「おい、離せよ!
見えないじゃないかぁ」
ジュンペイに向かって、裕太が声を上げる。
颯太は静かに、じいちゃんの手を見つめている。
「ねぇ、さっき。鳥の島って言ってたよね?」
ポンと、颯太が言う。
「あぁ、確かに、そうだな」
じいちゃんがうなづく。
「鳥の島って?」
今度はジュンペイが、パッとその言葉に反応する。
さっきから、ジュンペイがうるさい…と裕太は顔をしかめる。
「おやおやぁ」
じいちゃんは、そんなジュンペイのことを笑う。
見た所、少しも気にしていないようだ。
「例の無人島のことだろ?
丁度、鳥がつばさを広げているような形をしているからなぁ」
まるで、今しがた、見て来たかのような口ぶりに、颯太の頭は、
はてなマークがひしめき合っている。
「ねぇ~行ったことがあるの?」
さっき男から渡されたものが、一体何なのかも、裕太はかなり
気になっている。
「だから、言っただろ?初めてだって」
ははははは!
大きな声で、じいちゃんが笑う。
だけどちっともじいちゃんは、うろたえたりしてはいないようだ。
むしろ余裕の表情を浮かべている。
自分のじいちゃんだけど、何だか知らない人のようだ。
「まかせるって、なに?
あの人…なんで、じいちゃんのことを知っているの?」
幾ら言われてみたところで、それでも裕太は、どうしても
納得がいかない。
もしかしてじいちゃんは、とんでもない秘密を、かかえている
のだろうか?