中南米にはインカ帝国など、高度な文明社会があったのだが、なぜか、簡単に崩壊していった。例えば、メキシコにあるテオティワカンである。テオティワカンはおよそ22平方キロメートルにおよぶ立派な古代都市だった。そこには高さおよそ65メートルの「太陽のピラミッド」、高さおよそ45メートルの「月のピラミッド」、「ケツァルコアトルの神殿」などが残されている。往時には10万人を超える人々が住んでいた、この都がなぜ、突然に滅びたのか。その理由は東太平洋にある中央アメリカ海溝で発生した地震によるものだったと言われている。地震によって、一般の家々が損傷を受けたことは間違いないが、建物が壊れたことくらいでは消失する理由にはならない。人々が団結さえしていれば、乗り越えられたはずである。問題はこの地を治めていた為政者たちは雨乞いなど、災害を防ぐ儀式をつかさどることで、人々を支配していたことだ。地震や干ばつなどで、彼らの権威が失墜してしまい、社会は混乱し、人々が流失して、テオティワカンは放棄されてしまったという。さて、現代の国家も災害から国民を守るということが第一の使命である。それができていない国々は私たちに周りにもある。（くちなし亭、2024.05.03）
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