トリエステにはゆかりのある偉人の像が 何気なく道路上に置かれている
大運河に架かる赤い橋(ポンテロッソ)の途中には ジェームス・ジョイスが立っている
ぼうしを斜めにかぶったちょっと粋な姿の彼は 長編小説「ユリシーズ」で世界的に知られる
彼はアイルランド出身だが 1904年から1915年まで
トリエステに 英語教師として滞在していた
この地をこよなく愛しており 像の下の碑文には「わが魂はトリエステに在り」と刻まれていた
運河近くダンテ通りの路上に ステッキをついて散歩中の紳士像がある
イタリア現代の代表的詩人である ウンベルト・サバ
彼は1919年トリエステで中古書店「古今書店」を購入し この地で晩年を過ごした
碑文には「岩の多い山ときらめく海に挟まれた 美しい街があった」と
トリエステを表現した文章が 残されている
サバを敬愛しイタリアに関する多くの著書を残した須賀敦子は
自らの著書「トリエステの坂道」に こんな文章を綴っている
「サバが愛したトリエステ 重なり合いうねって続く旧市街の黒いスレート屋根の上に
淡い色の空が広がり その向こうにアドリア海があった」