小説指原莉乃リライト 第十八章~プライド | 散り急ぐ桜の花びらたち~The story of AKB.Keyaki.Nogizaka

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小説家を目指しています。ゆいぱる推し 京都地元大好き 鴨川のせせらぎと清水寺の鐘の音の聞こえるところに住んでいます。


これまでのあらすじ
2016年6月、指原莉乃は第八回AKB選抜総選挙中間発表の思わぬ結果を受けて
本選三日前に突如棄権。メディアの批判の嵐のなか、AKBグループとしての衿を正すべく、

横山由依が総監督の名において指原莉乃に卒業勧告を言い渡す。
揺れるAKBグループ、騒動はHKTの独立分裂危機にまで及ぶが、寸前のところで回避。AKBの絶対エースと二代目総監督、二人は少なからぬ蟠りを残しながらもAKB第二章を共に刻んでいく。
そして二人の前に立ちはだかる恋愛解禁の壁。指原の戦線離脱に単身挑むことを決意する

由依総監督。はたして恋愛解禁のバンドラの箱は開くのか









 



恋愛解禁に挑むメンバー達

大人たちに頭を下げ懇願するつもりなど毛頭なくて

それどころか今までの恋愛解禁によって断罪され涙をのんで去っていった

仲間たちの怨念をも背負ってるかのような怪しくも美しいこちらを射抜くようなその瞳。その不敵な口元は今にも野に干されたメンバーたちの恨み辛みをぶちまけそう。

この某有名アーティスト様のイラスト

いわば指原莉乃と横山由依の化身とでも言ったら良いんでしょうか

主体性を持って恋愛解禁に挑むメンバー達の決意と覚悟を表すイメージとして引用させていただきました


それでは今回はあっさりめの前説で上手くまとまったところで(笑)

小説指原莉乃リライト第十八章プライドご覧くださいませ





             


            𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・














──横山、私はもう下りるよ

そんなさしこのメールが携帯に入っていたことに気づいたのは、

たなみんの優勝で幕を閉じた、じゃんけん大会の直後だった。
 
「病んでるのよ、あの子、この頃」
 
「病んでる?」
 
アニメの世界から抜け出てきたようなプリキュアのコスチューム。よっぽど気に入ったのかなかなかそれを脱ごうとしない渡辺麻友も可笑しいけど可愛くて愛おしい。

通路脇のベンチに座りながら膝を突き合わしてのひそひそ話は少々目立っていて周りを気にしながらの二人の会話。
 
「といっても病気じゃないよ。なんか違うほう向いちゃってるのよ、私達とは。
わかる、私のいってること?」
 
私は首を小さく横に振り、手に持っていたiphoneの写メを麻友に向ける。
胸の前で大きく両腕で✖を作りながら、なぜかウインクする指原莉乃、。
その片方の手でで掲げるのはつい先日、とあるメンバーの深夜のデートでスキャンダルになったあの週刊誌。
 
「ざけんじゃないよって、言ってんだろうね」
 
麻友が覗き込みながら私の顔を見上げる。
 
「でもこんなことぐらいで・・・」
 
「あんたはそう思うんだろうね。無傷だもん、真っ白けだもん、由依ちゃんは。」
 
おつかれさま~! おつかれ~!
 
照明が半分落とされたスーパーアリーナの長い廊下に労いの言葉が通り抜ける。
ダウンライトに照らされたスーパーエースと総監督。
通り過ぎる人の中には、もう立ち上がってまで挨拶をするひとは数えるほどしかいない
 「偉くなったもんだんね、私たちも」

そう呟く麻友の横顔を横目で追いながら「ほんとやね」と私もそっと呟いた。

 
気が付けば私も八年目、小島さんの卒業も二月に決まった。もう上にはみーちゃんとゆきりんしかいない。
歴史を二人で作る、そう誓い合ったぱるるはもう別の道を歩き始めている。
(由依は由依の道を生きなよ、みんながちゃんと作ってくれた由依の道があるんだから)
そう言って彼女は卒業を決めた
(あんたの道は何処にあるんや?)そう聞いたら
(回り道……。少なくともそんな平坦な道じゃない)ぱるはそう答えた。
 
でも最近のドラマでの活躍をみると案外ぱるるにとってそれは近道かもしれない。今までが、AKBが、寄り道。

そう考えれば私たちの悲しみや切なさもいくらかは少なくて済む。
 

「真っ白やないて、こう見えてもあちこちに負ってるんや、心の傷」
 思い出したように話を戻す私に麻友はぷっと吹き出しそうになりながら、
「そうなのぉ? そうはみえないけどねぇ」

とフフンと鼻で笑いながら、半分照明の消えかけた薄暗いアリーナの天井を見上げた。
 
さしこが下りたら、私たちは大義を失う。行く道も分からなくなる。

掲げたのは恋愛自由化。
ある意味、その道のパイオニアであり、ジャンヌダルクでもある
指原莉乃が下りるなら、恋愛向上委員会なんて誰も耳を傾けるはずはない。
 

──もう下の子たちは私らなんて見ていない。ばれても何とかなる、みんなそう思うようになってる。以前のように握手会で公開謝罪なんかやる訳はない。そう高をくくってる。そうやって、みんながやりたいようにやるんなら、恋愛向上委員会なんて何の意味があるのよ

さしこのメールはその言葉で終わっていた。
 
「何言ってるか、わかんないのよ、さしこは。だってそうじゃない、あの時に戻れって言ってるみたいじゃない、これじゃあ。」
 

──思い出したくもない


以前、たかみなさんが私に血を吐くように語ったことを思い出す。
 
─── なっちゃんの時だった。見てらんないって、さしこが叫んで消えていった。それほど地獄だった。あの時、ほんとにうしろに十字架がみえたのよ、それも血染めの。ステージに上がらされて、足ががくがく震えて、喋ろうとしても声なんてそんな状態で出るはずがないじゃない?、一万人のお客さんだよ。
それでも戸賀崎さんはじっと見てた。止めるなよ、たかみなって。今止めたら、あの子に一生うらまれるぞって。命かけてたんだよね、あの頃はみんな。
 
やってることはひどく見えたかもしれないけど、ある意味特効薬だったと思う。じわじわ追い込まれるよりは、公開裁判、公開処刑、若いんだもん、早めにはっきり白黒つけてもらったほうがいいに決まってるでしょ。 けどまぁ、見れたもんじゃなかったけどね。アイドルにさせることじゃないとも思う。
じゃあなんでやめさせられなかったのか。なんども言おうとしたわよ私は、やめてくださいって。でもちゃんとは声をあげれなかった。
 
なぜって、その子たちの気持ちも見えていたから。謝れば済むんだって、そういう気持ちが、涙の下に隠れて見えてたのよ。
可愛そうって、思いながら、心のどこかで正義を振りかざしている自分がいたのかも知れない。コンプライアンスに酔ってる自分がね ──
 


もしこのまま恋愛禁止が続くのならそんなおぞましいほどの修羅場もこれから現実のものとして選択肢に入ってくるかもしれない。

 
「それで、たかみなさんには相談してるの?」
麻友の声に私は小さく首を振る。
彼女はもう別の道を歩いてる、よほどのことがない限りこちらを振り向かせる訳にはいかない。
 
── 由依は由依の道を行きな、間違っても私の道なんかなぞるんじゃないよ。もっと言うと私なんか忘れた方がいい。
冷たく聞こえるかも知れないけど、私ももうAKBなんか知ったこっちゃない。
お互い全てきれいに忘れる、そうでないと前へ進めない時があるのよ。それが今。わかる?由依ちゃん──
 
その時は分からなかった。冷たくて寂しい言葉で、たかみなさんがわざと突き放してくれている、それは頭ではわかっていた。
でもなぞることがなんでいけないのか、忘れることがなんで前へ進めるのか。その時は分かろうともしなかった、たかみなさんへの思慕がそれほど大きかったのかもしれない。
 
けれど今ははっきりとわかる。
私がたかみなさんの方を向けば向くほどAKBはあらぬ方向に走り始める。私がしっかり見据えないとこの子達は行く道を見失う
 
「急がないと・・・あかんねや」
 
「何を?」
 
「粛清をやる・・私なりの。そして失いかけているプライドを取り戻す」
 
「由依ちゃん!?」
 

 

アリーナの照明が祭りの余韻を惜しむようにゆっくりと薄らいでいく。床一面に張り巡らされたケーブルの束がまるでアリーナに巣くう大蛇のようにその姿をくねらせながら出口へと引き込まれていく。

 

祭りのエンディングは驚くほどに呆気ない。ほんの数十分程前までのむせ返るようなあの熱気はもうない。 会場全体が意思を持った生き物のようにじゃんけんコールを響かせたアリーナホールは、外から吹き込む秋風によってただの無駄に大きい無機質なコンクリートの箱へと姿を変えていく。
 なにやら妖しい妖艶な影が辺りに立ち込めているような気がする
 
ひとりまたひとり、救えるはずの命が十字架を背負わされ、

ゴルゴダの丘を登っていく
昨日見た笑顔が今日には涙に変わる。

そんなスキャンダル処刑がこれから幾度繰り返されるのか。
 
私達にできることなんてやっぱりたかがしれているのかもしれない
 けれど立ち返ってみる、あの頃に。

がむしゃらに世に出られることだけを願ってアキバの板の上で無心でステップを踏んでいたあの頃に。。

 


         

            𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・










 





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