レビュー一覧 第一章 第二章(1) 第二章(2) 第三章(1)
第三章(2) 20~23話
原作 魚豊
初出 ビッグコミックスピリッツ(2020年)
キャスト
第一章
ラファウ - 坂本真綾
フベルト - 速水奨 異端の学者
ポトツキ - 巻島康一 ラファウの義父
ノヴァク - 津田健次郎 異端審問官
第二章(10年後)
オクジー - 小西克幸 代闘士。
グラス - 白石稔 オクジーの同僚
バデーニ - 中村悠一 修道士
クラボフスキ - 阪口周平 司祭
ヨレンタ - 仁見紗綾 天文研究助手
ピャスト - ふくまつ進紗
コルベ - 島﨑信長
異端者 - 三瓶雄樹
シモン - 下妻由幸 新人異端審問官
レフ - 間島淳司 新人異端審問官
アントニ - 三上哲 司教の息子
ノヴァク - 津田健次郎 異端審問官
第三章(25年後)
マズル - 入野自由 異端審問官
シュミット - 日野聡
フライ - 内田夕夜
レヴァンドロフスキ - 小松史法
ドゥラカ - 島袋美由利
ヨレンタ - 仁見紗綾
ノヴァク - 津田健次郎 異端審問官
第四章(ポーランド)
親方 - 中島卓也
アルベルト - 石毛翔弥
感想
22話の大どんでん返しには恐れ入った。なんせ地動説の異端粛清が、この地域だけの閉鎖されたものであり、その実行者がノヴァクただ一人だったという事実。これはキツい・・・
爆死したヨレンタの腕をずっと持っていたのは、何か感じるものがあったのか。死ぬ直前、その腕にヨレンタの手袋を嵌めたシーンに、鬼気迫るものを感じた。
だけど瀕死の間際にドゥラカが伝書鳩で送った手紙は、本が成就した時に送られるべきもの。あのタイミングではないわな・・・
最後に第四章への導入。1468年ポーランド王国とされている。
この物語の最初が「P国15世紀(前期)」とあったから、それから35年後がこの章の現在とすれば時代としてはちょうど繋がる。
ただ、パラレルワールドだとの話もある・・・
3/15の放送が最終回だった・・・(びっくり)
ABEMA無料視聴はコチラ
デンノコ氏によるレビュー
20話 21話 22話 23話
あらすじ
第20話 私は、地動説を愛している
「これを、次の場所まで持って行って」とドゥラカから聞き取った写本と活字や部品をシュミットに渡すヨレンタは、ドゥラカの内容は信じられると言った。
「役割りを果たしたから消しますか」とシュミット(驚くレヴァンドロフスキ)印刷機を貸すと約束したから出来ない、と返すヨレンタ。素性も分からないのに、と言うシュミットに対し「協力されてないだろうから」と同情を示した。
そして、私はここまでなので、組織の今後を頼むと重ねた。
そこまでするのですか?の問いに「こうするのが私の夢だから」
職人からの情報が集まったと、ノヴァクに伝えるアッシュ。
レヴァンドロフスキからパンを分けてもらうドゥラカは、人生も天国も棒に振って、なぜこんな事をしてるのかと訊いた。
死を受け入れるためだと言ったレヴァンドロフスキ。彼には妹がおり、10歳ほどで病に倒れた。死ぬ間際に「私は、何のために生まれたの?」と訊かれた。神のためだ、天国へ行くためだと答えようとしたが、出来なかった。そして妹は死んだ。
神のためと言えるために、どうすればいいか考え続けた。その帰結として今、こんな事をしている。少なくとも、異端を迫害するのは神じゃなく人。隊長には言わないが、宗教は大切・・・
シュミットに呼ばれて砥石車を回すドゥラカ。
技術を打倒するため技術を使う、と言うシュミット。彼の故郷では、神の解釈の違いで殺し合いが生じ、家族が殺された。問題の原因、根本を潰すしかない。これらは人工が起こした惨事。
人工社会、人工の掟、人工の神。人が作るのは醜い模造品。
父からもらった金と布を見せ、人が作る模倣は時として、自然が成し遂げない事も成し遂げると返すドゥラカ。
シュミットらと出掛けるため、ヨレンタに別れを告げるドゥラカ。頭巾を持って行くよう言うヨレンタ。もう一つと言って、手紙が入った瓶を渡した。あの本に書いてあった、利益の一部を送るという住所へ送って欲しい。利益は出ないが、先人に対する配慮だと言った。歴史は、神の意志の下に成り立っている
神はこの世にある悪を善に変える。全て繋がっている。
「何であの本のために・・・」「私は地動説を愛している」
シュミットが来て、騎士団らが迫っていると伝えた。裏口から出たら森の先に馬車が停めてあると言うヨレンタ。皆を行かせる。
自分はここに残ると言う。組織長である私が狙いだから。
シュミットらと馬車に乗るドゥラカ。
ヨレンタは小屋から多くの袋を出した。
追っ手の馬車にはノヴァクとアッシュが乗っていた。
御者が、松明を掲げている女を見つけた。「組織長かと」
少し離れたところから声をかけるアッシュ。自分が組織長だと答えるヨレンタ。ノヴァクが馬車から出ようとした時、ヨレンタが袋に火を点けた。大爆発が起きる。
小屋もろとも吹き飛んだヨレンタ。彼女の腕が転がって来た。
その腕を拾い上げるノヴァク。「組織長は死んだという事だ」
爆発音を聞くドゥラカ。自爆だと言うシュミット。
これも計画のうち。これから向かう印刷工房を守るため。当分は追われ辛くなる。任務遂行に感傷は不要。どこで死ぬかが重要。
騎士団が迫って来た。活字を隠せと指示するシュミット。
騎馬の兵が二名擦れ違った。やり過ごしたと安堵するドゥラカ。
「そこの馬車、止まれ!」との声。「全員降りて来い」
第21話 時代は変わる
シュミットが顔を出すと「君ら何者だ、どこへ行く?」の問い。
鋳造職人だと答えるシュミット。若い二人を仕事に送り出すと言い証明書を見せた。武装している事を問われ「山賊対策です」
まあいいだろう、と証明書を返される。
去ろうとする時、若い方が松明に巻く布をくれないかと言った。
シュミットがマントを渡そうとすると、ボロ布でいいからと言い馬車に行こうとした。とっさに自分のストールを渡すドゥラカ。
それで事なきを得て別れることが出来た。
感謝するシュミットに「ここで終わったら私も損をする。信念には対価が必要なんでしょ?」と返すドゥラカ。
そしてヨレンタからもらった頭巾を被り「それに、ここで終わったらヨレンタさんの感動も死ぬ」シュミットらの行動には目的があっても、記憶がない。ヨレンタの思いを引き継ぎたい。
朝になり、印刷工房に着いた一行。代表はボルコ。
見慣れないドゥラカを協力者だと紹介するシュミット。
組織長の事を聞かれ、死んだと答えるシュミット。「そうか」
組織の今後を語るシュミット。「これより出版活動を開始する」
原本と活字の確認を始めるボルコ。「本のタイトルは?」
「地球の運動について」と読むシュミット。ヨレンタの名は知られていないから、発行人として入れてはと提案するドゥラカ。
皆の賛同が得られた。だが活字を手にしてボルコが呻く。
運搬の衝撃で何文字かが割れていた。鋳造するための鉛が要る。
中断して町で鉛を入手することになったが、ドゥラカが自分の金(鉛銭)を見せる。「溶かして使えない?」早く印刷を見たい。
それをもらって鋳造作業を行うボルコ。
そして表紙の印刷が行われた。
手分けして作業が本格化した。
フライが来て、あと数日で輸送に移れるかとシュミットに訊く。
肯定し、これが済めば将来の選択肢が増えると言った。
馬の見張りをして来ると言い、立ち去ったフライ。
暫くして工房を出たシュミットは、血まみれのフライに驚く。
「組織長が命を賭けて守ったここがバレたら大惨事ですよね」
それと、ここにいた馬たちは唯一の移動手段。皆殺しにした。
「通報は済んだのか?」「ええ、町へ降りた時」
斬り合いが始まる。フライは大刀、シュミットは短刀。
シュミットが大刀を奪って、フライの喉元に突き付けた。
騎士団が来ると言うフライ。こっちの勝ちは確定。
ずっと異端が憎かったと言うフライ。物心ついた時からの信念。
騎士団が着くまでは逃げられると言うシュミットに、時間を与えるのは慈悲だと返すフライ。改心する時間・・・
教会正統派は間違っていないと言え!と叫ぶフライの喉を突き刺したシュミットは、父が殺された時を思い出した。
皆に状況を説明するシュミット。モールドと原本は埋めて隠したが、印刷機をどうするか。敵は近づく、馬はいない。
皆でバラバラに逃げると決まりかけたところで、皆で協力して自分を逃がす選択があると言うドゥラカ。
敵本体のところへ行き交渉すると言う。皆が呆れる。
私は神を信じていない。だからこそ見える景色もある。
私なら彼を説得出来る。どちらの可能性も低い、とシュミット。
コイントスを提案するドゥラカ。表なら皆で逃げる。裏なら私を逃がす。結果は「表」だった。諦めるドゥラカ。
レヴァンドロフスキが問う。「それは提案ですか?」「命令だ」
「了解」
第22話 君らは歴史上の登場人物じゃない 2/22放送
街に向かおうとするドゥラカとシュミット。残りが時間を稼ぐ。
「皆さんはこれで良かったのですか?」と訊くドゥラカ。
「いいも悪いもない、これが仕事だ」との答え。
「私も仕事します」「ああ、頼んだぞ」
追跡の馬車に乗るアッシュとノヴァク。
ヨレンタが自爆した光景が忘れられなくて震えるアッシュ。
工房の前で騎士らがクロスボゥを構える。アッシュが投降を呼びかける。盾で固めた集団が現れる。矢は通じない。
ノヴァクが「あの陣形は白兵戦に弱い」と言いかけたところで、アッシュが皆に白兵戦を指示。
皆が剣を抜いてなだれ込んだ。乱闘の開始。
そのスキを狙ってシュミットとドゥラカが後衛の者を倒し、馬を奪って逃げだした。それに気付いたノヴァクがあとをアッシュに任せ2人を追跡。「追い付かれる!」とドゥラカ。
「君の成功を祈る」と言いスピードを落とすシュミット。
そして追っ手に体当たり。落馬した一人と斬り合いになり倒したシュミット。だが次の瞬間、もう一人に背中から刺される。
その男の胸を突き刺して倒したシュミット。
そこへ後ろから首を刺したノヴァク。
「自分の血で溺死とは、地動説信者にふさわしい惨めな運命だ」
とノヴァク。「私が選んだ運命だ」と言い絶命するシュミット。
頭に傷を受けていたノヴァクも倒れた。
門で止められるが、遍歴職人だと言って通されるドゥラカ。
夜中に起こされるアントニ司教。
移動民族の女が、会いたいと言っていると伝えられた。
「やはり君か」「お久しぶりです」
用件が儲け話と聞き、人払いしたアントニ。
モノの所有が進み、今後は本が売れると言うドゥラカ。皆刺激に飢えている。印刷機の使用と、本の発行許可をもらいたい。
本の内容を訊かれ、言葉を選んだ。宇宙論的な、自然に対するある仮説・・平たく言うと「地球の運動について」
「異端思想か?」と緊張するアントニ。続けるドゥラカ。
歴史上、地動説が弾圧された前例を聞いたことがない。果たしてこの説は異端なのか?当然異端だと返すアントニ。
かつて地動説は私の父も、何人も裁いた・・と言いかけて黙る。
確かに、よそで弾圧の話は聞いたことがない。
言葉の印象が先行し、誰もが恐れ敬遠する・・・
宇宙についての研究は、必ずしも禁止されるものではない。
そしてそれは、刺激的な娯楽の題材になる。
地動説が異端かどうかは、時の権力者次第・・・とアントニ。
分かったと答えたが、風向き次第でお前を斬るとも。
そして利益の分配は、自分が8だと断言。
発行に際して一通の手紙を出したいとの申し出に、私の伝書鳩を使えと言うアントニ。
足跡を追って来たノヴァクが、二人の前に姿を現す。
アントニの顔を見て驚くノヴァク。アントニも覚えていた。
ドゥラカを指指し、地動説の異端者だと警告するノヴァク。
「ああ・・」と承知顔のアントニに驚愕した。「冗談だろ」
「君は地動説の、何が問題だと思う?」と問うアントニ。
口ごもるノヴァクに言って聞かせる。人を異端とし、拷問し殺すなら、その理由の正当性ぐらいは自分で調べろ。
聖書の言葉を口にするノヴァクだが、地動説を排斥する言葉だとは限らないと返される。それは仮説にすぎない。
万一大地が動くとしても、その前提で聖書を読み直し、再解釈に務めるのが我々の役目。そういう姿勢が信仰には必要。
私の父は宇宙論に厳しかったが、彼もその昔天文をやっていた。挫折が劣等感に変わったのかも。
ある所に、宇宙論に特別厳しい権力者がいて、運悪くそこで地動説を研究した者が異端者の烙印を押された。皆がそれを信じる。
その汚れ仕事は外部の者、つまり傭兵上がりの君がやった。
もしそうだとしたら聖戦などではなく、一部の人間が起こした、ただの勘違いだった事になる。
ノヴァクが今まで行なって来た処刑は殆どが非公開。
今回の事で、それらの記録を全て処分する指示を出した。
「地動説の迫害を実行したのは、本当に私だけなのか・・・」
愕然とするノヴァク。「ああ、私の知る限り。それが運命」
君らは歴史の登場人物じゃない、と静かに言うアントニ。
第23話 同じ時代を作った仲間 3/1放送
ドゥラカがアントニを買収したと決めつけるノヴァク。皆が向かいつつある場所へ、一足先に入るだけと返すドゥラカ。
神を失ったら、人は迷い続ける、とノヴァク。それに対し迷いの中に倫理があると言うドゥラカ。組織長のことば。
暴走した知性も乗りこなせる様になるとの言葉に、呆れるほど楽観的だとノヴァク。社会から神が消えても、人の魂から神は消せないと返すドゥラカ。お勤めご苦労、休みたまえとアントニ。
こんな最悪の想定が的中するなんて、と呟くノヴァク。
「ん?」と不審に思うアントニは酒の匂いに気付く。外に大量に酒を撒いて来たと言うノヴァク。藁にも沁み込んでいる。
今夜私たち全員がここで死に教会が燃え、もし私が門番に地動説の異端者を捕まえに行くと伝えていたら・・・
アントニの胸を刺すノヴァク。「誰が犯人だと思う?」
女が教会へ向かったと聞いて、イヤな予感がしていたと言った。
ドゥラカが逃げようとした先に松明を投げるノヴァク。戸の外に炎が上がった。背中から短刀で刺されるドゥラカ。だがそれを抜いてノヴァクの腹を刺し、鳥籠を持って逃げ出したドゥラカ。
壁にへたり込むノヴァクの前に現れたラファウ。「どうも」
死にかけで見えている幻だと言うラファウ。君の石箱に何人も惑わされたと言うノヴァクに、ボクも輝かしい未来を潰されたと返すラファウ。地動説が異端思想じゃないんだってなー、と自虐するノヴァクは、思い出して例のペンダントを返そうとした。
「幻だから受け取れないし、それに僕だけのものじゃない」
悔やむノヴァクに「やれる事をやった、互いにね」
私はこの物語の悪役だったと話すノヴァクに、個人の中にも善と悪が存在している中で、今ここで生きた全員は殺し合うほど憎んでも、同じ時代を作った仲間だと言うラファウ。
ラファウの死に接した時の痛みを無視したから、やっぱり悪役。
生きてるうちにやり残した事をして、と言って消えたラファウ。
ヨレンタの手袋を出し、更に自爆現場で拾い持っていた腕に嵌めるノヴァク。
娘は天国へ、と手を合わせながら息絶えるノヴァク。
何とか逃げ延びたドゥラカ。
鳩の足に手紙を縛って放した。
出血がひどい。「これ、死ぬな・・・」
その時、朝日が出てドゥラカを照らす。いつもの不快感はない。
そしてゆっくり彼女の視界が閉じて行った。
第四章 導入
1468年 ポーランド王国 都市部
パン屋の前に並ぶ行列。注文を聞く若者に「息子さん?」と訊く女性。言葉を濁す若者。遮る様に「パンが焼けた」と言う親方。
仕事を終えた二人。親方は若者をアルベルトと呼んだ。
大学へ行けるぞ、と言う親方。パン製造に関わる計算を一手に引き受けている功労者。だがそれを断るアルベルト。
学問など無意味どころか害悪だと言う。好奇心は人を飲む。研究なんて、いずれ自己目的化して暴走する。昔のことは忘れたい。僕は生活さえ出来れば十分。だがそこで親方が訊いた。
「じゃあなんで、アストロラーベを捨てねえんだ?」