Takekida's log

千里の道も一歩から

顔に取りつかれる脳

2024-05-11 22:24:44 | Books
 顔に取り憑かれた脳 (講談社現代新書) 新書 – 2023/12/14 中野 珠実 (著)
 
 自分が子供のころは人面魚だとか人面岩だとかそういったものが流行った気もしますが人間の顔判別能力というのはすごいなと思ってしまうところがあります。これがほかの動物に対してであればここまで見分けられる自信もないのでいかに人間が視覚情報の中で顔を特別視しているのだとは感じていましたがこの本は顔に執着してしまう人間の性を今までの研究結果をベースに明らかにしたものです。
 そもそも人間は集団として生きてきたと言う時点で顔をコミュニケーションの一部でうまく活用してきたと言うのがあります。白目が大きくどこを見ているのか明確になっている特徴や眉を感情で動かすことが出来るのは顔でのコミュニケーションをとれるための進化だったということなのでしょう。そして現代になって自分で自分の顔を解像度高くみられるようになってから容姿としての自己を認識し他者と比較する心の動きが自己意識に大きな影響を及ぼすようになったようです。 この本の中にも記されていますがやはり自分の顔というのは外部社会とのインターフェィスという意味で特別な役割を持っているようで自分の顔を認識することでドーパミン報酬系が備わっているということが明かにされています。これは顔自体が外部へのインターフェィスなのでそこに注目することは自身の社会的状態を知ることが出来るということ、つまりはよりよく社会の中で過ごせるように顔の状態に注目するような仕組みが備わってきたとも解釈できそうです。とすれば自身の容姿に磨きをかけるという行為自体は生理的に必然的な物だとも言えそうです。
 コミュニケーションにおいては視覚情報が55%のウエイトを占めているというメラビアンの法則というのが知られていますが顔は特にコミュニケーションにおいて非常に重要な要素を占めているようです。喜び、悲しみなど6つの感情の情報に関してはどのような人種であっても顔で正しく伝わっていることが確かめられています。またいわゆる魅力的な顔というのも人種が違っても概ね同じように選出されていることから人間が顔の情報を処理する能力というのは進化の過程で発達させてきたスキルなのかと思われます。意外だったのが瞬きも重要な要素になっていそうという点。会話の中で瞬きは同期されるようです。(逆に言葉だけで怪しい人は瞬きが非常に少ないとも聞いたことあります)
 コロナでオンラインでのコミュニケーションツールが発達し、Face₋to₋Faceというのは貴重な機会になりつつありますがこのような顔の役割も考えると実際にあって表情を交わしながら会話をするというのは心理t系には大きな効果があるように思えます。オンラインの世界では自顔を見せなくともアバターや生成AIで作ったイラストなどなんでも使え、ある意味なりたい自分になれてしまうわけですが隠したとしてもその仮面は本人の希望を代弁しているわけで本質的に事故から離脱できているものではないのだと思います。とするとあまり心の健康にとっては良くないのかもしれません。 ともあれ顔の重要性を再認識できたという観点では面白い本でした。
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