経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

人手不足は これから : 労働力調査

2024-05-05 07:42:35 | 人手不足
◇ 23年度は就業者が28万人増加した = 総務省が発表した23年度の労働力調査をみて、ちょっと驚いた。世の中は人手不足で騒がしいが、この調査をみる限り人手がひどく不足するような原因は見当たらない。たとえば完全失業率は2.6%、失業者数は平均178万人で、ともに前年度と変わりなかった。また就業者数は6756万人で、前年度より28万人増えている。増え方は大幅とは言えないが、それでも働く人はそこそこ増えている。それなのに、どうして人手不足になるのだろう。

もちろん経済成長率が3-5%に達する好景気が続けば、この程度の就業者数の増加では足りないに違いない。しかし現実はゼロ成長に近い状態がずっと続いている。働く日数や時間が短い非正規労働者が増えたために、人手が足りなくなったのか。しかし正規労働者は3622万人で、前年度比25万人の増加。非正規労働者は2130万人で、19万人の増加だった。ともに人手不足の大きな理由にはならない。

少子高齢化ガ進み、生産に携われる年齢の人口が減る。だから人手が不足するという。たしかに生産年齢人口は年々、減り続けている。しかし23年度は、働く人が増えている。その理由は、これまで働きに出なかった女性や高齢者が、新しく職に就いたからだ。23年度の労働力調査でみると、就業率は61.4%で、前年度を0.4ポイント上回った。

この4月からトラック・バス・タクシー運転手と建設業労働者、医師に対する残業規制が実施された。またインバウンドの回復で、宿泊・飲食業の人手不足は激しくなる。さらに専門家によると、就業率は天井に近付いているという。したがって本当に大変な人手不足は、これからやってくる。24年度は就業者数が何人増えるのだろうか。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

またも 無益な為替介入

2024-05-03 07:27:16 | 円相場
◇ 日銀がひと言つぶやけば円高になるのに = FRBは1日の政策決定会合で「現行の金融政策を据え置くこと」を決めた。声明のなかで、FRBは「ここ数か月間、2%の物価目標に向けた進展がみられなかった」と、その理由を説明している。パウエル議長も記者会見で「インフレ抑制への自信を得るまでには、まだ時間がかかりそうだ」と補足した。市場は完全に織り込んでいたため、株価は小幅に値上がりしただけだった。

ところが為替市場では、157円台で動いていた円の対ドル相場が153円にまで急伸した。FRBの決定を受けて、本来ならドル高・円安が進行するはず。それが円高となったのは、日本政府と日銀が再び為替介入に踏み切ったからに違いない。だが投機筋が豊富な資金を持っている現状で、介入の効果はたかが知れている。その証拠に29日にも介入したが、その効果は1週間ももたなかった。にもかかわらず介入したのは、政府が円安による物価高を黙認できないと判断したからだろう。

現在の円安は、日米間の金利差が根本的な原因となっている。介入は一時的に相場を動かすが、根本的な原因には及ばないから、効果がない。この金利差を縮小するには、日銀が利上げをすればいい。いや実際に利上げをしなくても、たとえば「円安が続けば、利上げを考える」と言うだけで、円相場は5-6円も上がるだろう。それに量的引き締めを加えれば、10円ぐらいはすぐ上がる。

しかし日銀は、全く動かない。植田総裁は記者会見で「いまの円安が物価に与える影響は無視できる範囲内か」と聞かれて、はっきりと「はい」と答えた。これが本心なのか、疑ってしまう。とにかく日本国の財産である外貨準備を大量に使って無益の介入をするより、日銀総裁がひと言つぶやけば、円相場は確実に上がる。少なくとも日銀は、そうしない理由を明らかにすべきだろう。

        ≪2日の日経平均 = 下げ -37.98円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝0敗】
    
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

チエも度胸もない 日銀

2024-05-01 07:27:17 | 円相場
◇ 「この程度の円安なら全く心配なし」という非常識 = 円相場は29日、朝方に160円台まで下落したあと6円近くも反発。市場では政府・日銀が介入したとみている。今回の円安を加速させた直接の原因は、植田総裁の26日の発言。記者の方から‟助け舟”のような質問が出た。--「円安進行による物価への影響は、無視できる範囲なのか」--これに植田総裁が「はい」と答えたため、一同は唖然。為替市場では円の対ドル相場が一気に158円にまで下落した。

円安で輸入物価が上昇。電気やガス、ガソリンや食料品までが高騰していることは、いまや一般常識。円安で最も利益が増えるのは自動車業界だが、そのメーカー経営者でさえ「最近の円安は異常。輸入原材料が高騰、物価高で賃上げをしても社員の生活は楽にならない」と苦言を呈するほど。それなのに日銀総裁が「円安による物価への影響は無視できる範囲」だと強調するのだから、恐れ入る。

政府は為替介入したようだが、単独では効果が薄い。そこでアメリカに協調介入を求めていたが、「日銀総裁が問題なしと言明してるじゃないか」と言われれば、返す言葉に困るだろう。アメリカ側からそんなコメントが飛び出さないように、介入したことを隠しているのではないか。為替市場ではこうした状況を念頭に、投機筋がさらに円売りを仕掛けてくる。円安が進行すれば、物価はますます上昇する。困るのは一般庶民と中小企業だ。その実態を、日銀は把握していないのだろうか。

マイナス金利政策を解除したばかりだから、もう少し様子を見たいという日銀の姿勢は判らないでもない。しかし「円安が進行すれば、金利の引き上げもありうる」程度のことは言えたに違いない。そうすれば円相場は5-10円ぐらいは上昇しただろう。日銀は本当に円安と物価の関係を軽視しているのか。それとも何か別のことを恐れているのか。

        ≪1日の日経平均 = 下げ -131.61円≫

        ≪2日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
   
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週のポイント

2024-04-29 07:06:49 | 株価
◇ 市場は円安の悪影響を警戒 = ダウ平均は先週253ドルの値上がり。終り値は3万8000ドル台を回復した。しかし3月下旬に記録した史上最高値を、まだ1500ドル以上も下回っている。1-3月期の実質成長率は1.6%で予想に届かなかったが、景気の基調は強いと判断された。また1-3月期の企業決算が好調だったことも、株価を押し上げる材料となっている。

日経平均は先週866円の値上がり。しかし終り値は3万8000円に届かなかった。3月下旬に付けた最高値からみると、まだ2800円以上も低い。全体としては堅調なニューヨーク市場に引きずられたが、特に半導体関連は大きく上げている。中東情勢の緊張がやや緩和したため、反動的に値上がりした。ただ市場では、行き過ぎた円安が消費に及ぼす悪影響を心配し始めている。

ニューヨーク市場では、FRBによる利下げ期待がさらに遠のいた。年内は1回の利下げにとどまる、という見通しが広まっている。一方、植田日銀総裁は26日の記者会見で、利上げには全く触れなかった。このため日米間の金利差は拡大するという観測が強まり、円の対ドル相場は158円台へ急落した。市場では政府・日銀による市場介入と、異常な円安が消費に与える悪影響に対する警戒感が急速に強まっている。

今週は30日に、3月の労働力調査、鉱工業生産、商業動態統計。1日に、4月の新車販売。2日に、4月の消費動向調査、3月の貿易統計。アメリカでは30日に、2月のFHFA住宅価格指数、4月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。1日に、ISM製造業景況指数。3日に、4月の雇用統計、ISM非製造業景況指数。また中国が3日に、製造業と非製造業のPMI。EUが3日に、1-3月期のGDP速報を発表する。なお1日には、パウエルFRB議長が記者会見。

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫ 
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

世界第5位に落ちる 日本のGDP

2024-04-27 07:29:59 | 世界経済
◇ 原因は成長政策の欠如とゼロ金利 = IMF(国際通貨基金)は「インドのGDPが25年中に日本を上回る」という推計を発表した。かつて日本はアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国だったが、中国とドイツに抜かれて、現在は第4位。インドに抜かれれば、第5位に転落する。人口がバカ多い新興国だから仕方がないと言ってしまえばそれまでだが、世界の多くの人たちに「日本は老衰した昔の経済大国」といったイメージを植え付けたりしてしまう。

発表によると、インドのGDPは25年に4兆3398億ドルに達する。一方、日本のGDPは4兆3103億ドルにとどまる見込み。この両者の逆転は、1年前の予測よりも1年早まったという。その理由は、大きく分けて2つ。まず日本の経済成長が遅すぎることだ。IMFの推計によると、24年の実質成長率はインドが6.8%、アメリカが2.7%なのに対して、日本は0.9%でしかない。巨額の予算を組んでカネをバラ播いても、成長にはあまり寄与していないことになるだろう。

もう1つは、異常な円安。各国のGDPを比べるために、IMFは米ドルに換算している。だから円安だと、ドル建ての数字は低くなる。たとえば22年初の円相場は115円だった。仮に現在も円相場がその水準にあるとすれば、ドルに換算した日本のGDPは確実に5兆ドルを超える。インドとの逆転劇はまだ先になるし、ドイツのGDPも上回って、世界3位の経済大国だと涼しい顔をしていられるだろう。

だから「GDP第5位」の話は計算上の問題だと、笑い飛ばすのも一つの方法だ。しかしIMFが発表すれば、日本のイメージが落ちることは避けられない。東南アジアの若者たちが、日本へ働きに来なくなるといった弊害も生じる。異常な円安は、日銀がゼロ金利に固執しているため。その日銀は週末の会議で、円安を是正するための政策を何もとらなかった。何を怖がっているのだろう。

        ≪26日の日経平均 = 上げ +306.28円≫

        【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】     
  
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>