光のなかをくぐり抜けると、
朝日を浴びた森が見えてきました。
光のカーテンの向こうには、
別世界が広がっていたのです。
どこからともなく、
翼で飛ぶ馬たちが集まってきます。
ウイングの仲間のような馬たちは、
歓迎するように
嬉しそうに鳴いています。
少年とウイングは、
この世界を旅しました~。
湖のほとりの〝姉妹〟……。
雪山で暮らす〝種族〟……。
ユニコーンたちの楽園……。
大海原を航海する〝猛者〟たち……。
〝賢者〟の羊飼い……。
エルフたちの住み処……。
グリフィンのぶどう園……。
フェアリーたちのビーチ……。
この世界で暮らしている、
多種多様な者たちと出会い、
さまざまな出来事がありました。
出会った者たちは、
人間の少年を見て驚いて、
みんな言葉が通じませんでしたが、
みんな親切でした。
「あそこにも、誰かいるよ」
森を眺めていた少年は、
大きな滝の前に何かを見つけました。
ウイングと少年は、
さっそく地上に下りて行きました。
そこで待っていたのは、
ウイングよりも大きな翼のある白馬でした。
少年が背中から降りると、
ウイングは白馬の鳴き声を聞いて駆け出しました。
少年は、その白馬を見たことがありました。
ウイングの母馬が、
牧場からいなくなったことがありました。
母馬がやっと帰ってきたとき、
森のなかからそっと見送る
その白馬の姿を少年は見たのです。
翼のある白馬は、
あの光のカーテンをくぐり抜けて、
少年がいた世界に来ていたのでしょう。
ウイングの母馬と父馬は、
そのとき愛を深めていたのです。
ウイングと父馬は、
愛しく身を寄せ合っています。
「よかった……ほんとうに、よかったね……」
少年は見ているうちに、
その場にいられなくなって、
がむしゃらに走っていました。
離れた丘に上がると、
少年の瞳は涙でいっぱいになっていました。
ウイングが父馬に会えた嬉しさもありました。
この世界には人間が一人もいない、
ひとりぼっちの寂しさもありました。
感動とともに悲しみも込み上げてきて、
少年の瞳からポタポタと涙が落ちました……。
すると空のなかに、
ひとつの黒い点が現れたかと思うと、
ぐんぐん広がっていきました。
少年がハッと空を見上げると、
大きな翼が飛んで来ます。
「この世界で人間を見るのは、久しぶりだな」
そこには大きなドラゴンがいました。
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