秘境話…母の老いを見つめる②山のような衣類 | まりんぼったの独り言

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ヨウムのまりん(2000年生まれ)との日々…
笑ったり、怒ったり、ひたすらにぎやかな日常の中で、私(なまちゃん)の日々も流れて行きます。
調子に乗って、俳句、短歌、川柳、小説なども。
秘境に1人暮らしをしている母も92歳になりました。




   ✳️  弟のMくんが買って来た観音桜


    秘境の実家2日目。

   予定では、弟が買って来た観音桜を
   葡萄畑の空き地に植えるはずだったが、
   あいにく雨になってしまった。

   まだ雨が霧雨くらいの時に、溜まりに
   溜まったゴミを畑の定位置で燃やす。


   公害だの何だの言われても、日に日に
   溜まるゴミの収集は皆無だし、自分で
   片付けるしかない。


   畑は昔鶏小屋があった隣でかなりの
   傾斜があり、脚の弱った母が転んだら
  下の崖まで落ちる可能性がある。


  風のある日は燃え移る心配もあるから、
  これからは弟や私が帰って、全て処理
  することにしよう。

   たくさんのゴミを燃やし切って帰ると、
   母が「まだ燃やすものがあるよ」と。

  蔵の2階に、長年置きっぱなしの衣類が
   あるから、それを燃やそうと言うのだ。

  「いやいや、お母さん、これ以上燃やす
     のは止めようよ」

   「そうは言っても、ものすごい量だか
     らね」

   何とか燃やす方向に持っていきたい母を
    解き伏せて、とにかく1度実況検分を
    することにした。

  ゴミ袋を持って2階に上がると、古色蒼然
   というか種々雑多な箱やら袋が散乱して
    いるではないか❗️

   そこで、ハタと気がついた。


   もしかして、この部屋に足を踏み入れた
    のは30年近く前ではないだろうか?


    昔は、弟のMくんのために畳を入れて、
    寝起き出来る部屋にしていたが、最近
    は全く用のない場所になっている。

    そこへ、母は次々と用のない衣類を
    運んでは積み上げてきたのだ。

   衣類を袋から出すと、昭和の時代に流行
    した服がこれでもか!と出てくる。


   一体こんな派手な服を誰が着たのか?

   そこでやっと気がついた。

    この恐ろしいほど大量の衣類をせっせと
    運び込んだ超本人は、他ならぬ若き叔母
    昭子姉ちゃんだと。

   広島から来る度に、自分がもらっても
   着れない服を見境なく、車に積んで
   姉の家に持って来ていたのだ。

   当時は着れたかも知れないが、今と
   なってはもうゴミにしかならない。

   母と時々言葉を交わしながら、とにかく
   袋に詰めて持って帰ることにした。


   今回は取り敢えず3袋持ち帰り、これ
   からは帰るたびに持って帰るつもりだ。


   蔵だけでなく、離れの1階と2階にも
   膨大な衣類が積まれているから、全部
   片付けるには相当掛かりそうだ。


    「ああ、よかった。これで大分片付い
      たから、ほっとしたよ」

   無邪気に喜んでいる母に、途中で投げ
   出すことは出来ないなあと、密かに
   ため息を洩らすのだった。

  



   「なまちゃん、大荷物を持って帰った
      んだね」