青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後の診療をざわついた気分で終え、

医局に戻った時だった。

部屋に入るのを見ていたかのように

電話が鳴った。

 

「はい、柳田です。」

「柳田先生、お電話です。

お繋ぎ・・・」

 

交換手が繋ごうとする。

またあいつか・・

出たくない。

 

「櫻井さんという人ならいないと。」

「いえ、松本さんという方ですが・・」

 

それはもう一人の男からだった。

 

 

「松本君、久しぶりだね。

ドラマもそろそろ佳境だから

忙しいだろう?」

 

彼なら出るとばかりにつないでもらう。

しかし、彼は暗かった。

 

「先生、俺、手は尽くしたんですよ。

でも・・・

こんな仕事をしていることを

心底恨みました。」

 

いつもポジティブな男が、

泣き言から始めるとは。

私は、ふっと

あの男の電話を思い出した。

 

まさか・・

 

「あいつがリーダーのところに

会いに行くんですよ。

いろんなところに網貼って、

行動をキャッチしたのに・・・

俺も、ニノも

その日は撮影で仕事を休めない。

タレントって、

自分の体で仕事しているんだって

嫌ってほどわかりました。

あいつがリーダーに何を言い出すか・・

先生・・俺は・・悔しいです。」

「松本君・・君も頑張ったんだね。」

 

やはりあの話か・・・

言葉を詰まらせる彼の気持ちが

よくわかるだけに

安易に慰められない。

 

「事前に大野君に連絡をして、

会わないように

すすめることはできないのかい?」

 

ふっと頭に浮かんだ案を口にしてみる。

 

「そうか、それもありですよね。

先生やってみます。」

 

パッと明るい声になる彼。

しかしそれだけで

本当に逃れられるのだろうか・・

数回会っただけであるが、

あの男は知恵もあるし、行動力もある。

おまけにプライドが高いから、

自分の考え通りに物事が進まないと

納得しないタイプだ。

その日留守にしただけで

終わりになるとは思えない。

 

そんな私の不安が相手に伝わったのか、

それとも以前から考えていたことなのか

相手はふいに言った。

 

「先生、先生が

リーダーのところに行って貰えませんか。

会って、リーダーに

もうあいつのことは忘れろと

説得してください。」

 

そう思うのは、私も同じだが、

島に引きこもってからもう2年

彼も気持ちの整理が付いた時期ではないか。

 

「2年以上経ちます。

リーダーだって

いい加減吹っ切れたと思うんですよ。

でも、それは物理的な距離があるから・

あいつに何か言われたら

また傷つくんじゃないかって心配なんです。

先生、先生が

リーダーのこと大事に想っているのは

知っています。

だから頼んでいるんです。

俺じゃなくてもいいんです。

リーダーが、

あの人が幸せになるならそれで・・・

それでいいんです・・・・」

「松本君・・

君の気持ちは分かったが、

いまここで即答はできない。

でも・・・わかった・・・」

 

最後の方は、

必死に言葉を絞り出していた彼。

 

愛していた男と、愛してくれた男。

二人ともどこで間違ったんだ・・・

 

そして私は見守っていた男から

一歩進んでもいいのだろうか・・

誰もいない医局の窓から

夕陽が落ちていくのをただ見ていた。