何しろ、時間がなかったからなぁ~
言い訳のように、リュウタが答える。
「時間?」
そうか?
何で、時間がなかったんだ?
裕太には、今一つわからないけれど、それよりも…
「この手前って、どこ?」
リュウタに向かって、尋ねる。
「すぐ近くだよ」
リュウタは曖昧に、そうか耐えると…すぅ~っと、裕太から
離れる。
「悪いが…ボクはこれ以上、キミとは付き合えないんだよ」
いきなりリュウタが、そう切り出す。
「えっ?」
それは、どういうこと?
裕太はあわてて、リュウタの後を追いかける。
リュウタの様子が、なぜか勢いがない。
「どうしたの?」
裕太はリュウタの背中に向かって、声をかける。
『いや、大丈夫だ』
そう答えるけれど…その答えに反して、長い胴体がダラリとして、
とても疲れたように見える。
(おかしいなぁ~やっぱり、さっきの脱出が、よくなかったのか?)
裕太は、リュウタの様子をうかがう。
「リュウタ…どこに行くの?」
ふいに不安に駆られる。
このままリュウタが、どこかへ行ってしまって…
二度と会えないような気がしたからだ。
『どこにって…洞窟に戻るんだよ』
ムリに明るく言ってみせるけれど…
どうもそれは、うまくいっていないようだ。
「もう少し、一緒にいてよ」
不安な気持ちが、ドンドン裕太を侵食していく。
(まさか、リュウタ…)
これで、永久の別れになるのではないか、と裕太は心細く
なってきた。