ヴァイグレ指揮読響 ロザンネ・フィリッペンス(ヴァイオリン)(4月26日・サントリーホール) | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

読響名誉顧問の高円宮妃久子殿下がご臨席されたコンサート。

 

1曲目はブラームス「大学祝典序曲 作品80」

ヴァイグレ読響は14型。コンサートマスターは林悠介。金管のコラール風旋律のハーモニーだけがいまひとつだったが、引き締まり、重心の低い堂々とした演奏。音の混濁がない切れの良い演奏。

 

続いて、読響とは初共演となる1986年生まれのオランダのヴァイオリニスト、ロザンネ・フィリッペンスが登場。長身でにこやかな表情。使用楽器は1727年製ストラディヴァリウス「バレーレ」。エリス・マチルデ財団からジャニーヌ・ヤンセンに続いて貸与された。

読響は12型。

コルンゴルト「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35」は出だしがすこしひやりとしたところがあったが、カデンツァから一気に勢いを取り戻し、繊細だが芯のしっかりとした音で超絶テクニックを披露していく。第2楽章ロマンツァの主題は甘さもたっぷり。第3楽章はスタッカートの跳躍音型の主題を颯爽と弾いていく。コーダも決まる。ヴァイグレ読響も切れのいいヴィルトゥオーゾ的な演奏で、スリリングな共演となった。第3楽章のコーダに入るところの日橋辰朗以下ホルンの吹奏が壮大かつ華麗。ホルンを効果的に使う映画音楽作曲家のジョン・ウィリアムズにも影響を与えたことが伺える。

 

フィリッペンスのアンコールはエネスク「ルーマニアの様式による歌」。4つの部分からなる組曲でルーマニア出身のヴァイオリニスト、シェルバン・ルプが1926年に発見、未完成であった作品を補筆したようだ。

フィリッペンスは第4曲にあたるAllegro giustoを弾いたと思う。第1曲Moderatoからアタッカで入っていく第2曲にも同じタイトル、似た曲調があるが。

 

後半はベートーヴェン「交響曲第4番 変ロ長調 作品60」

ブラームス同様、ヴァイグレらしい重厚かつ切れの良い演奏。リズムの切れと推進力がある。読響は14型。木管が少し抑え気味。欲を言えば、もう少し楽しさや華のある生き生きとした表情もほしいところ。

12年前に聴いたヤンソンス指揮バイエルン放送響のベートーヴェン交響曲全曲ツィクルスでの演奏がこれまで聴いた生演奏のベスト。あの時は木管も弦も、もっと明るく生き生きとしていた。ヴァイグレがホルン奏者だったベルリン国立歌劇場管弦楽団(北ドイツ)とバイエルン放送響(南ドイツ)の響きの伝統の違いもあるのかもしれない。

 

とはいえ読響の木管は名手ぞろいで、第2楽章ではフルートのフリスト・ドブリノヴが第1主題を透明感のある清らかな音で、第2主題はクラリネットの金子平が滑らかに歌い上げていた。オーボエの金子亜未の端正な演奏、ファゴット井上俊次の滑らかなソロも良かった。

第3楽章スケルツォのアレグロ・ヴィヴァーチェの主題では第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンのやり取りが美しい。

第4楽章も推進力があり、切れ味良く進み爽快。コーダはファゴットのソロの後、胸のすくように鮮やかに締めた。

写真©読響