邦画アクションだけでなく、世界的に活躍した故・千葉真一主演の『地獄拳』シリーズ第一弾。

甲賀探偵事務所を構える私立探偵の甲賀龍一は探偵職では食べていくことができず、裏稼業として暗殺者を請け負っていた。
龍一は甲賀忍者宗家24代目の嫡子であり、師の白雲斎より厳しい修行の末、忍術の達人となったが、現代社会での忍術の必要性に疑問を持ち、自立のため探偵を始めるものの借金苦にあえいでいる始末であった。

そんな中、龍一は見ず知らずの美女恵美から唐突に依頼をうける。
それは刑務所に収監されている死刑囚、桜一郎を脱獄させること。
犯罪であり報酬も少ないことを理由に断ろうとする龍一であったが、更なる報酬の上積みを提示されると、火の車な自身の現状を垣間見、これを引き受けることに同意する。

体術を駆使してなんとか桜を脱獄させることに成功させると、二人は恵美が示した待ち合わせ場所へと急ぐ。

するとそこで二人を待っていたのは恵美だけでなく、強面な男二人。
恵美を使って龍一をスカウトしたという嵐山という男は元警視総監であり、傍らにいる男、隼猛は嵐山の部下で元麻薬課の特捜刑事であった。

二人は巨大な麻薬シンジケートを追っていてその最中で多くの部下たちが殉職し死んでいった責任を取り、警察を辞職。
しかし独自に打倒の機会を探っており、今回龍一、桜、隼らをスカウトして麻薬組織の壊滅を狙っていたのである。

改めて嵐山から組織の壊滅のための協力依頼をうける龍一。
気乗りしない龍一は先の報酬金だけ貰い断るつもりでいたが、依頼完遂の際には倍額の報酬金といわれ、借金返済のため渋々請け負うのだった。

シンジケートのボスである水原マリオは駐日大使の娘マーガレットのもつ外交官特権を利用して麻薬を密輸。
自身がもつ山荘で開かれるパーティーで顧客相手に麻薬を売買する手口をとっていた。

嵐山より課された報酬は押収した麻薬量の末端価格で前金はなしというものであったが、甲賀は奪い取った麻薬を持ち帰り、独自ルートで売りさばこうと画策し、桜は恵美の色仕掛けにまんまとハマって依頼を受けることとなる。

早速三人は水原たちが取引の連絡場所にしているナイトクラブに潜入。
恵美も加わり、彼らの注意を引いた上で停電を起こすと、麻薬を隠し持っていたマーガレットのハンドバッグを奪い取り、騒ぎに気づいて追いかけてきた水原の部下たちを出し抜いて強奪に成功する。
更に水原たちが取引のために香港へと渡っている間に三人は日本の拠点を強襲して水原の子飼いの殺し屋たちを殲滅させる。

思わぬ邪魔に業を煮やした水原はニューヨークのマフィアからローンウルフをはじめとする強力な武術家や殺し屋たちをスカウトし、甲賀たちの襲撃への対抗策を講じてくる。

その中で水原はマーガレットの父親が任期を終えて離任する前の大仕事として200億円にわたる大規模な麻薬取引計画を実行に移すため、ブリーフケースに大量の麻薬を隠し、スカウトしてきた殺し屋たちと共に帰国してくる。

その動きを察知していた甲賀と桜は尾行し、彼らの隠れアジトを突き止める。

彼らからブリーフケースを強奪するため、甲賀は自ら殺し屋たちを引き付けてその隙に桜がブリーフケースを盗み出す計画をたてるのだが、甲賀は敵の罠にはまり、催眠ガスで眠らせれた挙げ句、ひどい拷問をうけることに。

しかし敵の中のひとり西島はそんな集団暴力をよしとせず、甲賀を助けると反逆して水原たちに戦いを挑む。
復活した甲賀の活躍を尻目に、華麗なるボクシングとキックテクニックで敵を倒していく西島であったが、多勢に無勢甲賀との共闘の際に敵の攻撃を受けて致命傷をおってしまう。

別動隊の隼も弟分の倉山田を率いてアジトに駆けつけ、戦い抜くが倉山田が奮闘むなしく敵と相討ち。隼はそこで桜がブリーフケースを先に盗み出したことに気づき、追走してこれを捕まえるとブリーフケースを奪い返す。
合流した甲賀と共にブリーフケースを開けてみるが中身は偽物。さらに猛追した二人は本物の麻薬をもつ水原とマーガレットをついに追い詰める。
しかしそこには水原らをガードする屈強な殺し屋たちが待ち構えていた。

果たして二人は水原を倒し、任務を遂行することができるのか。最後の戦いが始まる…


ハリウッドにも根強いファンをもつ千葉真一が破天荒なアンチヒーローを演じてカルト的人気を博したアクション作品。

ブルース・リーによるカンフー映画ブームが日本を席巻していた頃、その波を越えようと邦画アクションも本格的な格闘アクションに力をいれ始めた。
その流れの先頭をきっていたのがスタントアクショングループ『JAC』を創設した千葉真一であった。

本作は『ボディガード牙』シリーズ、『殺人拳』シリーズに続く千葉の代表的なシリーズ作品となっており、元来のポテンシャルにあった器械体操や空手の経験をいかして、現代に残る伝説的な忍術の達人というニッチなキャラを演じている。
他のシリーズと比べるとだいぶコメディ味が増しており、千葉のキレキレなアクションの中にギャグやシュールな笑いを取り入れてエンタメ性がより深まっている。

このアクションとシュールなコメディの世界観は千葉の作品のなかでも特に異彩を放っていて、遠くハリウッドでもクエンティン・タランティーノやキアヌ・リーブス、RZAといった名だたるハリウッド関係者がファンを公言しており、ハリウッドにおけるアジアの空手スターイメージをブルース・リーから千葉真一へと変更認識させた。

ストーリー的には千葉真一のほか、ニヒルな佐藤充、好色で単細胞な郷鍈治の三人が繰り広げるドタバタクライムアクション。
この三人一応は味方同士ではあるものの決して一枚岩ではく、三人が三人とも任務のなかでひとり出し抜こうと目論んでいるのが特徴。
このため単純な勧善懲悪のストーリーというよりはひと癖ある展開となっている。

ほぼほぼ男臭い作品ではあるが、一応はヒロインとしてアクションも後にこなすようになる中島ゆたかが務めており、郷のセクハラ攻撃を軽くいなす女丈夫っぷりをみせている。

気になるアクションに関してだが、千葉真一のアクションは忍術の達人というキャラだけあってこれまでの主演作品以上に誇張の激しいものとなっている。

鶴の構えをして奇声をあげて威嚇したり、天井に張り付いてみたりと癖の強い設定が多いが、後に関根勤が千葉の物真似で多用する息吹の型、その元ネタをここで拝見することができる。
まさに関根勤がやっている再現ともいうべきシーンなので興味あるかたは確認していただきたい。

千葉の他にも相棒である佐藤充の日本拳法、郷鍈治の合気道などちゃんと見せるアクションができている他、当時ブルース・リー作品を意識した敵に本格的な格闘家もしくは格闘経験者な集められており、途中千葉の方に加わる西城役には本物の元WBAボクシングチャンピオンでキックボクサーでもあった西城正三がクライマックス前に千葉と共にそのポテンシャルを発揮している。

さらに佐藤充の道場の後輩として香港映画で活躍し、日本帰国後初の出演となった倉田保昭が特別出演し、クライマックスで大暴れしている。香港で話題となったスピーディーな足技の数々は千葉真一と同列しても遜色ないほどの迫力で、出番こそ少ないもののインパクトは充分。

さらに敵の方には怪しげな空手や拳法達人を入れ込んでいるなかのひとりにあの安岡力也の姿も。実際彼はキックボクシング出身であり、千葉との一騎打ちも用意されている。
そんな敵の大ボスを演じているのは若かりし頃の津川雅彦というのも興味深い。
若い頃からエロさは健在で性奴隷としているマーガレット役アネット・ブリンガー相手に見せる雰囲気は後に最もエロい俳優と呼ばれる片鱗を見せている。

荒唐無稽なアクションのなかには目玉が飛び出したりと残酷なシーンもあるもののおしなべて千葉の主演作品のなかではコメディ色の濃い作品。
カッコよく男臭い千葉だけではなくその濃すぎる風貌逆手に取ったカルトアクション作品として評価の高い本作は息子である新田真剣佑の父としか認識していない現在の映画ファンにもみてもらいたいものである。

評価…★★★★
(千葉の幼い頃を演じたのがなんと14歳の子役だった頃の真田広之というのも注目なところ)











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