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(yottin blog)

「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた 武田家 83

2024年04月28日 10時31分08秒 | 甲越軍記
 武田晴信は甲府の館に在り、病重く臥せっており、上州勢が碓氷峠に押し寄せたと聞き板垣信形に信濃勢をつけて向かわせたが、持って生まれた悪癖、人に任せられない虫が起きて
「板垣に七千を与えて向かわせたが、上州勢は三万もの大軍と聞く、これより予は板垣の後詰となって軽井沢へ向かう、湯漬けをもて」と命じた

病というのに、いきなり寝床から起き上がって出陣と言ったから、家来たちは一様に驚いた
重病に伏せり、板垣法印の薬も容易に効かず、粥も食べることが出来ぬほど衰弱していたのに、今は立ち上がり「鎧をもて、予は出馬するぞ」などと言うから、「これはいよいよ病重く、熱によってのたわごとではあるまいか」と皆思ったが
「碓井の合戦、信形では甚だおぼつかぬ、予が後詰して上州の兇徒どもをことごとく退治して、奴らの首一つ一つ引き下げて帰るべし
そうすれば病の退治にもなるであろう、臆病と言う病は鎧一両、太刀一振りにて勝負を加えて飲むならば、発熱などたちまち自ら引いてしまうであろう
それ馬を引き出せ」
皆、驚くうちに横田織部正は馬を引いてくれば、晴信は直ちに手綱をとって「さっ」と馬に飛び乗った。

そこに山本勘助がまかり出て「これは勿体なきことかな、板垣信形を大将に定めたからには、これにて事を任されるべし
もし戦が難儀となれば、某が上意を賜り馳向かって敵を一戦の元に追い退けてみせまする
御病勢、重きうちから推して出馬すれば後々の憂いとなりましょう」と諌めるのも聞かず
「たとえ病重くて、戦場に倒れようとも、それは天が定めたことである、なんぞ安穏としておられようか」と聞く耳持たず
「我を思うならば、追々駆けて我に続け」と言って、馬に一鞭当てて一騎駆けにて館を飛び出した。

それに「続けと」馬を並べて走り出したは、馬場美濃守信房、小幡尾張守虎盛、横田織部正、春日弾正、かれこれ十七名ほど
馬とり仲間もこれに続き、その速きこと旋風の砂を撒くが如し
「御大将、碓井へ御出馬、急ぎ出でよ」と叫びながら馬を走らせれば、これを聞いた者たちも驚きながらも直ちに馬を走らせる
駆けだす人々は、甘利左衛門尉、浅井式部丞、秋山伯耆守、原加賀守、内藤修理正、諸角豊後守、原美濃守、山本勘助、曽根七郎左衛門、安間三右エ門、
だれだれなどとの下知もなく、大将の一騎駆け、思い思いに兵糧を用意して馬を走らせる。
彼らは御大将の突然の出馬により、鎧兜もつける間もなく家を駆け出たので、各家の仲間足軽は主の鎧兜を背負って、走りに走った
ついには晴信に追いついた者どもは四千五百余人となった。






















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2 コメント

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Unknown (wada67miho)
2024-04-28 12:32:47
yottin さま

いつも読んでますよ。晴信(武田信玄)の奮戦ぶりが、良く描かれてますね。

話は変わりますが、ベッツのバットはヒット製造機ですか?必ず塁に出てますね😃これには大谷君も敵わない。ホームランで対抗しますか(笑)。
Unknown (yottin)
2024-04-28 18:49:51
wadaさま

漢文体を古文に訳した原本を、現代文に置き換えて書いているのですが、今まで読んできた「風林火山」とかとは趣が違います。
講談調でどんどん流れていく軽快感を感じながら、文が進んでいくので楽しいです。
間もなく第二部の上杉家(長尾家)に移ります。

ベッツは大谷が来て闘争心を燃やしたのかと思いましたが、過去の実績を調べたら
もともと凄いバッターだったんですね
ホームラン30本、打率3割を普通に行けるトップスターですね、2018年には.346という成績もあったんですね。
175cmと小柄ですが凄いです、尊敬に値する選手です。

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