同棲ダメ恋。→23歳 (その33)『恋の終わりと、はじまり・その7』 | ダメ恋愛。 ~下手な鉄砲、数打ちゃ当たる~

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バンカーばかりのダメ恋愛(実話)を、小説形式にて書いてます。※感想コメントはご自由に! 辛口な批評もOKです☆

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ウィーン

ファミレスの自動ドアが、静かに開いた。


「寒っ…‼︎」


外に出た瞬間、たった一言の呟きで、息は白く凍りついた。ふわっ、とした白い空気が、空へと浮かび上がる。


冬の陽は、落ちるのが早い。まだ18時だと言うのに、街はすでに、明かりが灯っている。

薄暗い空からは、小さな粉雪が、チラチラと降っていた。

僕はダッフルコートのポケットに手を突っ込み、トボトボと歩き始めた。


彩乃の家へと。


『あ……』

歩いている途中、ふと足を止めた。中に着ていたシャツのボタンを、一つずつ掛け違えてた事に気がついた。


『まぁ、いいや』

僕は再び、歩き始めた。


こんな所で、シャツを脱ぐ訳にはいかない。

コートを着ているのだから、誰かに見られる訳じゃない。

そもそも、ボタンのかけ違いなんて、気にしない。気にしちゃいけないだ。


僕と彩乃の様に。


『あれ……?』

ずっと引っかかってた言葉が、頭に浮かんだ。


 ”僕と彩乃はずっと仲良し。二人三脚で、どんな困難も乗り越えられる。

 そして、いつかは結婚し、男の子、女の子と二人の子供を授かるんだ。

 最期、二人がジジイ・ババアになっても、同じ道を、一緒に手を繋いで、歩いていけるさ。“


付き合い始めの頃は、そんな妄想ばかり浮かべていた。


しかし、最近は違う。“他人”と付き合う、現実を知ってしまった。


自分とは違う考え、言葉の受け取り方の違い、生活習慣のすり合わせetc…。人と一緒に生きていくのは、こんなにも困難だと言う事に気がついた。


もちろん、幸せな面も多い。会話をすれば楽しいし、身体を重ねて、愛し合う事もある。

けど、その幸せよりも、困難に感じる瞬間の方が、多くなったのだとしたら……‼︎


「寒いっ……」


僕はもう、考えるのを辞めた。辞めてしまいたかった。

空から降り注ぐ、この雪の様に、頭を真っ白にしたかった。


【つづく】


 


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