌は、アマゾンの森林破壊を告発する内容。ブラジルのバンドである彼らだからこそでしょう。
MVは、まるでレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンを彷彿させるようなものに仕上がっています。時代を超え、ジャンルを超え、国境を超えるスピリッツ……セパルトゥラは活動を終了しますが、そのスピリッツが消えることはないでしょう。




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