前回のあらすじ

以前、ボーイスカウト・ガールスカウトでは定番のアクションソング「ユポイヤイヤエーヤ」、ラボ・パーティではおなじみの「歓迎」の時に歌う「ユポイ」をピアノソロアレンジしてみました。

修学旅行などのレクリエーションや、キャンプファイヤーのスタンツなど、どこかで歌った経験がある方も多いでしょう。
ただ、歌詞が意味不明すぎて、何語なのか気になります。この歌詞の意味、由来、国、歴史などについては、ほとんど情報がありません。
それを調べるうちに、ユポイの原曲が「ヘ・プル・タイタマ(He puru taitama)」という曲だと知りました。
その作曲者キンギ・タヒウィさんの、兄弟姉妹ザ・タヒウィス(The Tahiwis)が1930年にレコーディングしたSP盤を耳コピアレンジしてみました。
 


「ユポイヤイヤエーヤ」は海外では「Epo I Tai Tai E」という曲名で普及しており、意味は「I will be happy」であるとのことですが、海外楽譜の説明に述べられていた「この歌が不快にならないか独自に調査すべき背後にある歴史」について調べてみました。

…が、調べた結果、やっぱりユポイの意味は、I will not be sad, I will be happy. (私は悲しまない。幸せになるよ。)です!

 

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…ということにしておいたほうが良いかと思ったのですが、真実を。

こちらのPDFファイルには原曲の歌詞の英訳が載っていました。

「コダーリーキャット」さんより
(PDFファイル)Epo I Tai Tai E

https://kodalycat.weebly.com/uploads/2/9/4/1/2941805/epo_i_tai_tai_e.pdf


トップページ - コダーリーキャット


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イギリスの合唱団リーダーであるクリス・ローベリーさんのブログの説明では、批判的に書かれています。「マオリの歌から、第二次世界大戦中に下品な替え歌が作られ、スペルミスでアメリカに広まった」とのこと。
Finding song information – Chinese whispers, wishful thinking and the oral tradition


トップページ - From the front of the choir


以下引用。
『どうやらこの曲は、1909年に作られた性的な歌「He puru taitama」の、第二次世界大戦中の下品な変種のようです。
良い調べと簡単な言葉を持つマオリの歌の多くは、ハワイを含む太平洋諸島で観光エンターテイナーのレパートリーの一部として歌われています。 そこから、Epo I tai tai eと綴りを間違えて、全米のガールスカウトに広まり、この曲はネイティブアメリカンのもので、「私は幸せになる」という意味だと言われました。』


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そのユポイの原曲、「ヘ・プル・タイタマ(He puru taitama)」からユポイへの変遷はこちら。原曲はユポイのメロディーそのままです。
ヘ・プル・タイタマ


トップページ - ニュージーランド民謡協会

 

以下引用。
『元々は若者の情欲的な求愛歌。最初の歌詞は下品な冗談のパーティーソングになっています。
そして、第二次世界大戦時の合唱が改変されたものが、現在では国際童謡「エポ・イ・タイ・タイ・エ」となっている。』

『1909年、キンギ・タヒウィ(Kīngi Tāhiwi)はオータキの法律事務所で働いていた。 彼は非常に魅力的な若いマオリ女性、ジェーン・アームストロングと結婚したいと考えていましたが、彼は単なる会社員であり、彼女の好意を得るために地元の若い農場労働者たちとの激しい競争がありました。 そこで、彼が有能な若い男性の身体と聡明な心を彼女に思い出させるために、彼はこの曲を書き、非常にエネルギッシュなブラスバンドの曲に乗せました。』


ということは、「エポ・イ・タイ・タイ・エ」の原曲の作詞・作曲者は、キンギ・テ・アホアホ・ターヒウィ(Kingi Te Ahoaho Tāhiwi)さんですね。

1909年(明治42年)に作曲された歌なので、マオリ族の民謡・フォークソング扱いでいいかもしれません。マオリ族の間で口承で歌い継がれてきた…のではありません。この方はマオリ族の子孫で、肩書きは、ニュージーランドの教師、通訳、翻訳者、ラグビー関係者、ミュージシャンだそうです。26歳の時に作曲。結構新しいけれども、世界中で、口承で歌い継がれているのは事実ですね。

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【オリジナル】
◆1909年、キンギ・タヒウィ青年が、身体的魅力と知性をアピールするラブソングとして作詞・作曲し、恋人を射止める。

◆キンギ・タヒウィさんはこの歌を長らく公にしていなかったが、タヒウィさんの兄弟姉妹「ザ・タヒウィス(The Tahiwis)」によって、1930年にレコーディングされ、公開され、ニュージーランド全土に広まる。

「ヘ・プル・タイタマ(He pūru taitama)」の78rpm復刻盤


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歌詞は以下の通り。機械翻訳では明らかに誤訳もありますが、原文のまま載せておきます。だいたいのニュアンスがつかめるのではないでしょうか。

曲名:He Pūru Taitama

マオリ語歌詞:
He pūru taitama e
He pūru taitama hoki!
He pūru taitama
He pūru tukituki
He pūru taitama e.

Ka haere tāua e
Ki runga Otaki hoki.
Kei reira tāua
whaka-rite-rite ai
whaka-oti-oti ai e.

普及している英訳:
(I'm) a strong young man!
A strong young bull!
A vigorous lad!
A rampaging bull!
A husky young man!

You and I are going
way beyond Otaki.
And there we
can make arrangements
to make things final.

機械翻訳(Lingvanex) マオリ→英:
A young gunman
It's a young gun too!
A young gunman
A knock-out gun
A young gunman.

We will go
Also on Otaki.
There we are
ready-to-be
complete it.

機械翻訳(Lingvanex) マオリ→日:
①若いガンマン、これも若い銃!
若いガンマン、ノックアウトガン
若いガンマン。
②行くよ、オータキでも。
そこにいる。出来上がり。完了します。

機械翻訳(Bing) マオリ→英:
A young bull
It's a young bull too!
A young bull
A wrecked bull
It's a young bull.

We'll go
And on top of it.
We're there
make-up
complete-up by.

機械翻訳(Bing) マオリ→日:
①若い雄牛。それも若い雄牛です!
若い雄牛。難破した雄牛。
若い雄牛です。
②行きます。そしてその上。
私たちはそこにいます。
メイクアップ。
によって完了します。

機械翻訳(Google) マオリ→英:
A young man who
A young man too!
A young man
An assault rifle
A young man who.

We will go
Back on Otaki.
We are there
prepare accordingly
complete it.

機械翻訳(Google) マオリ→日:
①ある青年が、若い男も!
若者。アサルトライフル。
という青年。
②私達は行きます。大滝に戻ります。
私たちはそこにいる。
それに応じて準備する
それを完成させてください。

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【第二次世界大戦中、替え歌が作られる】
イタリアに駐在したマオリ歩兵が歌った替え歌「E pō i taitai e」が有名になる。
こちらのニュージーランド民謡協会のサイトに詳しく載っています(英語)。

 

曲名:E pō i taitai e

マオリ語歌詞:
E pō i taitai e!
E pō i taitai e!
E pō i taitai,
E pō i tukituki!
E pō i taitai e!

普及している英訳:
At night up high, eh,
at night up high, eh!!
At night up high, at night thrusting!
At night up high, eh!

機械翻訳(Lingvanex) マオリ→英:
Good night!
Good night!
Last night,
Night beat!
Good night!

機械翻訳(Lingvanex) マオリ→日:
おやすみ!
おやすみ!
昨夜,
ナイトビート!
おやすみ!

機械翻訳(Bing) マオリ→英:
Night out!
Night out!
Night out,
Night knocked down!
Night out!

機械翻訳(Bing) マオリ→日:
夜のお出かけ!
夜のお出かけ!
夜の外出、
夜が明けた!
夜のお出かけ!

※機械翻訳(Google) では、この替え歌をマオリ語だと認識できなかったので、サモア語で翻訳。
機械翻訳(Google) サモア語→英:
Good night to the leaders!
Good night to the leaders!
It's night for leaders,
It's a night of knocking!
Good night to the leaders!

機械翻訳(Google) サモア語→日:
リーダーの皆様、おやすみなさい!
リーダーの皆様、おやすみなさい!
リーダーの夜です
ノックの夜だ!
リーダーの皆様、おやすみなさい!
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マオリ語辞書で歌詞の単語の意味を調べてみました。

pō = ①(太陽が)沈む。②暗闇、夜。③亡くなった魂の場所。

taitai = ①格闘する、ダッシュする、殴る、ノックする。②ブラッシングする、こする、ブラシ、磨く。③レスリング。

hoki = ①also, and, too, as well (~もまた, ~も, 同様に)。②for, because, on account of (なぜなら,~の理由で,~のため)。②retreat, return, revert (戻る)。

tukituki = clush, smash, knock over, stumble repeatedly, beat out the time, demolish, knock to pieces, take to pieces, take down, destroy, kill. (ぶつかる、打ち砕く、ひっくり返す、何度もつまずく、時間を潰す、破壊する、粉々に打ち砕く、ばらばらにする、倒す、破壊する、殺す)。

E po i taitai e 
E po i taitai hoki
E po i taitai
E po i tukituki
E po i tukituki e 

第二次世界大戦中のマオリ歩兵による替え歌の歌詞は、直訳すれば、
『夜に格闘
夜にまた格闘
夜に格闘、夜に破壊
夜に破壊』
となりますね(そういうことにしましょう)。

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【戦後、ハワイなどの太平洋諸島で、替え歌がスペルミスで観光客向けに歌われる】
「E pō i taitai e」→「Epo i tai tai e」
“夜に格闘”→“エポさんは海海で”(?)
歌詞が意味不明になる。
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【スペルミスのままアメリカや他の国のガールスカウトに広まる】
アメリカ先住民のインディアンの曲で、「I will be happy」の意味だと伝えられる。

曲名:「EPO I TAI TAI E」または「EPO I TAI TAI」

歌詞:
Epo i tai tai e
Epo i tai tai e
Epo i tai tai
Epo i tukituki
Epo i tukituki e

(または、)
Epo i tai tai e
oh epo i tai tai e
Epo i tai tai
Epo i tuki tuki
Epo i tuki tuki e

(または、)
Epo i taitai e!
Epo i taitai e!
Epo i taitai,
Epo i tukituki!
Epo i taitai e!

※他にも、「Epo etai tai, é」、tukiが「tukki」だったり、ohが「o」だったり、無数に表記の揺れがあります。
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【世界中に広まり、日本にも広まる】
国立国会図書館で調べた限りでは、「小三教育技術 19(5) 1965年8月出版 小学館」が初出。

ラボ・パーティ設立の1966年以前には日本にもユポイが伝わっていたようです。
ボーイスカウトやYMCA、ラボ・パーティ、それぞれ同じ歌ですが、日本で歌われているメロディーは、外国で歌われる「EPO I TAI TAI」と若干違います。
作詞・作曲者不詳、何語かも全く不明(本当に分からなかったか、分かっていても不明ということにしたほうがよかったのかは定かではない)。

 

オー ユポーイ ヤイヤ エーヤ
オー ユポーイ ヤイヤ エーヤ
オー ユポイ ヤイヤ ユポーイ トゥキトゥキ
ユポーイ トゥキトゥキ エーヤ

オー ユポーイ ヤイヤ エーヤ
オー ユポーイ ヤイヤ エーヤ
オー ユポイ ヤイヤ ユポーイ トゥキトゥキ
ユポーイ トゥキトゥキ エーヤ

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原曲、タヒウィス編曲版、マオリ兵の替え歌、日本で伝承されている版と、それぞれのメロディを比較してみました。

若干の違いがあるものの、ほとんど一緒ですね。


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★ユポイヤイヤエーヤの起源まとめ
マオリ族子孫作詞作曲
→WW2にマオリ歩兵が替え歌をイギリスで歌う
戦後に綴り間違いで意味不明な歌詞になったこの歌を太平洋諸島で観光客相手に歌う
→アメリカのガールスカウトにインディアンの歌としてI will be happyの意味で伝わり
→国際童謡として世界中に伝わり、
→日本にも謎の意味不明な歌詞でボーイスカウト・ガールスカウト・ラボパーティなどに伝わる。

元の歌詞から意味不明な歌詞へと変化して、今は童謡として広まってしまった。が、元々の歌にまつわる歴史は、子どもにはふさわしくないセンシティブな経緯から、歌詞の意味や起源などは大人の事情で闇に葬られました(多分)。
元の歌詞の意味はアレかもしれませんが、ボーイスカウト等では動作を伴う集団遊び歌として、ラボ・パーティでは歓迎の身振り歌として、優れた簡単なメロディーと語感であることは否定できません。これからも歌い継がれていってほしい歌です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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